📌 この記事のポイント
✅ 中国が2025年に7品目のレアアース輸出規制を強化。EV・防衛・AIデータセンターすべてに影響が及ぶ時代に
✅ 双日×ライナス社でネオジムの6〜7割を確保、トヨタ・TDKは「使わない・減らす」技術で世界をリード
✅ 南鳥島の海底資源は2026年に採取試験成功も商業化は遠く、今は多角化調達と都市鉱山リサイクルが現実解
EVや家電に欠かせない「レアアース」という言葉、ニュースで見かけるたびに「なんか大変そうだな」と思いながらも、詳しくは追えていない——そんな方も多いんじゃないかと思います。
実はここにきて、レアアースをめぐる状況がかなり動いています。
中国が輸出に制限をかけたり、日本の自動車メーカーが生産ラインを止めたりというニュースが相次ぐ一方で、日本企業はその裏でしっかり対策を打ち始めていて。
今日は「そもそもレアアースって何が問題なの?」から「日本は実際どんな手を打っているの?」まで、できるだけわかりやすくまとめてみます。

なぜ今、またレアアースが騒がれているの?

F-35戦闘機にも使われている、実は軍事素材
「レアアースって、なんとなくEVに使うやつでしょ?」と思っていたら、実は話はもっと大きかった。
最新鋭の戦闘機F-35には、1機あたり約417kgものレアアースが使われています。
レーダー、センサー、誘導システム、モーター……現代の兵器はレアアースなしでは動かない構造になっていて、アメリカの原子力潜水艦にいたっては1隻で約4,173kgも使われているというから驚きます。
日本の防衛産業も、アメリカの軍事システムと部品・素材でつながっているぶん、この問題と無縁ではいられません。
生成AIのデータセンターが火をつけた
もう一つの火種が、AIブームです。
生成AIを動かすデータセンターは膨大な電力を消費するので、効率のいいオンサイト発電として「固体酸化物形燃料電池(SOFC)」の導入が急速に広がっています。
このSOFCに欠かせないのが「スカンジウム」というレアアースの一種。
これまで年間数トンしか生産されてこなかったほど希少な素材が、AIインフラの拡大によって突然、年間数十〜数百トン規模で必要になる構造が生まれているんです。
2025年4月、中国が「7品目」に輸出規制を強化
追い打ちをかけたのが、中国の動きです。
2024年12月にアメリカへの精製レアアース金属の輸出制限を発動したのに続き、2025年4月にはサマリウム、テルビウム、スカンジウムなど7種類のレアアースに厳しい輸出管理を施行しました。
輸出するたびに中国政府へ許可申請が必要になり、しかも許可が下りるまでの期間が不透明。
「中国のさじ加減一つでサプライチェーンが止まる」という状況が、現実になりつつあります。
関連記事:このテーマの背景については→【2026年最新】中国のレアアース輸出規制とは?日本だけが狙われた理由と生活への影響
「中国が強い」本当の理由は、精製工場にある

採掘より「分離」が難しい
「中国がレアアースを独占しているのは、たくさん埋まっているから」——そう思っている方も多いかもしれませんが、実はそれだけじゃないんです。
レアアースって、地殻中の存在量自体は銅や鉛と大して変わらないくらい普通にあります。
問題は「分離」の難しさにあって。複数の元素が化学的にそっくりな性質で混ざり合っているため、個々の元素に分けるのが地獄のように難しい。しかも主要な鉱石にはトリウムやウランといった放射性物質が含まれていることも多く、精製の過程で大量の廃水や放射性廃棄物が出ます。
放射性廃棄物をあえて引き受けてきた国
1980年代後半ごろから、欧米各国は環境保護の観点からこの精製事業を次々と手放していきました。
そこへ「国策として引き受ける」と名乗り出たのが中国です。
内モンゴルの大規模鉱山を中心に巨大な精製インフラを整備し、採掘から分離・加工まで一気通貫のサプライチェーンを作り上げた。
今では世界の精製・分離工程の85〜90%近くを中国が握っています。他の国で鉱石を掘っても、それを純度の高い素材にするためには結局中国の工場に頼らざるを得ない、という構造ができあがっています。
価格を意図的に下げる「ダンピング」という兵器
さらに厄介なのが、中国の「価格操作」です。
日本や欧米が他の国でレアアース開発に乗り出そうとすると、中国は意図的に輸出量を増やして市場価格を大幅に引き下げます。
新規の鉱山プロジェクトは初期投資を回収できずに採算割れを起こし、結局撤退——というパターンを繰り返されてきた歴史があります。
国家が損失を補填できる国営企業と、市場原理で動く西側の民間企業では、そもそも戦い方が違うんです。
日本はちゃんと手を打っていた

双日とJOGMEC:ネオジムの6〜7割をオーストラリアから
実は日本は、2010年に「レアアース・ショック」を経験して以来、世界でもっとも早く供給網の多角化に動き出した国のひとつです。
その中核を担うのが、商社の双日と独立行政法人JOGMECのタッグ。
2011年にオーストラリアのレアアース採掘企業「ライナス社」に約200億円を出資し、国内のネオジム需要の6〜7割を同社から調達できる体制を整えました。
さらに2023年には追加で約180億円を投じ、EVモーターの耐熱性を上げるのに欠かせない「重希土類(ジスプロシウム・テルビウム)」の最大65%を日本向けに優先供給する契約を締結しています。
住友金属鉱山:フィリピンでスカンジウムを副産物回収
住友金属鉱山は、フィリピンのニッケル製錬プラントで独自のアプローチを取っています。
ニッケルを採掘・製錬する過程の「副産物」として、AIデータセンターの燃料電池に不可欠なスカンジウムを回収する商業生産プラントを構築したんです。
スカンジウム単体の鉱山は採算を合わせにくいため、別の工程の「おまけ」として回収するというアイデア。中国やロシアに頼らない独自のサプライチェーンを、静かに東南アジアで確立しています。
トヨタ・TDK:「使わない・減らす」という発想の転換
そして、もっとも根本的な対策かもしれないのが「そもそも使う量を減らす」アプローチです。
トヨタは、EVやHVのモーターに使う磁石から、特に希少で高価な重希土類(ジスプロシウム・テルビウム)を完全に排除した「省ネオジム耐熱磁石」を開発。さらにネオジム自体の使用量も最大50%削減し、より豊富なランタンやセリウムに置き換えることに成功しています。
TDKは、レアアースをまったく使わないフェライト磁石の性能を極限まで引き上げ、自動車の補機類でネオジム磁石を追い出しにかかっています。
「中国に頼るくらいなら、使わなくていい仕組みを作る」という方向性は、ある意味で一番強い対抗手段かもしれません。
なお、このEV競争の文脈では、中国メーカーの動きも気になるところです。→オートバックスで中国EVが買える時代へ!2027年上陸の新ブランドで日本の車選びはどう変わる?
「南鳥島の海底資源」ってどこまで本当なの?

水深6,000m=富士山より深い場所から泥をくみ上げる
「日本の南の海に眠る海底資源」というニュース、見たことある方も多いかもしれません。
南鳥島周辺の深海底には、レアアースを含む泥が大量に堆積していることが確認されていて、2026年には海洋研究開発機構(JAMSTEC)が水深約6,000メートルの海底から泥の採取試験に世界で初めて成功しました。
水深6,000mってどのくらいかというと、富士山(3,776m)をひっくり返しても全然届かない深さです。そこからピンポイントで泥をくみ上げる技術は、宇宙開発と同じくらいの難易度だといわれています。
2026年に採取試験に成功したけれど
試験の成功は確かに大きな一歩です。でも、「試験成功」と「商業化できる」の間には、まだ巨大な壁があります。
塩分を含む泥から効率よくレアアースだけを取り出す技術、大量に引き上げるための設備、そして何より「中国産レアアースの価格に対抗できる採算性」をどう確保するか。
専門家の多くは、商業化まではまだ数十年単位の時間と莫大な国家予算が必要だと見ています。
「有事の保険」と「今すぐ使える切り札」の違い
南鳥島の海底資源は「日本が本当に困ったときの最後の切り札」として位置づけるのが現実的です。
今すぐ頼れる存在ではない。それよりも、オーストラリアや東南アジアからの調達を多角化したり、モーターのリサイクル技術を磨いて国内に眠る「都市鉱山」を活用したりする方が、経済的には合理的な道筋です。
資源をめぐる地政学的な動きという意味では、こちらも参考になります。→氷の島グリーンランドの「いま」|資源と北極航路で世界が注目するワケ
私たちの生活へのじわじわとした影響

EV・ハイブリッド車の価格が上がりやすくなる
中国がレアアースの輸出を絞り続ければ、もっとも影響を受けるのはEVやハイブリッド車の価格です。
モーターに使うネオジム磁石が調達しにくくなれば、メーカーのコストが上がり、それが車の価格に転嫁されやすくなります。
「次の車、EVにしようかな」と考えていた方には、タイミングの問題として関係してくる話かもしれません。
スマホや家電にも波及するかもしれない
スマートフォンのバイブレーション機能、エアコンのコンプレッサー、ヘッドホンのスピーカー——こうした身近なものにもレアアースを使った磁石は使われています。
直接的な影響は車ほど大きくないにしても、製造コストの上昇が家電全般に波及していく可能性はゼロではありません。
「都市鉱山」リサイクルが次の切り札になる
ただ、ここに一筋の光もあります。
日本国内には、過去に販売されたHVやEV、スマートフォン、ハードディスクの中に莫大な量のレアアースが眠っていて、「都市鉱山大国」とも呼ばれています。
日産自動車と早稲田大学が共同開発中のリサイクル技術では、モーターを解体せずそのまま溶解炉に投入してレアアースだけを分離回収できる手法が研究されていて、2030年ごろの実用化を目指しています。
これが実現すれば、捨てられたEVや家電が「国産の油田」に変わる日が来るかもしれない。そんな未来、ちょっとわくわくしませんか。
Q&A
Q. そもそもレアアースって何種類あるの?
A. 全部で17種類あります。ネオジム、ジスプロシウム、スカンジウムなど、それぞれ異なる用途があります。EVモーターには主にネオジムやジスプロシウムが使われています。
Q. 「レアアース・ショック」って何があったの?
A. 2010年に尖閣諸島沖で起きた漁船衝突事件をきっかけに、中国が日本向けのレアアース輸出を事実上ストップさせた出来事です。これが日本の対中依存を見直すきっかけになりました。
Q. 日本はレアアースをどのくらい輸入しているの?
A. 品目にもよりますが、精製工程においては中国が世界の85〜90%を握っているため、直接・間接を合わせると多くの品目で中国に大きく依存している状況です。双日のライナス社経由調達などでネオジムの6〜7割は中国以外から確保できるようになっています。
Q. 完全に「脱中国」することは可能なの?
A. 今後10年で「ゼロ依存」は現実的には難しいとされています。ただし、特定の品目において「中国に首根っこを掴まれない水準(30%未満)」まで下げることは十分可能で、そのための投資や技術開発が着実に進んでいます。
Q. 私たちに今できることはある?
A. 使い終わったスマートフォンやハイブリッド車のバッテリー・モーター部品を、リサイクルに出すことが「都市鉱山」の活用につながります。家電量販店の回収ボックスや自治体の小型家電回収も、レアアース資源の国内循環を支える一歩です。
まとめ

レアアース問題が再燃している背景には、EVだけでなく生成AIデータセンターや軍事産業の需要急増という新しい波があります。
中国の強さは「埋蔵量の多さ」より「精製工程の独占」にあり、日本がゼロ依存を達成することは現実的に難しい。
ただし、オーストラリア・東南アジアへの戦略投資、トヨタやTDKによる「省レアアース技術」の革新、そして将来的なリサイクルエコシステムの構築によって、「依存度を管理できる水準まで下げる」道筋はすでについています。
「なんとなく大変そう」という話が、こうして整理されると、日本がちゃんと手を打っていることも見えてきますよね。
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「都市鉱山のためにスマホを回収に出す」そんな日のお供に、丈夫で使いやすいエコバッグはいかがでしょう。心もカラダもととのう暮らしの習慣を、お気に入りの道具と一緒に作っていきたいですよね。コンパクトに畳めて、バッグの中に常備しておけるものがあると何かと便利です。
