日本経済新聞 2025年9月21日(日曜日)朝刊春秋の要約と認知症・介護
秋が一雨ごとに深まる。母がアルツハイマー病と診断されたのは6年前のこの季節だった。興奮と消沈と罵詈(ばり)雑言のうちに日は流れ、料理を忘れ化粧を手放し洗濯が怪しい。前とは別人、かと思えば母は母。生来の女王様気質が「煮詰まった」さまにふと笑いがもれる。
「私は今、人生の日没へ旅を始める」――。レーガン元米大統領は1994年11月、国民に最後の手紙を認(したた)めた。アルツハイマー病であること。病気は進行すること。やがて家族の重荷となる不安も率直につづった。およそ10年後の「落日」の際には、最も偉大なリーダーの1人を失ったと米国だけでなく世界中が悼んだ。(有料版日経新聞より引用)
この記事は「家族にとっての認知症」と「リーダーとしての老いとの向き合い方」を描いています。ここから、暮らしに役立つヒントをたくさん取り出していきましょう。
認知症とアルツハイマー病とは?違いと特徴をわかりやすく解説
認知症の基本知識と患者数の推移
認知症とは「記憶や思考、判断力が低下し、生活に支障が出る状態」の総称です。
2025年には高齢者の5人に1人が認知症になると予測されています。
年 | 推定患者数 | 高齢者に占める割合 |
---|---|---|
2020年 | 約600万人 | 6人に1人 |
2025年 | 約700万人 | 5人に1人 |
2030年 | 約800万人 | 4.7人に1人 |
つまり「どの家庭も避けられない問題」といえます。
アルツハイマー病の初期症状で気をつけたいサイン
アルツハイマー病は認知症の約60〜70%を占めます。初期に見られるのは:
- 同じことを何度も聞く
- 財布や鍵をよく失くす
- 慣れた道で迷う
- 言葉が出にくく会話が途切れる
- 日付や時間の感覚がずれる
「ちょっと年のせいかな?」と思う段階で相談するのが大切です。
アルツハイマー病と家族の暮らし|女性目線での介護の現実
母と娘で感じる認知症の変化
女性にとって「化粧を忘れる」「料理をしなくなる」といった変化は、自分らしさを失うことにつながります。
娘としては「母が母でなくなっていく」感覚を抱くことがあり、強い喪失感に襲われることも。
介護者の負担と心を守る工夫
介護する人には、次のような負担がのしかかります。
- 肉体的:夜中の徘徊対応、排泄介助、食事介助
- 精神的:怒りや混乱に付き合うストレス
- 社会的:仕事を辞めたり趣味を諦める
工夫の例:
- 「今日はできたこと」を探して褒める
- 完璧を求めず「まあいいか」と思う
- デイサービスやショートステイを使って休む
認知症介護の方法|日常生活でできる工夫と安全対策

家の中で取り入れたい工夫
- コンロをIHにして火事を防ぐ
- 鍵や財布は専用の置き場所を決める
- 階段や廊下に手すりを設置
一緒に家事をする方法
- 洗濯物を一緒に畳んで会話を楽しむ
- 野菜を切るなど簡単な調理をお願いする
- 買い物はリストを作って一緒に確認
介護は「できないことを補う」より「できることを楽しむ」意識が大切です。
世界アルツハイマーデーとは?日本と世界の取り組み

- 9月21日は世界アルツハイマーデー
- 東京タワーや大阪城が紫色にライトアップ
- 認知症カフェやセミナーが開催
- 認知症サポーターの養成講座
社会全体が認知症を理解し支えるための日です。
認知症予防に効果的な生活習慣|食事・運動・脳トレ

食事でできる予防
- 青魚を週2回以上
- 野菜・果物をバランスよく
- 塩分・糖分を控える
運動で認知症を予防
- 毎日20分のウォーキング
- スクワットやストレッチ
脳を刺激する生活
- 新しい趣味に挑戦
- 家族や友人との会話
- 写真や旅行の計画を話す
認知症・アルツハイマーの最新データ
- 認知症患者は2025年に約700万人
- MCIを含めると1000万人超
- 2040年には高齢者の3人に1人が認知機能低下に直面
Q&Aでわかる認知症・アルツハイマー病
Q1:治るの?
A:完治する薬はありませんが、進行を遅らせる治療はあります。
Q2:予防に効果的なのは?
A:食事・運動・社会活動。この3つが柱です。
Q3:家族が疲れたら?
A:介護サービスや地域の支援を頼りましょう。
まとめ|認知症とアルツハイマーに向き合う暮らしのヒント

- 認知症は誰にでも起こり得る
- 初期症状を見逃さないことが大切
- 介護は「一緒にできることを楽しむ」姿勢で
- 予防は毎日の食事・運動・会話から
- 家族も心を守り、社会の支援を活用する
老いと病は人生の一部。
だからこそ「どう寄り添うか」が大切です。