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南海トラフ地震の発生確率「60~90%以上」の幅広さに戸惑うあなたへ:数字に振り回されず「ええかげん」な備えを

日本経済新聞 2025年9月28日(日)朝刊春秋の要約と確率・予測との向き合い方

まず、今回の記事のきっかけとなった日本経済新聞 朝刊「春秋」の内容を引用します。

数学者なのに「ええかげん」が大好きだった森毅さんは、確率というものについてもこう言い残している。「自然を支配するものがギャンブルであってみれば、ものごとが一律である道理もなければ、ことが思いどおりに進むわけもない」(「ものぐさ数学のすすめ」)

▼神社でおみくじを引いたら、割合が少ないはずの「凶」が2回も続けて出た。降水確率70%なのに、なぜか傘がいつも邪魔になる。C判定だった志望校の入試で、ヤマが当たってみごと合格……。これだから人生は面白いと言えなくもないが、南海トラフ地震の発生確率などという話になると、誰だって大いに身構えよう。(有料版日経新聞より引用)

この記事は、南海トラフ地震の発生確率が従来の「80%程度」から「60~90%程度以上」と「20~50%」の併記に変わったこと、そしてこの「幅広い確率」の裏にある予測の限界について触れられています。そして、森毅さんの言う「ええかげん」(柔軟性)な姿勢を持ち、数字に振り回されずに備えを進めることの重要性を説いています。

私たちはこの「幅広い確率」とどう向き合い、どのように地震への備えを進めていけば良いのでしょうか。この大きな数字を前にして不安を感じる女性読者の皆さんが、「納得感と安心感」を持って次の行動に移せるよう、分かりやすくお伝えしていきます。



目次

I. 南海トラフ地震の「発生確率」とは?数字の裏側にある科学とメッセージ

1. 発生確率が「80%程度」から大きく変わった理由

政府の地震調査委員会から公表された南海トラフ地震の発生確率は、私たちを戸惑わせましたよね。従来の「80%程度」という一つの数字ではなく、「60~90%程度以上」「20~50%」という、とても大きな幅のある数字が併記されることになったのはなぜでしょうか。

これは、予測が「適当になった」のではなく、むしろ「予測の限界」を正直に伝え、より多くの可能性を考慮した結果なのです。

確率の幅が広くなった2つの視点

確率に幅を持たせることは、「一つの計算方法だけでは自然現象を捉えきれない」という科学者たちの謙虚な姿勢の表れです。

  1. データの「誤差」を考慮した
    • 従来の確率を算出する際に使用したデータには、ごくわずかな「誤差」が含まれている可能性が指摘されました。
    • この誤差の可能性を無視せず、予測の「ブレ」として幅を持たせて公表することで、情報の不確実性を明示しています。
  2. 複数の計算方法を採用した
    • 従来のデータに基づいた計算(比較的高い確率)に加えて、別の計算方法により低い確率(20~50%)も併記されました。
    • これは、科学的なアプローチが一つではないこと、そして可能性の全てを視野に入れてほしいというメッセージでもあります。

私たちがここで知っておくべき最も大切なことは、「今後30年以内に、高い確率で巨大地震が起こり得る状況にある」という揺るぎない事実です。幅のある数字は、「いつ起こってもおかしくない」という切迫感を、より多角的に伝えていると捉えましょう。

2. 「確率」の高さ=「ギャンブル」ではない:私たちがすべき解釈

コラムにもあったように、森毅さんは確率を「ギャンブル」になぞらえましたが、地震の発生確率は、おみくじやサイコロとは根本的に違います。

私たちが防災情報としての「確率」をどう受け止めるべきか、その違いを整理してみましょう。

ギャンブルの確率地震の発生確率
性質偶然性に支配され、試行ごとに結果は独立している。
目的スリルや、個人の運を試すためのもの。
向き合い方運を天に任せる。

この確率が高いことは、「あなたの運が悪い」ということではなく、「私たちの暮らす地域全体が、エネルギー放出の時期に近づいている」という警告であり、備えを始める期限」を教えてくれているのです。


II. 数字に振り回されない!森毅流「ええかげん」な柔軟性を活かす防災術

「ええかげん」という言葉には、「良い加減」という意味が込められています。完璧な準備を目指して疲弊するのではなく、柔軟性を持って、できることから少しずつ進める姿勢こそが、長く続けられる防災につながります。

1. 「完璧じゃなくて良い」:防災グッズの「ええかげん」リスト

「防災リュックをまだ用意できていない…」とため息をついている方もいるかもしれません。でも、大丈夫。最初から全てを揃える必要はありません。「ええかげん」な防災とは、「今あるもの、手に入るもので、最低限の命を守る」ことから始めることです。

まずは、最低限「3日分」の備蓄と、すぐに持ち出せる「持ち出し袋」から始めてみましょう。

カテゴリ完璧主義リスト(ちょっと大変)ええかげんリスト(今すぐできること)
水・食料家族全員の7日分の専用保存食と水(ローリングストックも完璧に)普段使いのペットボトル飲料や缶詰、レトルト食品を少し多めにストックしておく(+カセットコンロとガスボンベ)
持ち出し袋最新のプロ仕様の防災リュックを人数分用意普段使っているリュックに、軍手、懐中電灯、スマホ充電器(モバイルバッテリー)、持病薬の4点を入れる。
情報収集全ての地域のハザードマップを印刷してファイリング自宅周辺の避難所避難経路をスマホの地図アプリで確認し、家族で共有する。

特に女性の場合、衛生用品や生理用品、化粧落としシートなどの日頃使い慣れているアイテムをプラスワンで入れることを忘れずに。「備蓄は普段使いの延長」と考えると、グッとハードルが下がりますよ。

2. 予知に「未来を食われる」な:家族で話し合う「予行練習」

コラムにある森さんの言葉「ぼくの我慢ならないのは、本来なら未来を豊かにするための予知が、未来を喰(く)らおうとすることだ」は、「不安で何も手につかない状態」こそが、未来を蝕むのだと教えてくれます。

高い確率に過剰に反応し、不安に苛まれるのではなく、「もしものとき」の対処法を前向きに話し合うことが未来を守ります。

家族を守るための「ええかげん」な事前ルール

具体的なシミュレーションを、気軽に「ゲーム感覚」で話し合ってみましょう。

課題柔軟な解決策(ええかげんルール)
家族が離散した時「○○(祖母の名前)のところに行く」「最寄りの○○公園に集まる」など、離散した時の合言葉(行き先)を具体的に決めておく。
家の中の危険な場所家の中で「ここが倒れてきたら危ないね」という場所を指差し、家具の固定ガラス飛散防止フィルムの必要性を確認する。一度に全部ではなく、「今週は寝室だけやろう」と決めるのが「ええかげん」です。
情報収集と連絡災害用伝言ダイヤルの使い方や、家族の安否を確認し合うアプリの設定、緊急速報の通知がオンになっているかを確認する。

3. 女性目線の防災チェックリスト: 「日頃の延長」で考える

女性は特に、ライフステージや日頃の生活習慣によって、必要な備えが異なります。ここでは、日頃の延長線上でできる、女性ならではの備えをご紹介します。

項目備えるべきもの・行動備考
衛生用品生理用品(多めに)、ウェットティッシュ、体拭きシート、紙石鹸プライベートな衛生を保つことは、心の健康にも直結します。
お薬普段飲んでいる薬(多めに)、かかりつけ医の連絡先、お薬手帳のコピー地震直後は病院に行けない可能性が高いので、数日分を確保します。
化粧品・スキンケア最小限のメイク用品、オールインワンジェルなど(試供品でもOK)気持ちを落ち着かせ、日常を取り戻すためのアイテムとして。
下着・衣類着替えやすい衣類、防寒具、使い捨てカイロ着圧ソックスは避難時の足のむくみ対策におすすめです。

III. 不安な気持ちとの付き合い方:情報を「心の健康」に活かす処方箋

「南海トラフ地震」という言葉を聞くたびに、漠然とした不安に襲われる人も多いでしょう。この不安は、「いつ来るか分からない」という不確実性と、「被害の大きさ」への想像から生まれます。

科学的な情報を知ることは大切ですが、その情報に不安を煽られてしまうのでは、森さんの言うように「未来を食われる」ことになりかねません。

1. 防災は「心の安心」を守る投資

防災への取り組みは、お金や時間を消費する「コスト」ではなく、「もしもの時に、自分や家族の心の健康を守るための 投資 」す。

  • 準備することで安心感が生まれる
    • 「最低限の準備はできている」という事実は、地震のニュースを見るたびに感じるストレスを軽減してくれます。
  • 地域とのつながりを見直す
    • マンションやご近所さんとの交流は、災害時に最も重要な情報源と助け合いのネットワークになります。地域活動に「ええかげん」な参加(無理なく、できる範囲で)を意識してみましょう。

2. 「高い確率」を力に変える心の持ち方

確率の幅が広くても、私たちが取るべき行動は一つです。それは、「今を大切にしながら、しっかりと備える」ことです。

不安な考え方前向きな心の持ち方(柔軟性)
「90%なんて高すぎて怖い。どうせダメかも…」「備えを始める良いきっかけだと捉えよう。私にもできることはある。」
「完璧な備えをしないと意味がない」「完璧じゃなくて大丈夫。今日の小さな一歩(水の確認など)で、未来の安心を手に入れよう。」
「いつ来るか分からなくて落ち着かない」今日できる最善の備えをしたら、あとは柔軟に、を大切に楽しもう。」

「ええかげん」に、そして「しなやかに」

私たちは、森毅さんの教えのように、完璧ではない予測を前にしても、その不確実性を受け入れ、柔軟に対応する力を持っています。高い確率に過度に怯えることなく、目の前の生活を楽しみながら、「備え」という名の安心の貯金を続けていきましょう。



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