日本経済新聞 2025年10月11日(土)朝刊 春秋の要約とノーベル賞の価値
ノーベル賞のメダルに刻まれるのは表面が創設者アルフレッド・ノーベルの横顔で共通だが、裏面は賞により異なる。科学や学芸の女神など「それらしい」絵柄のなかで、平和賞だけはやや異質。「平和と友愛」のラテン語と共に彫られるのは肩を組む男性3人の姿だ。
▼むろんプライスレスの貴重品をおよそ200グラムの18金の塊とみなして勝手に時価換算する。お値段は約320万円と高額だ。だが2000年、金大中氏が受賞した時分の価格なら15万円ほど。四半世紀の間の金価格高騰と円の減価を映す。地政学リスクが高まれば「平和」が値上がりする。皮肉のような当然のような……。
🥇 ノーベル賞メダル:デザインと込められたメッセージ
ノーベル賞メダルは、単なる貴金属の塊ではありません。そこには、創設者アルフレッド・ノーベルの哲学と、それぞれの賞が目指す人類の発展への願いが込められています。
🕊️ 平和賞メダルの特別なデザイン
ノーベル賞のメダルは、賞の種類によって裏面のデザインが異なります。物理学賞、化学賞、文学賞などのメダルには、科学や学芸の女神がモチーフとされる「それらしい」絵柄が刻まれています。しかし、平和賞のメダルは一風変わっていて、そのデザインがメッセージを際立たせています。
| 賞の種類 | 裏面の主なモチーフ | 特徴的なメッセージ |
| 物理学・化学 | 自然の女神(科学の女神) | 科学の進歩と貢献 |
| 文学 | 詩を歌う女神 | 創造的な文学への賛辞 |
| 平和賞 | 肩を組む男性3人の姿 | 「平和と友愛」を意味するラテン語が刻まれる |
平和賞のメダルに描かれた、肩を組み合う男性3人の姿は、まさに連帯と協力の象徴です。これは、平和が個人の力だけでなく、人々が手を取り合うことによって初めて達成されるという、力強いメッセージを視覚的に伝えています。
✨ 全てのノーベル賞メダルに共通する特徴
すべてのノーベル賞メダルの表面には、創設者であるアルフレッド・ノーベルの横顔が共通で刻まれています。
- 素材: 18金(グリーンゴールド)
- 重量: 約175g〜200g程度
- 直径: 約66mm
💰 ノーベル賞メダルの時価と金価格の変動
ノーベル賞メダルは「プライスレス(値付けできないほど貴重)」なものですが、コラムにもある通り、純粋に18金の塊としてその時価を計算することができます。この計算から見えてくるのは、金(ゴールド)の価値がいかに時代と共に変動しているか、そして世界情勢が価格に与える影響です。

📊 金価格高騰の現実:2000年と現在の比較
日経新聞のコラムには、ノーベル平和賞メダル(約200グラムの18金塊として)の時価が、過去四半世紀で大きく変化したことが記されています。
| 年代 | 受賞者 | メダルの概算時価(日本円) | 背景にある主な要因 |
| 2000年頃 | 金大中氏 | 約15万円 | 当時の金価格・為替レートに基づく |
| 現在 (2025年) | – | 約320万円 | 金価格の歴史的な高騰、円安(円の減価) |
この劇的な価格上昇の裏には、主に以下の二つの経済的な動きがあります。
- 金価格の高騰: 金は、「有事の金」とも呼ばれ、地政学リスク(戦争や紛争、国際的な不安定さ)が高まると、世界経済の不安定さへのヘッジ(保険)として買われ、価格が上がりやすい傾向があります。
- 円の減価(円安): 日本円の価値が相対的に下がり、同じ重さの金を買うためにより多くの日本円が必要になっています。
🕊️「平和」と「金価格」の皮肉な関係

コラムが指摘するように、「地政学リスクが高まれば『平和』が値上がりする」という事実は、非常に皮肉な現実を映し出しています。
- 平和の価値が高まる:世界が不安定になる(=平和が遠のく)と、安全な資産としての金の需要が高まり、結果として金メダルの「時価」が上がる。
- ノーベル平和賞のメダル:このメダルそのものが、平和の切実な願いの象徴であるにも関わらず、その物質的な価値が、世界情勢の悪化によって押し上げられているのです。
🇺🇸 政治と「名誉」を巡る動き:トランプ氏の例
コラムでは、ノーベル平和賞への「野心」を隠さないドナルド・トランプ元米大統領の動向も取り上げられています。これは、「名誉」や「賞」が、ときに政治的なメッセージや自己アピールのツールとして利用されうるという、現代の別の側面を示しています。
🥊 「ファイト」を刻む1ドル硬貨の計画
トランプ氏はノーベル平和賞の受賞を逃しましたが、代わりに建国250周年記念として、自身の姿を彫り込んだ1ドル硬貨の発行を計画していると報じられています。
| 項目 | トランプ氏の計画 | ノーベル平和賞の精神 |
| モチーフ | 星条旗を背に拳を振り上げる自身の姿 | 肩を組む男性3人の姿(連帯と友愛) |
| 刻む言葉 | 「ファイト、ファイト、ファイト」(好戦的) | 「平和と友愛」を意味するラテン語(協調的) |
これは、「平和」や「協調」を重んじるノーベル賞の価値観と、「闘い」「勝利」を強調する政治家の姿勢との、明確な対比を際立たせています。公的な記念品に、どのようなメッセージを刻むかという問題は、その国が何を最も大切にしているかを反映します。
🇯🇵 日本の政治情勢と「平和の党」
コラムの結びは、世界が混沌とする中での日本の政治情勢に触れ、「平和の党」を自認する公明党の連立解消の動きや、初の女性総理誕生への機運が短期間にしぼみそうな状況を述べています。
🍂 日本の「秋」の情勢:政治の不安定さと国民の期待
「平和の党」として知られる公明党が、長年の連立相手であった自民党に「三くだり半」(決別)を突きつけるという出来事は、日本の政治の大きな転換点となりえます。
- 連立解消の持つ意味: これは、日本の政治の安定構造が揺らぎ、次の総選挙へ向けての不確実性が高まったことを意味します。
- 女性リーダーへの期待: わずか6日でしぼみそうだと指摘されている日本初の女性総理誕生の機運は、国民が新しいリーダーシップ、特に多様性や新しい視点を持った政治を求めていることの表れとも言えます。
🇯🇵 ノーベル賞受賞に見た「日本の底力」と政治への願い
コラムは、今年の「ノーベルウィーク」(受賞者の発表が行われる期間)で再確認された日本の科学や文化における底力を称賛し、その「足」を引っ張らない政治の安定を願う言葉で締めくくられています。
ノーベル賞の受賞は、日本の研究者や技術者が地道な努力を重ね、世界に貢献している証です。私たち女性にとっても、社会全体が安定し、それぞれの分野で才能が発揮できる環境が整っていることが、未来への希望に繋がります。
📝 まとめ:ノーベル賞メダルが映す世界

ノーベル賞のメダルは、物理的な金の価格変動、地政学的リスク、そして平和への切なる願いが交錯する、世界の縮図のような存在です。
| メダルから読み取れること | 意味するもの |
| デザイン | 平和と友愛へのメッセージ、連帯の必要性。 |
| 金価格の上昇 | 地政学リスクの高まり、世界の不安定化。 |
| 政治家の言動 | 名誉や賞が持つ権威を利用したいという欲望。 |
| 日本の情勢 | 政治の不安定さと、科学や文化といった**「底力」**との乖離。 |
私たち一人ひとりが、このメダルが象徴する平和の本当の価値を見つめ直し、世界と日本の情勢について、自分なりの考えを持つことが大切かもしれません。混沌とした時代だからこそ、「平和」という言葉の重みを改めて感じたいですね。




