・原因は「人手不足」と「生成AIが代替できない身体スキル」—需要のある技能ほど賃金が上がる
・これから伸びるのは“市場で値段が付く仕事”+“技能の掛け算”。今からできる選び方も解説
最近、お仕事のニュースを見ていると、ちょっとびっくりするような変化が起きていることに気づきました。
これまでは、なんとなく「涼しいオフィスで事務仕事をするのが安定していて、お給料もいい」というイメージがありましたよね。
でも、その当たり前がいま、ガラガラと崩れ始めているんです。
いま、現場で汗を流して働く方たちの賃金が、事務職を追い抜くという現象が目立ってきました。
私たちの働き方や、これから目指すべき方向性がどう変わっていくのか、一緒に詳しく見ていきましょう。

労働市場の当たり前が崩れ始めた
いま、日本の労働市場ではこれまでの階層構造が大きく変わりつつあります。
これまではホワイトカラーと呼ばれる事務職や管理職が賃金ピラミッドの頂点にいました。
そして、ブルーカラーと呼ばれる現場の技能職がその下に位置するというのが、暗黙の了解のようになっていましたよね。
ところが、いまの統計データを見ると、このヒエラルキーが根底からひっくり返り始めているんです。
単なる一時的なブームではなく、日本の人口が減っていることや、テクノロジーの進化が複雑に絡み合った結果として起きています。
具体的に、どのような職種で変化が起きているのかを数字で確認してみましょう。
数字で見る現実:事務職を追い抜く現場の技能職
驚くべきことに、自動車整備士や大工さんの年収が、一般的な事務員の年収を追い抜くケースが増えています。
これを年収逆転現象と呼んだりしますが、具体的な数字を見るとその勢いに圧倒されます。
2020年から2024年までのわずか4年間のあいだに、特定の職種では信じられないほどの賃金上昇が記録されました。
職種ごとの賃金上昇率の例
| 職種 | 賃金上昇率 |
| タクシー運転手 | 38.3% |
| 大工・とび職 | 31.7% |
| 自動車整備士 | 25.5% |
最近は物価も上がっていて大変ですが、この期間の消費者物価指数の上がり幅はだいたい8.5%くらいです。
つまり、これらの職種の人たちは、物価の上昇をはるかに上回るペースでお給料が増えていることになります。
一方で、一般的な事務職の方たちは、ここまで大きな伸びは見られません。
なぜブルーカラーの給料だけが上がるのか
どうして現場の仕事ばかり、こんなに景気がいいのでしょうか。
そこには、いまの日本が抱える深刻な事情と、新しい技術の影が見え隠れしています。
主な理由は、大きく分けて2つあります。
理由1:圧倒的な人手不足による売り手市場
ひとつめは、単純に「代わりになる人がいない」という問題です。
求人倍率という数字を聞いたことがあるかもしれません。
ひとりの求職者に対して、何件の求人があるかを示す数字です。
一般事務員の場合、その数字は0.32倍ほどです。
つまり、3人の人がひとつの椅子を奪い合っているような状態で、これではお給料を上げようという動きにはなりにくいですよね。
それに対して、建設現場で建物の骨組みを作る仕事などは、なんと9.44倍という数字が出ています。
ひとりの働き手に対して、9つ以上の会社が「うちに来て!」と手を挙げている状態です。
これだけ人が足りなければ、会社側はお給料を高く設定してでも人を呼び込むしかありません。
理由2:生成AIに代替できない身体的技能の価値

ふたつめは、最近話題のAIの影響です。
事務職の仕事は、その60%以上がAIによって自動化される可能性があると言われています。
パソコンの中で完結する仕事は、AIが得意とする分野だからです。
ところが、現場の仕事はどうでしょうか。
重機を操ったり、繊細な手仕事で家を建てたり、故障した車を修理したりする仕事は、AIにはできません。
現場の仕事がAIに代わられる確率は、わずか10%未満というデータもあります。
デジタル化が進めば進むほど、人間が物理的な空間で発揮する技能の希少価値が高まっているんです。
明暗を分ける市場価格と公定価格の壁
ここで、読者のみなさんのなかには「えっ、でも私の仕事も現場で大変なのに、お給料が全然上がらないよ」と思う方がいるかもしれません。
たとえば、看護師さんや介護士さん、保育士さんといったエッセンシャルワーカーの方たちです。
実は、ここには市場価格と公定価格という、非常に大きな壁が存在しています。

自由に価格を決められない仕事の悩み
タクシーや建設の仕事は、需要が増えればサービス価格を上げて、それを従業員のお給料に反映させやすい仕組みになっています。
これを市場価格と呼びます。
一方で、医療や介護のお仕事は、国が決めた公定価格によってお給料の原資が決まります。
どんなに人手が足りなくても、自分たちで勝手にサービス料金を上げることができません。
その結果、あまりの忙しさと賃金の低さに耐えかねて、看護師さんがタクシー運転手に転職するといった、労働力の流出が起き始めています。
2026年度に期待される変化
でも、このままでは社会が壊れてしまいますよね。
そのため、国も対策を考えています。
2026年度の診療報酬改定などでは、ICT(情報通信技術)をうまく活用することが期待されています。
見守りセンサーや、タブレットでの記録共有などを取り入れることで、人員配置の基準を緩める動きがあります。
これによって浮いたコストを、直接、現場で働く人たちのお給料に還元しようという仕組みです。
これがうまく機能すれば、これまでお給料が上がりにくかった職種でも、改善の兆しが見えてくるかもしれません。

2040年へのカウントダウン:私たちの働き方はどう変わる?
これから先、日本の労働環境はさらに厳しい局面を迎えます。
2040年には、なんと1100万人もの労働力が不足するという予測があります。
これからは、道路を直す人、荷物を運ぶ人、病気を治す人といった生活に欠かせないサービスが、もっとも希少な資源になります。
特に地方では、この傾向が顕著に出るでしょう。
特定の地域では、公的需要が経済の半分近くを占めている場所もあります。
そこでお給料が上がらなければ、地域そのものが崩壊してしまうリスクすらあります。
これから価値が高まる人になるために
このような激動の時代に、私たちはどう向き合えばいいのでしょうか。
大切なのは、「学歴があって事務職に就けば安泰」という、ひと昔前の成功法則を一度忘れることかもしれません。
これからは、以下のような視点が重要になります。
自分の市場価値を再確認するポイント
- 自分の仕事はAIに取って代わられないか
- 自分の仕事の対価は、市場の原理で決まるか、国が決めているか
- 物理的な空間での技能(スキル)を持っているか
もし、いまの仕事に不安を感じているなら、リスキリング(学び直し)を検討してみるのもひとつの手です。
たとえば、未経験からでも資格を取りやすい現業系の職種や、ICTを活用した新しいスタイルの福祉職など、選択肢は広がっています。
自分自身の手で何かを生み出したり、誰かを直接助けたりする技能は、これからの時代、最強の武器になるはずです。
よくある疑問にお答えします
読者のみなさんから寄せられそうな質問について、まとめてみました。
質問:事務職はいずれなくなってしまうのでしょうか。
いいえ、完全になくなることはありません。
ただ、これまでのコピーを取ったり、データを打ち込んだりするだけの仕事はAIに代わられていくでしょう。
これからは、AIを使いこなしてより高度な判断をするか、あるいは人間関係を調整するようなコミュニケーションに特化した事務職が生き残っていくと考えられます。
質問:いまからブルーカラーの仕事に転職するのは、体力が心配です。
確かに体力は必要ですが、いまの現場は昔ほど過酷ではありません。
最新の機械やツールが導入され、女性が活躍している現場もたくさんあります。
また、すべてのブルーカラーが重労働というわけではなく、精密な機械のメンテナンスや、管理に近い仕事もたくさんあります。
まずは、どのような資格があれば有利なのかを調べてみることから始めてみてください。
質問:結局、どの職種が一番おすすめですか。
一概にどの職種が良いとは言えませんが、自分が興味を持てる分野のなかで、希少価値が高いものを選ぶのがベストです。
たとえば、単なる運転手ではなく、介護の知識も持ったドライバー。
単なる大工ではなく、エコ住宅の最新技術に詳しい職人。
このように、複数のスキルを掛け合わせることで、さらにあなたの価値は高まります。
まとめ:自分の足で立つための選択を

これまでは、オフィスで働くことがスマートで、現場で働くことは大変だという偏見がどこかにあったかもしれません。
でも、時代は変わりました。
自動車整備士さんが事務職の年収を抜くという事実は、日本社会が目に見える技能と責任を、正当に評価し始めた証拠でもあります。
誰かに決められたレールの上を歩くのではなく、市場から求められる力は何かを自分自身で問い続けること。
それが、この不透明な時代を楽しく、そして力強く生き抜くための鍵になるのではないでしょうか。
あなたの得意なことや、やってみたいことが、新しい時代の価値になることを願っています。
ここまで読んで「じゃあ自分は何を学べばいい?」って思った人へ。
実はリスキリングって、いきなり大きく人生を変えなくても大丈夫。
まずは“需要がある資格”の入門書や問題集を1冊持つだけで、行動が一気に現実になるよ。小さな一歩が、将来の年収を変えるスイッチになります。











