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半導体はなぜ大量の水が必要?ソニーが20年以上守り続けた熊本の地下水

半導体 水 なぜ必要になるのか熊本の田園風景から考える

この記事は3行で分かります

  • 半導体工場は洗浄工程で超純水を大量に使い、TSMC全体で1日15万トン超を消費している
  • 熊本は阿蘇山の噴火が作った地層のおかげで水道の100%近くを地下水で賄える希少な街
  • ソニーが20年以上続けた地下水涵養の仕組みをTSMCも受け継ぎ、取水量の3倍を涵養している

最近ニュースで「TSMC 熊本」「半導体 水不足」という言葉をよく見かけるようになった。正直、私は最初「半導体を作るのにそんなに水がいるの?」と全然ピンときていなかった。でも調べていくうちに、熊本の水事情がとんでもなくドラマチックだったことに驚かされた。今日は、半導体になぜ大量の水が必要なのか、そして熊本の地下水がどうやって守られてきたのかを、私が調べて「へえ!」と思った順番でまとめていきたい。

目次

半導体はなぜそんなに水を使うの?超純水の正体

半導体 水 なぜ必要か超純水の工程を見つめる様子

半導体はナノメートル単位の回路をシリコンウェハーに刻んでいく製品で、その工程は数百段階にも及ぶ。そして、その工程の合間ごとにウェハーを徹底的に洗浄する必要がある。汚れがひとつでも残ると回路がショートしてしまうからだ。私はこの「洗浄が数百回」という数字を見た時点で、もう水の使用量が尋常じゃないだろうなと予感してしまった。

ナノ単位の汚れを落とす魔法の水「超純水」

半導体工場で使われる水は、私たちが普段使う水道水とはまったく別物だ。「超純水(UPW)」と呼ばれ、イオンや有機物、微粒子、溶存ガスなどを極限まで除去してある。その純度は「オリンピックサイズのプール1,000個分の水に対して、わずか1ミリリットルの不純物しか許されない」レベルだという。私はこの例えを読んだとき、思わず「そんなの現実的に作れるの?」と声に出してしまった。

ウェハー1枚に7トン!製造工程の水使用量

業界の推計によると、8インチウェハー1枚を作るだけで約7トンの水が使われる。ウェハーが大型化し、回路の層が増えるほど水の使用量はさらに増えていく。TSMC全体で見ると、2023年の水消費量は約1億100万立方メートル。1日に換算すると15万トンを超え、これはオリンピックプール約80個分に相当する規模だ。

水が止まったら工場はどうなるの?

もし水の供給が止まったら、半導体工場は24時間365日稼働という前提が崩れ、製造ラインは即座にストップする。作りかけのウェハーはすべて廃棄になり、再稼働までに数百億円規模の損失が出るとも言われている。私はこの話を知って、「水って電気と同じくらい命綱なんだ」と実感が変わった。

熊本にTSMCがやってきた本当の理由

熊本 地下水 なぜ豊富かTSMC進出の背景を見上げる女性

TSMCが日本進出の地として熊本を選んだ理由には、サプライチェーンの近さだけでなく「豊富な水資源」が大きく関わっていると言われている。熊本市を中心とした都市圏は、人口70万人以上を抱えながら水道水のほぼ100%を地下水でまかなう、世界的にも珍しい「地下水都市」なのだ。

蛇口をひねればミネラルウォーターの街

熊本に住む人にとっては当たり前の光景かもしれないけれど、水道の蛇口から出てくる水がほぼそのまま天然水というのは、私からすると本当にうらやましい環境だと感じる。

阿蘇山が生んだ巨大な水がめ

この豊かな地下水は、約27万年前から9万年前にかけて4度発生した阿蘇山の巨大噴火が作った地形に由来する。特にAso-4と呼ばれる火砕流堆積物の下にある「砥川溶岩」は無数の隙間を持つ多孔質の岩で、まるで巨大なスポンジのように水を蓄える「第2帯水層」を形成している。阿蘇の山に降った雨が地下を通って江津湖などの湧水地に届くまで、なんと約20年もの歳月がかかるらしい。私はこの「20年かけてろ過される」という時間感覚に、思わず背筋が伸びる思いがした。

ソニーが20年前から積み上げてきた信頼

そしてもうひとつ見逃せないのが、ソニーが2003年から続けてきた地下水涵養の取り組みだ。この長年の実績と地域からの信頼があったからこそ、TSMCも安心して進出できたのではないかと私は思っている。

使った水を大地に返す「地下水涵養」の仕組み

地下水涵養とは何か熊本のざる田を見つめる様子

地下水涵養とは、地表の水をわざと地下へ浸透させて蓄える仕組みのこと。熊本ではこれを、農業用の水田を使って実現してきた。

水がどんどん消える不思議な「ざる田」

白川中流域に広がる水田の中には、水がとても地下に浸み込みやすい「ざる田」と呼ばれる田んぼがある。普通の水田の1日あたりの水位低下(減水深)が10〜20mm程度なのに対し、このざる田は平均100mm、場所によっては300mmから最大1,000mmにも達するという。普通の田んぼの数倍から数十倍のスピードで水が抜けていく計算で、農家さんにとっては「水を入れてもすぐなくなる厄介な田んぼ」だったそうだ。

農家さんへの協力金というアイデア

米の収穫が終わった冬の農閑期、あえて川から水を引いてこのざる田に水を張る「冬期湛水」が行われている。冬場の水張り作業は農家さんにとって無給の重労働だが、地下水を大量に使う企業が協力金を支払うことで、農家さんの収入にもつながる仕組みが作られた。私はこの「弱点を強みに変える」発想に、素直に感心してしまった。

ソニーの累計涵養量は5,000万トン

この仕組みを2003年から続けてきたソニーは、日照りで取水制限があった2005年を除き、毎年自社の取水量を上回る量を涵養し続けてきた。その結果、累計の涵養量は5,000万立方メートルを突破している。国連の「生命の水」最優秀賞を受けるほどの実績だと知り、私は「20年以上コツコツ続けてきたことの重みってすごいな」と素直に思った。

TSMCも受け継いだ「取水量の3倍返し」

TSMC 熊本 涵養 取水量3倍の仕組みを試算する私

熊本県には1977年に制定された「地下水保全条例」があり、重点地域で一定規模以上の地下水を採取する事業者には、原則として取水量に見合う量の涵養計画が義務づけられている。TSMCの子会社JASMは、ソニーが築いたこの協力金モデルをそのまま採用し、さらに規模を拡大して対応した。

JASMの涵養実績を試算してみた

JASMは2024年の実績として、500万立方メートルの地下水を回復させたと公表している。これは自社の年間取水量の約3倍にあたる量だという。私、この「3倍」がどれくらいの規模なのか気になって、実際に電卓を叩いて計算してみた。500万立方メートルを1日あたりに均すと約13,699トン。さらに、これを涵養するために必要な「ざる田」の面積を、冬の湛水期間(約150日)×1日あたりの浸透量100mmで計算すると、必要な面積はおよそ33.3ヘクタール、東京ドームでいうと約7.1個分に相当する。私はこの数字を見て、「田んぼって、思っていたよりずっと大きな役割を担っているんだ」と実感が変わった。

台湾の大干ばつが教えてくれたこと

TSMCがここまで水に敏感な理由には、本国・台湾での苦い経験がある。2021年、台湾は56年ぶりに台風が一度も上陸しないという異常気象に見舞われ、主要な貯水池の貯水率が10%以下にまで落ち込んだ。TSMCは工場を止めないため、1台約1,000ドルの給水車を数か月にわたりチャーターし、水を運び込む事態にまで追い込まれたという。さらに台湾政府は、農業用水の供給を一部停止して工業用水を優先させる決断まで下した。私はこのニュースを知って、「水がないと国の産業そのものが揺らぐんだ」と改めて怖さを感じた。

世界に広がる水と半導体の争奪戦、これからの熊本

半導体 水資源 世界の争奪戦を見つめる女性の姿

水不足のリスクを抱えているのは台湾だけではない。韓国では龍仁や平沢で新工場向けの工業用水確保を巡り自治体同士の対立が起きているし、米アリゾナ州はコロラド川の枯渇リスクが常態化している。こうした中、TSMCは水の再利用率で約88%を達成し、サムスンやSKハイニックスの40%台を大きく引き離しているというデータも興味深い。

硝酸性窒素とPFASという新しい心配

熊本の地下水は「量」だけでなく「質」への懸念も出てきている。畑地の肥料や家畜の排せつ物に由来する硝酸性窒素の濃度上昇や、半導体工場からの排水に含まれる可能性があるPFAS(有機フッ素化合物)への不安の声も上がっている。JASM側は活性炭吸着などの処理で基準値以下に抑えていると説明しているが、私はこうした化学物質が「分解されにくい」という性質を知って、これからも注視していく必要があるテーマだと感じた。

農家の減少という静かなリスク

そしてもうひとつ気になるのが、地下水涵養を支えてきた農家さんの高齢化と後継者不足だ。協力金があっても、冬場に水田を管理してくれる人がいなければ、この仕組み自体が続けられなくなってしまう。

私たちの生活とどうつながっているか

ここまで調べてきて、私は「半導体の水問題」が遠い工場の話ではなく、私たちの生活とすぐ隣り合わせにあるものだと感じるようになった。スマホやパソコンのチップの向こうに、熊本の田んぼと農家さんの存在があると思うと、なんだか身の回りのものへの見方が少し変わる気がする。

よくある質問

半導体 水 なぜ必要になるのか熊本の田園風景から考える

Q. 半導体工場はなぜそんなに水を使うの?

ナノ単位の回路を刻む数百段階の工程で、その合間ごとにウェハーを洗浄する必要があるからです。汚れが残ると不良品になってしまうため、極めて高純度な「超純水」が大量に使われます。

Q. 熊本の水道はなぜ地下水だけで足りているの?

阿蘇山の噴火で作られた火砕流地形が「砥川溶岩」という水を蓄えやすい地層を作り出し、雨水がろ過されながら豊富な地下水として蓄えられているためです。

Q. TSMC進出後も熊本の水は本当に大丈夫なの?

TSMCの子会社JASMは、取水量を上回る量の地下水涵養(2024年実績で約3倍)を行っており、地域への影響を抑える取り組みが続けられています。ただし今後も継続的な監視が必要です。

Q. 「ざる田」って何?普通の田んぼと何が違うの?

水がとても浸み込みやすい水田のことで、1日あたりの水位低下(減水深)が普通の田んぼの数倍から数十倍にもなります。この特性を活かして地下水涵養に活用されています。

Q. ソニーはいつから地下水を守る活動をしているの?

2003年からです。環境NPOからの公開質問状をきっかけに対話が始まり、冬期の水田湛水による地下水涵養がスタートしました。

Q. 地下水涵養にはどんな仕組み・お金が動いているの?

企業が農家に「協力金」を支払い、冬の農閑期に水田へ水を張ってもらうことで地下水を涵養する仕組みです。農家にとっては無給になりがちな冬の作業への対価にもなっています。

Q. 台湾は水不足のときどんな対策をとったの?

2021年の大干ばつでは、TSMCが給水車をチャーターして工場に水を運んだほか、台湾政府が農業用水の供給を一部停止して工業用水を優先させる決断をしました。

Q. 半導体工場の水はリサイクルできないの?

できます。TSMCは水の再利用率で約88%を達成し、台南には排水を最先端工程に再投入する再生水プラントも稼働しています。

Q. 熊本の地下水は将来も枯れないの?

現時点では取水量以上の涵養が続けられていますが、農家の高齢化による涵養田の減少や、データセンターなど新たな水需要の増加が今後のリスクとして指摘されています。

Q. PFASや硝酸性窒素は地下水にとって危険なの?

過剰な濃度になると健康影響が懸念される物質です。熊本では施肥や畜産由来の硝酸性窒素、工場排水由来の可能性があるPFASへの対策・監視が進められています。

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参考・出典

  • 熊本県ホームページ「半導体関連産業集積に伴う地下水・排水対策等環境保全」
    https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/1/197864.html
  • 東洋経済オンライン「日本人が知らない「熊本の水がすごい」本当の理由」
    https://toyokeizai.net/articles/-/514271
  • 地方経済総合研究所「なぜ熊本に半導体工場が集積するのか ― 豊富な地下水と持続可能性の課題」
    https://www.reri.or.jp/report-and-news/ckm-kumamoto-reasonwhy/
  • ソニーグループ公式サイト「地域社会とともに、生物多様性の保全活動を」

※本記事の情報は執筆時点のものです。内容は予告なく変更されることがあります。

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