日本経済新聞 2025年10月24日(金)朝刊春秋の要約と国連の現在地
今日、10月24日は「国連デー」ですね。1945年のこの日に国連憲章が発効し、国際連合(国連)は正式にスタートしました。平和な世界を目指す国連ですが、その設立と本部がどこになるかについては、第二次世界大戦が終わる前から様々な思惑が交錯していたんです。
国連本部をどこに置くかは、第2次大戦が終わる前から綱引きがあったという。国際連盟の本部がスイスだったこともあり、英国やフランスは欧州を主張した。他方、連盟が失敗に終わった苦い記憶が残るなか、同じ欧州に後継の機関を設けることには反対も多かった。
▼「戦後の米国がまた孤立主義に戻ってしまうのを、どうしても防ぎたいという願いがひそんでいた」。最終的に米国に決まった背景を、明石康さんがそう説いている(「国際連合」)。当時の米国内も誘致を歓迎する空気だった。シカゴやサンフランシスコ、マイアミなど多くの都市が候補地として名乗りをあげたそうだ。
国連本部「ニューヨーク」決定の裏側:失敗を繰り返さないための戦略
国際機関の本部がどこに置かれるかは、その後の国際社会での影響力にも関わる、とても重要な問題でした。特に前身である国際連盟が、大国のアメリカが参加しなかったことも一因で十分な役割を果たせなかった「苦い記憶」があったため、国連の立ち上げには並々ならぬ配慮がされました。

欧州か米国か?本部決定で対立した思惑
国際連盟の本部がスイスのジュネーブにあったことから、当初はイギリスやフランスなどヨーロッパの国々は、そのままヨーロッパに置くことを望みました。
| 主張した地域 | 主張した主な国 | 背景・理由 |
| ヨーロッパ | イギリス、フランス | 国際連盟の本部がジュネーブ(スイス)にあった流れや、ヨーロッパが世界の中心という意識。 |
| アメリカ | – | 戦後のアメリカの国際社会での影響力を考慮。孤立主義に戻るのを防ぐ狙い。 |
なぜアメリカになったの?最大の理由は「孤立主義」への懸念
最終的に本部がアメリカのニューヨークに決まった最大の理由は、第二次世界大戦後のアメリカが、再び国際社会から手を引いてしまう「孤立主義」に戻るのを、なんとしてでも防ぎたいという強い願いがあったからです。
- 前身の国際連盟は、提唱国であるアメリカが国内の事情で加盟できず、機能不全に陥ってしまいました。
- そのため、超大国となったアメリカを国連の中心に据えることで、その責任と関与を確実にするという戦略的な意味合いがあったのです。
結果として、ニューヨークというアメリカの顔とも言える都市に本部が置かれることになり、米国内でもシカゴやサンフランシスコなど、多くの都市が誘致に名乗りを上げるほど歓迎ムードだったそうですよ。
国連デーとは?国連が目指す「平和の理念」と多岐にわたる活動
10月24日が「国連デー」として祝われるのは、この日に国連憲章が発効し、国連が正式にスタートしたからです。国連憲章は、国連の活動の土台となる最も大切なルールブックです。

設立の理念:国連憲章に込められた願い
国連憲章には、国連が目指す崇高な理念が記されています。それは、私たちが平和に、そしてお互いを認め合いながら生きていくための指針です。
| 国連憲章の主な理念(目指す価値) | 具体的な意味 |
| 平和 | 戦争を防ぎ、紛争を解決し、安全保障を確立すること。 |
| 寛容 | 異なる文化や意見を持つ人々を認め合い、尊重し合うこと。 |
| 人権 | すべての人が生まれながらに持つ権利と尊厳を守ること。 |
| 自由 | 基本的な自由を享受し、抑圧のない社会を目指すこと。 |
国連の主な役割と活動分野
国連というと、安全保障理事会(安保理)での政治的な議論が注目されがちですが、実際には私たちの暮らしのあらゆる側面に役立つ、非常に幅広い活動を行っています。
| 分野 | 具体的な活動例 |
| 平和と安全 | PKO(平和維持活動)、紛争の仲介、テロ対策。 |
| 開発 | 貧困の撲滅、教育や医療の支援、持続可能な開発目標(SDGs)の推進。 |
| 人権 | 人権侵害の調査と是正、難民・避難民の保護と支援(UNHCRなど)。 |
| 人道支援 | 災害や紛争地域での食料・医療提供(WFPなど)。 |
| 国際法 | 国際的な条約作り、海洋法や宇宙法の整備。 |
国連の現在地:強まる「遠心力」と直面する課題
設立から約80年が経ち、世界は大きく変わりました。コラムにもあったように、現在の国連は、設立当初から難路を歩んできたとはいえ、「遠心力」が従来以上に強まっているように見えます。

1. 大国による国連批判と多極化の進展
近年、特にアメリカのトランプ前大統領が「国連は我々のために存在していない」と激しい批判を繰り広げたように、自国第一主義を掲げる大国が国連の決定や枠組みを軽視する傾向が見られます。
- 多極化の時代: 冷戦終結後のアメリカ一強の時代から、中国やロシア、新興国など複数の力が影響力を持つ「多極化」が進んでいます。
- 意見の対立の深刻化: 価値観や国益が複雑に対立し、安保理などでの合意形成が非常に難しくなっています。
2. 本部移転論と改革の必要性
世界が多極化する中で、海外の一部からは「国連本部はニューヨークから移転してもいいのでは」という論調も出てきているそうです。これは、国連がより中立的で、世界の多様な声を反映できる場所にあるべきではないかという問題意識の表れと言えるでしょう。
| 国連が直面する主な課題 | 解決策として求められること |
| 安全保障理事会の機能不全 | 拒否権を持つ常任理事国の構成を見直し、より現代の世界情勢を反映した改革。 |
| 財政基盤の不安定さ | 特定の大国への依存を減らし、安定した財政運営の確立。 |
| 大国による国際ルールの軽視 | 憲章に則った国際法の順守を促す、実効性のある仕組み作り。 |
| 多極化と分断 | グローバルな課題(気候変動、パンデミック)への取り組みで、各国の共通の利益を見出し、協力の枠組みを強化すること。 |
3. 「世界で最も不可能な仕事」をどう立て直すか

初代事務総長であるリー氏が「世界で最も不可能な仕事」と嘆いたほど、国連の運営は設立当初から困難を極めてきました。しかし、国際社会における対話の場として、国連の存在意義は計り知れません。
- 日本の役割: コラムにもあるように、日本のような国が積極的に旗を振り、外交を通じて国連の機能回復に貢献することが求められます。
- 新しい協力の形: G7やG20といった枠組みも重要ですが、国連のような普遍的な機関だからこそできる、すべての国が参加する形での新しい協力のモデルを模索していく必要があります。
まとめ:国連の未来は私たちの手の中にある

国連は、国際社会の「共通のルール」と「対話の場」を提供する、欠かせない存在です。遠心力が強まる今だからこそ、国連憲章に込められた「平和、寛容、人権、自由」という設立の理念に立ち返ることが重要です。
ニューヨークという場所が持つ象徴的な意味を再認識しつつ、国際社会の多極化を反映した、より公平で実効性のある機関へと国連を立て直していく努力が、すべての加盟国、そして私たち一人ひとりにも求められています。この「国連デー」に、世界と日本の平和への貢献について、改めて考えてみませんか。




