🇺🇸若手政治活動家銃撃事件から考える、アメリカの「分断」と「陰謀論」の今

日本経済新聞朝刊春秋（2025年9月14日日曜日）の要約と若手政治活動家銃撃事件について

引用：日本経済新聞「春秋」より

ナチスは敵対政党の、警備の手薄な下級幹部や、影響力はあるものの有名ではない党員を意識的にねらって殺害した――。烏谷（からすだに）昌幸慶大教授の「となりの陰謀論」を読んでいたら、こんなくだりに目が留まった。それを彷彿（ほうふつ）とさせる事件が全米を揺るがしているからだ。
▼トランプ大統領に近い若手の政治活動家が銃撃され死亡した。各地の大学で活動し、巧みな対話術で若者にトランプ支持を広げた功労者のひとりとされる。容疑者は活動家を嫌悪し、薬きょうにファシストと刻んでいた、といった気になる情報もあるが、拙速な決めつけは禁物である。詳しい動機の解明を待たねばならぬ。

（有料版日経新聞より引用）

執筆者の視点：なぜ今、この事件が注目されるのか

この記事では、日経新聞の「春秋」で取り上げられた若手政治活動家の銃撃事件を入り口に、現代アメリカ社会が抱える根深い問題、特に「政治的な分断」と「陰謀論の蔓延」について、わかりやすく解説していきます。

この事件は、単なる犯罪として片付けるのではなく、トランプ氏のような強力なリーダーが陰謀論を巧みに利用し、社会の対立をさらに深めている現状を象徴しているように感じられます。

「春秋」でも触れられているように、陰謀論は一部の特別な人だけが信じるものではなく、「大事な何かを奪われる不安」や「複雑な世の中を簡単に理解したい」という誰もが持っている心の弱さから生まれるもの。つまり、私たち自身の問題でもあるのです。

今回は、この事件をきっかけに、専門的な言葉をなるべく使わずに、アメリカで何が起きているのか、そしてそれがなぜ私たちの暮らしにも関係があるのかを、丁寧にひも解いていきたいと思います。

💥 政治活動家銃撃事件の概要：一体何が起きたの？

まず、この事件について整理してみましょう。事件の背景には、アメリカ社会の大きな対立があります。

事件の経緯

被害者： トランプ前大統領を支持する若手政治活動家（名前は公表されていませんが、SNSなどで影響力を持つ人物です）
場所： アメリカ国内のどこかの都市（詳細は報道されていません）
犯行内容： 銃撃による殺害
容疑者： 政治活動家を嫌悪していたとされる人物
特徴的な事実：
- 薬きょうに「ファシスト」と刻まれていたという情報があります。
- 被害者は、巧みな話術で若者にトランプ支持を広めていたと報じられています。

なぜこの事件がアメリカを揺るがすの？

この事件がただの殺人事件として終わらないのは、トランプ氏がこの事件を政治的に利用したからです。「春秋」でも指摘されているように、事件直後にトランプ氏は、特定の政治勢力（過激な左派）の仕業だと示唆し、支持者をあおったのです。

これはまるで、合図を送るための「犬笛」のよう。「犬笛」は、人間には聞こえない音でも犬には聞こえることから、特定の集団にしかわからない合図を意味します。つまり、トランプ氏は、直接的に「左派を攻撃しろ」とは言わずとも、支持者にはその意図が伝わるようにメッセージを発信した、と解釈されています。

🤝 アメリカの「政治的な分断」を理解しよう

「分断」という言葉をよく耳にしますが、具体的にはどのような状態なのでしょうか。簡単に言うと、お互いの考え方をまったく理解できず、溝がどんどん深まっていく状態です。

分断の現状を表すキーワード

アメリカの分断は、次のような対立として現れています。

対立するグループ	考え方の特徴
トランプ支持者	・伝統的な価値観を重んじる保守派<br>・移民や多文化主義に反対する傾向<br>・「アメリカ第一主義」を掲げる<br>・経済のグローバル化で職を失った人々に多い
リベラル派	・多様性を尊重し、社会の変革を求める進歩派<br>・人種、性別、性的指向などに関わらず平等を主張<br>・環境問題や貧困問題に積極的<br>・都市部に住む高学歴層に多い

この対立は、日常生活のあらゆる場面に影響を与えています。例えば、家族や友人同士でも、政治の話をすると激しい口論になり、関係が壊れてしまうことも珍しくありません。

なぜ分断が深まったの？

いくつかの理由が考えられます。

SNSの普及： 自分が信じたい情報ばかりが目に入り、異なる意見に触れる機会が減りました。
経済格差： 豊かな人とそうでない人の間で、考え方や価値観が大きく変わってしまいました。
メディアの二極化： 情報を伝えるメディア自体が、特定の政治的立場に偏り、分断をあおる役割を果たしています。

🤫 陰謀論が社会に広まる理由とは？

「春秋」でも指摘されているように、陰謀論は「特定の誰か」が信じているものではなく、誰でもハマる可能性があるものです。

陰謀論の生まれるメカニズム

烏谷教授は、陰謀論が生まれる原因として、次の2つの感情を挙げています。

「大事な何かが奪われる」という不安
「複雑な世界をシンプルに解釈したい」という欲望

例えば、新型コロナウイルスのパンデミックを例に考えてみましょう。

不安： 「健康が奪われる」「仕事が奪われる」「自由が奪われる」という不安が広がりました。
欲望： 「なぜこんなことが起きたんだ？」という複雑な問いに対して、「これは特定の権力者が人口を減らすために仕組んだことだ」というシンプルな答えを与えてくれるのが陰謀論です。

人は、コントロールできない状況に置かれると、その理由を何かに求めようとします。その時に、目に見えない「陰謀」を犯人に仕立て上げることで、心に安心感を得てしまうのです。

政治と陰謀論の危険な関係

トランプ氏のようなリーダーは、この人間の弱さをよく理解しています。彼は、陰謀論を単なる噂話として扱うのではなく、政治的な武器として利用します。

敵を作り出す： 陰謀論によって「私たち」と「彼ら（悪いことをしている敵）」という対立構造を作り出し、支持者の結束を強めます。
批判をかわす： 自分に都合の悪い情報や批判を、「それはフェイクニュース（嘘のニュース）だ」と一蹴し、支持者には届かないようにします。

このような手法は、健全な民主主義を揺るがす危険性があります。

🇯🇵 私たちにも無関係ではない陰謀論

アメリカで起きていることは、遠い国の出来事ではありません。日本でも、陰謀論は身近なところに存在しています。

身近な陰謀論の例

分野	陰謀論の例
健康	「特定の病気の原因は、〇〇が流した毒だ」「〇〇食品は体に悪影響しかない」
社会	「地震や災害は、人工的に引き起こされたものだ」「特定の団体が国を裏で操っている」
政治	「政治家は国民を欺いて、ひそかに〇〇な計画を進めている」

こうした情報に触れたとき、どうすれば良いのでしょうか。