お正月といえば、こたつにミカン、そしてテレビには「箱根駅伝」。
日本の家庭ではすっかりおなじみの風景ですよね。
でも、テレビ画面を見つめながら、ふとこんな疑問を持ったことはありませんか?
「どうして毎年、サッポロビールがメインスポンサーなんだろう?」
「学生が走るスポーツなのに、なぜお酒の会社?」
実は私も、以前は不思議に思っていました。
ですが、この背景には、単なる広告宣伝だけではない、企業としての「熱い想い」と、私たちが知らない「ドラマチックな歴史」が隠されていたんです。
今回は、箱根駅伝を愛するプロのライターの視点から、サッポロビールをはじめとするスポンサー企業たちが、どのようにしてこの国民的行事を支え、私たちに感動を届けてくれているのか。その舞台裏をじっくりと、そして分かりやすく紐解いていきます。
これを読めば、来年の箱根駅伝が、今までとは少し違った、より深い感動とともに楽しめるようになるはずです。
1987年の衝撃決断「なぜビール会社が学生スポーツを?」
時計の針を少し戻してみましょう。
サッポロビールが箱根駅伝のメインスポンサーになったのは、今から約40年前の1987年(昭和62年)、第63回大会のことでした。

当時の常識を覆した「異例のオファー」
今でこそ当たり前の組み合わせですが、当時の広告業界やスポーツ界にとって、これは本当に「ありえないニュース」でした。
なぜなら、当時のスポーツスポンサーといえば、スポーツ用品メーカーや、若者が飲む清涼飲料水メーカーが相場だったからです。
みなさんも想像してみてください。
未成年も含まれる大学生が主役の、しかも「教育」の一環でもある駅伝大会に、アルコール飲料のメーカーが「冠スポンサー」として名乗りを上げる。
「不謹慎ではないか?」「学生スポーツにお酒なんて」という声が上がるのも無理はありませんでした。
では、なぜサッポロビールは、そんなリスクを背負ってまで参入を決めたのでしょうか?
日本テレビの悲願「完全生中継」への壁
その裏には、テレビ中継における「技術と資金」の大きな壁がありました。
1987年以前、箱根駅伝は現在のように「朝からお昼までずっと生放送」ではありませんでした。
箱根の山中は電波状況が非常に悪く、移動中継車からの映像を安定して届けることは、当時の技術では困難を極めていたのです。
そのため、かつては断片的な録画放送やダイジェストが中心で、今の私たちのようにリアルタイムでハラハラドキドキを共有することはできませんでした。
しかし、日本テレビには「全区間を完全生中継したい」という熱い野望がありました。
これを実現するには、山間部に電波リレー拠点を構築したり、ヘリコプターを飛ばしたりと、まさに天文学的なコストがかかります。
この巨大プロジェクトを資金面で支えられる強力なパートナー。それこそが、サッポロビールだったのです。
推定で数億から10億円とも言われる協賛金は、単なる広告費ではなく、日本の放送史を変えるための投資でもあったわけですね。
「ものづくり」と「駅伝」の意外な共通点
「お金が必要だったから」という理由だけでは、40年近くも続くパートナーシップは築けません。
サッポロビールがスポンサーを続ける最大の理由、それは企業としての「哲学(フィロソフィー)」の合致にあります。

職人とランナーをつなぐ「たすき」の精神
サッポロビールの経営層は、ビール造りと駅伝には驚くほど似ている精神性があると考えました。
それが、「たすきを繋ぐ」という行為です。
ビール造りを想像してみてください。
- 原料となる麦やホップを厳選する人
- 仕込みを行い、発酵を見守る人
- 熟成させ、パッケージに詰める人
多くの職人や技術者が、妥協のない品質を次の工程へと託していく。このバトンタッチの連続こそが、美味しいビールを生み出します。
これって、チームの想いが染み込んだ「たすき」を、次の走者へと必死に渡す駅伝の姿と重なりませんか?
「誰かの一番を、誰よりも一番応援する」
この企業姿勢が、ひたむきに走る学生たちの姿とリンクしたからこそ、サッポロビールの支援はこれほど長く続いているのです。
「お正月のこたつ」という最強のポジション
もちろん、ビジネスとしての勝算もありました。
お正月といえば、家族や親戚が集まってお酒を酌み交わす時期です。
「こたつに入って、みかんを食べながら箱根駅伝を見る」
この国民的な習慣の中に、自然と自社ブランドが存在すること。視聴率30%近いお化け番組で、お茶の間の「原風景」の一部になれることは、マーケティングにおいて計り知れない価値があります。
ファンの心を掴んで離さない「箱根駅伝CM」の秘密
箱根駅伝を見ていると、CMの時間になってもチャンネルを変えずに見入ってしまうことはありませんか?
サッポロビールのCMは、単なる商品紹介ではなく、まるで「短編映画」のような物語性を持っています。

「飲んでいるシーン」がない? 逆転の発想
お気づきの方もいるかもしれませんが、箱根駅伝中に流れるサッポロビールのCMでは、日中の放送ということもあり、ビールを「ゴクゴク」とおいしそうに飲むシーン(シズル映像)や、喉を鳴らす音は基本的に流れません。また、出演者の年齢制限など、放送には厳しい自主規制があります。
「ビールのCMなのに、飲むシーンを見せられない」
一見すると大きなデメリットに見えますが、サッポロビールはこの制約を逆手に取りました。
「商品を売る」のではなく、「応援する心」や「ドラマ」を描くことに全振りしたのです。
記憶に残る名作CMたち
これまでに数々の名作CMが生まれてきましたが、特に印象深いものを振り返ってみましょう。
第95回(2019年):アニメ×ロックの衝撃
「ガンダム」の安彦良和さんが原画を描き、BUMP OF CHICKENの名曲「ロストマン」が流れるCMを覚えていますか? 大迫傑選手や設楽悠太選手がアニメーションで描かれ、その疾走感に鳥肌が立った人も多いはず。
安彦さんは本来「CMはやらない」主義でしたが、「あの箱根駅伝なら」とオファーを受けたそうです。
第100回(2024年):レジェンドの帰還
記念すべき第100回大会では、柴田恭兵さんの渋いナレーションとともに、学生駅伝のスターだった田澤廉選手や伊藤達彦選手が登場。「箱根はゴールじゃない、通過点だ」というメッセージは、過去と未来をつなぐ壮大なものでした。
第101回(2025年):若者へのバトンタッチ
そして直近の大会に向けては、楽曲にヒップホップアーティストのKID FRESINO(キッド・フレシノ)を起用。これまでの感動路線に加え、今の若者(Z世代)にも響く「クールなカルチャー」としての駅伝を表現し始めています。
このように、CMそのものが一つの「作品」として楽しめるようになっているのが、サッポロビールのすごいところなんです。
サッポロだけじゃない!大会を支える「ビッグ5」の役割
箱根駅伝という巨大イベントは、サッポロビール一社だけで支えられているわけではありません。
実は、運営車両、ウェア、食料、警備など、各業界のトップ企業たちが「自社の強み」を活かして大会を支える、見事な協力体制(エコシステム)ができあがっています。
ここでは、サッポロ以外の主要スポンサー4社、通称「ビッグ5」の役割をご紹介します。これを知ると、中継を見る目が変わりますよ。
主要スポンサーの役割一覧
| 企業名 | 参画開始 | 主な役割とエピソード |
| トヨタ自動車 | 2011年〜 (独占提供) | 「静寂」の提供 運営管理車にハイブリッドやEVを提供。エンジン音が静かになったことで、監督の「檄(げき)」がテレビのマイクにクリアに拾われるようになり、臨場感がアップしました。 |
| ミズノ | 1997年〜 | 「視覚」の統一 ボランティアスタッフが着ているあの黄色いベンチコート。そして、各大学のたすきを模した「マフラータオル」をグッズ化し、応援を「見える化」しました。 |
| 敷島製パン (Pasco) | 2002年〜 | 「食」の支援 早朝から極寒の中で働く数千人のボランティアやスタッフに、パンや軽食を提供。閉会式では選手に「ハートウォーミングブレッド」を贈呈しています。 |
| セコム | 2015年〜 | 「安全」の守護 数百万人が沿道に集まるイベントの警備を担当。「走り続ける」という企業風土が駅伝とマッチ。テロ対策など現代のリスク管理を一手に引き受けています。 |
どうでしょう?
トヨタの車が静かだからこそ、あの名物監督の怒鳴り声(失礼、熱い指導!)が聞こえるようになったなんて、面白いですよね。
それぞれの企業が、単にお金を出すだけでなく、「技術」や「商品」で大会の質を高めているのです。
2026年、そして次の100年へ向けて
サッポロビールがスポンサーになってから約40年。
箱根駅伝は、単なる関東のローカル大会から、日本中が注目する巨大コンテンツへと成長しました。
これからの箱根駅伝はどうなっていくのでしょうか?
若返るターゲットと変わらない想い
2025年のCMにKID FRESINOが起用されたように、箱根駅伝は今、明確に「若返り」を図っています。
少子化が進む中で、駅伝を「おじいちゃんおばあちゃんが見るもの」から、「若者が憧れるクールなスポーツ」へとアップデートしようとしているのです。
また、2026年の第102回大会に向けて、ミズノのグッズ予約が前年の11月から始まるなど、ファンの熱気は年々早期化しています。
それでも、変わらないものがあります。
それは、一本のたすきに想いを込めて走る学生たちの純粋さと、それを支える企業たちの「共走」の精神です。

まとめ:来年のお正月はここに注目!
長くなりましたが、サッポロビールと箱根駅伝の深い関係、お分かりいただけたでしょうか?
- 1987年の決断: 技術と資金の壁を越え、完全生中継を実現するためにサッポロが立ち上がった。
- 精神的共鳴: ビール造りの「バトンタッチ」と駅伝の「たすき」は同じ心を持っている。
- 制約が生んだ物語: 飲むシーンを見せられないからこそ、心に響くストーリーCMが生まれた。
- 最強の布陣: トヨタ、ミズノ、Pasco、セコムと共に、それぞれのプロフェッショナルが大会を支えている。
次のお正月、箱根駅伝をご覧になるときは、ぜひ選手の走りだけでなく、その後ろで静かに走る車や、沿道の黄色いスタッフ、そしてCMの間に流れる企業のメッセージにも注目してみてください。
「ああ、この美しい中継映像は、たくさんの企業の支えがあって届いているんだな」
そう思うと、選手の汗と涙が、より一層輝いて見えるかもしれません。
それでは、また来年のお正月、テレビの前でお会いしましょう!
「私」という物語にも、乾杯を。
箱根駅伝の選手たちが、仲間とたすきを繋ぐ姿。 それを見ていると、不思議と胸が熱くなって、「私もまた明日から頑張ろう」という勇気が湧いてきますよね。
そんな感動の余韻に浸りながら、今年の冬はちょっと特別な時間を過ごしてみませんか?
サッポロビールが掲げる「乾杯をもっとおいしく」。 実はこれ、選手へのエールであると同時に、毎日をひたむきに走り続ける「あなた自身」にかける魔法の言葉でもあるんです。
忙しい日常の中で、ふと立ち止まり、自分を大切にする時間を持つこと。 洗練された「黒ラベル」のグラスを傾け、その完璧なバランスとクリーミーな泡を味わう瞬間は、大人の女性だけが知っている「心をリセットする贅沢な魔法」です。
お正月限定の華やかな「箱根駅伝缶」や、いつもの食卓をランクアップさせる特別な黒ラベル。 ぜひ、感動のドラマと共に、あなた自身の素敵な物語にも「乾杯」してみてくださいね。









