日本経済新聞 2025年9月23日(火)朝刊春秋の要約と総裁選
自民党の第2代総裁を務めた石橋湛山は晩年、総裁の選び方を巡って「公選はよくないと思う」と語っている。味方をたくさん集めなければならないため派閥の力が働くことになり、カネもかかる、と。後々までしこりが残る恐れも指摘した(岩波書店「湛山座談」)。
ではどうするか。例えば総裁を3人にするのが一案だと湛山はいう。名目上の首相は決めつつも3人が協力して首相職を担う――。総裁選の初回投票で敗れた湛山は、決選投票で2、3位連合を組み僅差で逆転したが、その後の組閣で難儀した。かつての苦労の経験が挙党一致を重んじる発想につながったのかもしれない。
(有料版日経新聞より引用)
総裁公選の課題と石橋湛山の発想
石橋湛山の言葉は、現代に生きる私たちにとっても示唆に富んでいます。
公選が抱える課題
一見すると民主的に見える公選ですが、湛山は次の課題を指摘しました。
- 味方を集めるために派閥の力が強まる
- 選挙運動にお金がかかりすぎる
- 選挙後も「しこり」が残って党内がまとまらない
これは現在でもそのまま通じる問題です。
3人総裁制というユニークな案
湛山は「総裁を3人にする」という発想をしました。
- 名目上の首相は1人
- 実務を3人で分担
- 派閥争いを和らげ、協力体制を築く
自身が総裁選で逆転勝利した後に組閣で苦労した経験が、この発想につながったと考えられます。
現代の総裁選に残る構造的課題

派閥が弱まっても消えない「味方集め」
現在の自民党は「派閥の時代は終わった」と言われます。
けれど実際には、次のような点で「味方集め」の構造は残っています。
- 派閥の弱体化後も、緩やかなグループが存在
- SNSやメディア露出が新しい「派閥」の役割を果たす
- 「人を集める力」を持つ候補者が有利になる
与党多数が当たり前ではなくなった
- 以前は総裁=自動的に首相という図式だった
- 今は与党が過半数を割る可能性もある
- 総裁選で勝っても国民の支持がなければ政権は安定しない
総裁選の仕組みを知ろう
投票権を持つのは誰?
- 国会議員票:自民党の国会議員が投票
- 党員票:全国の党員・党友が投票
国民全員が直接投票できるわけではありません。
国民生活への影響
総裁=与党のトップ=首相候補です。
そのため、総裁選の結果は私たちの暮らしに直結します。
影響が出る分野の例:
- 消費税率の見直し
- 防衛政策や外交関係
- 子育て支援や教育制度
- 医療・介護の仕組み
石橋湛山の警告「希望を与えよ」
湛山は戦前から「民衆に希望を与えよ。さもないと過激な方向に傾く」と訴えていました。
希望を失った社会で起こること
- 投票率の低下
- 極端な思想への傾倒
- 政治不信の拡大
希望を与える政策とは?
- 物価上昇から家庭を守る施策
- 子育て世代が安心できる制度
- 高齢者への医療と介護の充実
- 環境問題への真剣な取り組み
過去の総裁選からの学び
田中角栄の時代
- 資金力と人脈で党内を掌握
- 「数は力」を象徴する存在
中曽根康弘の時代
- 派閥の均衡で政権を安定化
- 長期政権を築いた
小泉純一郎の時代
- 「自民党をぶっ壊す」というフレーズで支持を集める
- 国民の心に刺さるシンプルな言葉が力を持った時代
安倍晋三の時代
- 長期政権を実現
- 一強体制による安定と引き換えに、党内民主主義の形骸化が批判された
海外との比較

アメリカ大統領選
- 全国民が投票
- 長い予備選挙と本選を経て選ばれる
イギリス首相選
- 与党党員の投票で党首を決める
- 日本の総裁選と似た仕組み
海外と比較すると、日本の総裁選は「効率」と「民主性」のバランスに悩む制度といえます。
読者の疑問に答えるQ&A
Q. 総裁選って国民投票にできないの?
A. 制度上、自民党の「党首選び」であり、党員や議員しか投票できません。
Q. 国民はどう関われるの?
A. 候補者の政策を知り、次の国政選挙で意思を反映させることができます。
Q. 総裁選を見ておくべきポイントは?
A. 「派閥の駆け引き」ではなく、生活に直結する政策です。
石橋湛山という人物像
ここで少し、石橋湛山という人物について触れておきます。
- 新聞記者出身で、自由主義的な思想を持っていた
- 小国主義を唱え、侵略より平和を重視した
- 戦後は首相にもなったが、病気で短命に終わった
- 派閥に頼らない清廉な政治家として評価される
この人物像を知ると、なぜ「公選はよくない」と言ったのかが理解しやすくなります。
現代の課題と私たちの生活

物価と生活
- 食料品や光熱費の高騰
- 家計に直結する政策が求められている
子育てと教育
- 少子化に歯止めがかからない
- 教育費や保育制度の改善が急務
医療と介護
- 高齢化が進む社会での最大の課題
- 誰もが安心できる仕組みが必要
環境問題
- 気候変動による災害リスク
- 再生可能エネルギーや脱炭素への本気度が問われている
まとめ:希望を与える政治へ
- 総裁選は派閥争いではなく、私たちの未来を決める大事なプロセスです
- 石橋湛山の「希望を与えよ」という言葉は今も響きます
- 誰が本当に希望を示せるのか、その視点で候補者を見極めることが大切です
