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世界最大の像「統一の像」から読み解く現代インドの光と影

日本経済新聞 今日の日付(2025年9月2日 火曜日)朝刊春秋の要約とインドの光と影

世界最大の人物像はインドにある。モディ首相が地元に建てた高さ182メートルの「統一の像」だ。言語も宗教も多様な国の国是「多様性の中の統一」の象徴だが、これはムスリムへの抑圧を覆い隠す。著書「ルポ国威発揚」で訪ねた辻田真佐憲さんが本紙で解説していた。

経済成長で市井の変わりようも激しいのだろう。カンヌ映画祭のグランプリ作品「私たちが光と想(おも)うすべて」は、そんな大都市ムンバイに生きる女性の悩みや支え合う姿を丁寧に描く。そこにはムスリムの男性と付き合う難しさも。速足で変わるかの国を追うのは至難だが、中間層の実像を描く映画に今後も期待が膨らむ。

(有料版日経新聞より引用)



目次

統一の像とは? なぜ今、世界最大の像がインドに?

インド西部グジャラート州にある「統一の像(Statue of Unity)」は、2018年に完成した、世界で最も高い像です。その高さは182メートルで、これはニューヨークの自由の女神の約2倍にもなります。

像のモデルになったのは誰?

この巨大な像のモデルになっているのは、インド独立運動の指導者であるヴァッラブバーイー・パテールという人物です。彼はインドの建国の父の一人として知られ「インドのビスマルク」とも呼ばれています。

彼の最も大きな功績は、独立後のインドがバラバラにならないよう、500以上もの藩王国をまとめ上げ、現在のインドの形を築き上げたことです。この功績から、彼の像はまさに「多様性の中の統一」という、現代インドの国是を象徴しているのです。


巨大な像の裏側にある「インドの光と影」

この「統一の像」は、単なる観光名所ではありません。そこには、現代インドが抱える複雑な社会問題が隠されています。コラムにもあったように、この像は「多様性の中の統一」を象徴する一方で、特定のコミュニティ、特にムスリムの人々への抑圧を覆い隠している、という指摘もあります。

経済成長の光と社会の影

インドは今、目覚ましい経済成長を遂げ、世界から注目を集めています。しかし、その一方で、宗教やカースト、貧富の差といった問題は根深く残っています。

成長する中間層の悩み

映画「私たちが光と想うすべて」は、そんな経済成長の波に乗る大都市ムンバイの女性たちの日常を描いています。彼女たちの悩みや葛藤を通して、インドの中間層が直面する現実がリアルに伝わってきます。例えば、ムスリムの男性との交際に困難を感じるというエピソードは、経済的な豊かさだけでは解決できない、社会の深い溝を示唆しています。


インドの政治・経済と「日中企業の競争」

日本の新聞コラムでも触れられているように、インドは今、世界の大国から熱い視線を浴びています。特に、半導体やIT分野での協力が期待され、日本や中国といった国々がインドとの関係強化に動いています。

日本とインドの関係

  • 半導体協力: インド政府は、半導体産業の育成に力を入れており、日本企業との連携を強化しています。
  • 人材交流: IT分野を中心に、インドの優秀な人材を日本に招き入れたり、共同でプロジェクトを進めたりする動きが活発になっています。

中国とインドの関係

  • 直行便の再開: 経済的な交流を活発にするために、両国間で途絶えていた直行便の再開が検討されています。
  • ビザの緩和: 観光やビジネスを目的としたビザの規制を緩めることで、人の往来を増やす計画です。

インド政府は「インドで作って世界に売ろう(Make in India, Sell to the World)」というスローガンを掲げ、自国を世界の製造拠点にしようとしています。これは、日本と中国の企業にとって、インドという巨大な市場で競争し、協力する場が生まれることを意味します。

「トランプ関税」の逆風をかわす盾?

コラムにあるように、インドの外交は、アメリカと中国の間でバランスを取りながら、自国の利益を最大限に引き出そうとしているように見えます。これは、時に「手玉に取られている」という印象を与えることもありますが、国際情勢が不安定な中、自国の経済を守るための巧みな戦略とも言えるでしょう。


知っておきたい「現代インド」の姿

現代のインドを理解するためには、経済成長の数字だけでは不十分です。私たちは、そこで暮らす人々の多様な声に耳を傾ける必要があります。

経済と社会のギャップ

インドでは、わずか数十年で都市の景観が劇的に変わり、中間層が豊かになってきました。しかし、その一方で、伝統的な価値観や社会の仕組みは簡単には変わりません。

私たちが注目すべき点

分野成長の側面(光)課題の側面(影)
経済IT産業の成長、製造業の誘致、巨大な市場貧富の差の拡大、地方と都市の格差
社会自由な恋愛観の広がり、女性の社会進出宗教間の対立、カースト制度の名残、女性への暴力
政治外交の巧みさ、経済成長を主導する強いリーダーシップ特定の宗教やコミュニティへの抑圧、言論の自由の制限

インドを深く知るためのヒント

もしあなたがインドに興味を持たれたなら、以下のキーワードでさらに調べてみてください。きっと、多様なインドの姿が見えてくるはずです。

  • 統一の像(Statue of Unity): 巨大な像が建てられた背景や、観光情報、建設にまつわる議論など。
  • インドのビスマルク: パテールがどのようにしてインドを統一したのか、その歴史的背景。
  • ルポ国威発揚: 著者の辻田真佐憲さんが書かれた、ナショナリズムと現代社会の関係を読み解く一冊。
  • 私たちが光と想うすべて: カンヌ映画祭グランプリ受賞作品。インド社会のリアルを描く。
  • メイク・イン・インディア: インド政府が推進する製造業振興策。

インドは、まさに「多様性の中の統一」を体現する国です。その国を理解するには、巨大な像や経済成長といった「光」の部分だけでなく、その裏側にある社会的な課題という「影」の部分にも目を向けることが大切です。そうすることで、表面的な情報だけでは見えない、より深いインドの魅力に触れることができるでしょう。


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