日本経済新聞 2025年8月22日(金)の要約と前髪の悩み
先日、ラジオ番組の中でリスナーの悩み相談に応じるパーソナリティが、思春期の子どもの難しさを「前髪が決まらないだけでこの世の終わり、みたいな感じだから」と表現していた。回答者は私より少し年上の女性で、その言いぶりからは、前髪がどうであるかなど、大人の聴取者は一笑に付すはずのくだらないことだという確信が伝わってきた。ところが……、私はそれを笑い飛ばすことができなかった。つい前髪を気にしてしまうからである。前髪が気に入らないからといってこの世の終わりとまでは思わないが、今日一日は終わり……くらいの気持ちにはなる。 さくらももこ『ちびまる子ちゃん』(集英社)に「おかっぱ・かっぱ」という名作がある。小学6年生のまる子は、中学校の入学式前日、母に髪を切ってもらうことになった。前髪のみならず、全体に切られ過ぎた髪にまる子は絶望し、「しんでやる~」と激しく泣き続ける。家族の誰も手をつけられないほど泣き喚(わめ)くまる子の気持ちが、私は痛いほどわかるのである。(有料版日経新聞より引用)
前髪の失敗はなぜこんなに私たちを悩ませるの?

ねえ、前髪って本当に不思議だと思いませんか?たった数センチ、いや数ミリ違うだけで、気分が天と地ほど変わってしまう。
日経新聞のコラムにもあったように、「前髪が決まらないだけでこの世の終わり」とまで思うのは思春期の子どもだけじゃないんです。大人になった今でも、「今日はもうダメだ…」って心がどんよりしちゃう。
でも、なんで私たちはこんなに前髪に一喜一憂しちゃうんでしょうか?
一緒にその理由を考えてみましょう。
前髪は「顔の額縁」

顔の印象って、前髪で9割決まる、なんて言われることがありますよね。これはあながち嘘じゃありません。
ある美容系サイトが行った調査によると、「顔の印象を左右するパーツは?」という質問に対し、約70%の女性が「前髪」と答えたそうです。(※1)
前髪は、私たちの顔立ち、目の大きさ、おでこの形などを隠したり、見せたりする「額縁」のような役割を果たしています。だから、この額縁が少しでもズレると、顔全体がなんだかアンバランスに見えてしまう。
鏡を見るたびに、そのズレが気になってしまって、「ああ、今日はおかしな顔してるな」って自己評価が下がってしまうんです。
特に、前髪は顔の中心に位置しているから、どんなに他のメイクやファッションが完璧でも、そこに違和感があると全部が台無しに感じてしまうんですよね。
鏡を見るたびに自己評価が下がる
前髪って、一日の中で一番目にする自分の顔の部分ですよね。
化粧室の鏡、お店のウィンドウ、スマートフォンの自撮り画面。ふと見上げるたびに、自分の前髪が目に飛び込んできます。
例えば、朝のスタイリングがうまくいかなくて、前髪が変な方向にハネてしまったとします。
その日一日中、友達と話していても、仕事でプレゼンをしていても、頭の片隅には「このハネた前髪、変じゃないかな?」という不安がこびりついて離れない。
これって、心理学でいう「確認バイアス」に近いのかもしれません。一度「失敗した」と思ってしまうと、その失敗を補強するような情報ばかりに目が行ってしまう。
「あの人が私の方を見たのは、きっと前髪が変だからだ」「今日の私、なんだか冴えないな」と、ネガティブな考えがどんどん膨らんで、自己肯定感が下がってしまうんです。
「こんなことで悩むなんて…」という罪悪感
そして、私たちをさらに苦しめるのが、「こんなことで悩んでいるなんて、大人として恥ずかしい」という罪悪感です。
日経新聞のコラムにあったように、大人から見れば「くだらないこと」に思えてしまう。
仕事や人間関係、子育てや家事など、もっと大変な問題がたくさんあるのに、たかが前髪で一日中落ち込むなんて、幼稚なんじゃないか、と自分を責めてしまうんですよね。
でも、それは決して幼稚なことではありません。
前髪の悩みは、私たちの内側にある「自分をどう見られたいか」という自意識や、「完璧でありたい」という願望が表れたものなんです。
思春期に前髪を気にするのは、周りの評価を気にし始める自己意識の芽生えです。大人になってもその気持ちが消えないのは、それだけ自分自身と真摯に向き合っている証拠だと私は思います。
だから、落ち込む自分を責めないで。「ああ、私って今も自分に自信が持てないんだな」って、少し立ち止まって自分を理解してあげることが大切なんです。
失敗した前髪、今日からできる緊急レスキュー法!
さて、前髪の失敗で落ち込んでいるあなた。大丈夫、まだ希望はあります!
ここからは、私が美容師さんやヘアメイクさんから教えてもらった、とっておきの応急処置方法をお伝えします。
「もう切ってしまったものはどうしようもない…」と諦める前に、ぜひ試してみてくださいね。
短すぎちゃった!前髪の魔法のアレンジ術
「美容室に行ったら思ってたより短くされた…」「自分で切ったらパッツンになっちゃった…」
そんなとき、鏡を見るたびに泣きたくなる気持ち、痛いほど分かります。
でも、短い前髪だって、ちょっとした工夫でとっても可愛く変身できるんです。
アレンジ① シースルーバング風に
最近流行りのシースルーバング、実は短い前髪の救世主なんです。
- 前髪を少しずつ細く束にして、ワックスやヘアオイルを少量つけます。
- 真ん中の部分だけ少しだけおでこが見えるように、束をずらして隙間を作ります。
- サイドの髪は、前髪の長さに合わせて少しだけ内巻きにすると、顔まわりに自然な流れが生まれて、前髪の短さが気になりにくくなります。
ポイントは、オイルをつけすぎないこと。つけすぎると海苔みたいになってしまうので、少量ずつ指先にとって、毛先につけるのがコツです。
アレンジ② ピンやカチューシャで隠す

これは一番手軽な方法ですね。
ヘアピンやカチューシャを使って、前髪を隠してしまう、またはデザインの一部として取り込んでしまうという考え方です。
- ピンで留める: 前髪を左右どちらかに流し、可愛いピンで留めます。ピンを二つ重ねてクロスさせたり、ゴールドやパールなど少し凝ったデザインのピンを選ぶと、隠している感がなくなって、おしゃれに見えます。
- カチューシャ: 太めのカチューシャで前髪を全部上げてしまうのも手。このとき、おでこを出すことに抵抗があるなら、少しだけ前髪をふんわり残す「おくれ毛」を作ると、顔の輪郭をカバーできます。
アレンジ③ 前髪をなくすアレンジ
短い前髪を思い切ってオールバックにしたり、ポンパドールのようにふんわりと立てるのも一つの方法です。
ポンパドールは、前髪を少しずつねじってからピンで留めると、短い毛が落ちてこないのでおすすめです。
このとき、前髪の根元にドライシャンプーやふんわりさせるスプレーを使うと、ボリュームが出てスタイルが長持ちします。
量が多すぎる!重見え前髪を軽く見せるワザ
「すきバサミを入れすぎてスカスカに…」という悩みとは反対に、「量が多すぎてなんだか重たい…」と感じている人もいるかもしれません。
特に湿気の多い日は、前髪がべったりして見えてしまいますよね。
そんな重見え前髪を、軽やかで垢抜けた印象に変える方法をご紹介します。
アレンジ① 分け目をずらす
いつも同じ場所で分けていると、前髪の毛流れが固定されてしまって重く見えがちです。
前髪の分け目を、いつもより1センチほど左右にずらしてみましょう。
これだけで、根元が立ち上がってふんわりと軽やかな印象になります。
アレンジ② コテやアイロンで動きをつける

前髪に少し動きをつけるだけで、軽やかさが出ます。
コテを使う場合は、19mmや26mmなど細めのものがおすすめです。
- 前髪を少量ずつとって、毛先だけを軽く内巻きにします。
- このとき、全体の毛束を一度に巻かず、少しずつずらして巻くことで、自然な束感が生まれます。
- スタイリング剤を指先に少しだけつけて、束感を強調するように毛先を整えます。
左右非対称!プロ級の修正術
自分で切ったり、美容師さんのカットが左右対称になっていなかったり…。そんなときは、アシンメトリーなスタイルを楽しむチャンスと捉えましょう。
アレンジ① 流し前髪にチェンジ
短い方に合わせて、長い方を斜めに流すようにスタイリングします。
ドライヤーの熱を使って、長い方の根元をしっかり立ち上げてから流すと、自然な仕上がりになります。
前髪の流したい方向とは逆にドライヤーの風を当てると、根元がふんわりと立ち上がって、流しやすくなりますよ。
アレンジ② 斜め分けでごまかす
前髪全体を思い切って斜め分けにして、長い方のサイドの髪と馴染ませてしまう方法です。
このとき、コームやブラシでしっかりと分け目を作り、ケープなどで固定すると、時間が経っても崩れにくくなります。
次の失敗を防ぐ!自分でできる前髪カットのコツ
「もう失敗はしたくない!」
そう思っているあなたのために、プロの美容師さんが実践している前髪カットのコツをまとめてみました。
これを参考にすれば、次からは自分で理想の前髪をゲットできるはずです。
【準備編】絶対に揃えたい道具
前髪カットの失敗は、道具選びから始まっていることが多いんです。
お家にあるハサミで適当に…なんて絶対にやめましょう。

道具名 | なぜ必要? | 選び方のポイント |
ヘアカット用ハサミ | 切れ味が悪く、毛先が傷んでしまう。 | 1000円くらいのものでも大丈夫。切れ味のいいものを。 |
すきバサミ | 毛量を調整し、自然な仕上がりに。 | 刃の間に隙間があるタイプを選ぶ。 |
ダッカール(クリップ) | 他の髪の毛が邪魔にならないように固定する。 | 髪をしっかり挟めるタイプを数本。 |
コーム | 前髪をまっすぐとかし、毛束を整える。 | 目の細かいコームがおすすめ。 |
「わざわざハサミを買うのはもったいないな…」と思うかもしれませんが、前髪カットに特化したハサミは、切れ味が鋭く、髪を傷めにくいようにできています。
一度購入すれば、何度も使えるので、長い目で見ればお財布にも優しいですよ。
【実践編】失敗しないカットの手順
さあ、いよいよカットです。でも安心してください。
これからお伝えする手順をしっかり守れば、失敗のリスクをぐっと減らすことができます。
1. 前髪をブロッキング
これが一番大事なステップです!
前髪として切りたい部分を、コームで丁寧に分けとります。このとき、黒目の外側から外側を結んだラインを前髪の幅とすると、バランスよく仕上がります。
分けとった以外の髪は、ダッカールでしっかり留めておきましょう。
2. 少しずつ、焦らずに
「一気に切っちゃえ!」は、失敗の元です。
ハサミを縦に入れ、毛先を少しずつ切るようにしましょう。
このとき、ハサミを真横に入れる「パッツン切り」はNG。
ハサミを縦に入れることで、毛先に自然なギザギザができて、軽やかな印象になります。
3. 「濡らさない」が鉄則
お風呂上がりなど、濡れた状態で前髪を切っていませんか?
髪は乾くと、濡れているときよりも少し短くなります。
濡れた状態でちょうどいい長さに切ってしまうと、乾かしたときに「えっ!こんなに短く?」と後悔することになるんです。
前髪カットは必ず、乾いた状態で行いましょう。
「失敗」も「個性」に!前髪を愛でるマインドシフト
これまでの対処法や予防法も大切ですが、前髪の悩みから本当に解放されるためには、心の持ち方を変えることが一番の近道かもしれません。
日経新聞のコラムにもあった、CHAGE and ASKAの「好きになる」という曲の歌詞。「切り過ぎた前髪を悔やむ 君を好きになる」という一節は、まさに私たちへのメッセージだと思いませんか?
CHAGE and ASKAの歌詞に学ぶ「愛おしさ」
「前髪を悔やむ君」という表現、なんだか私たちのことを歌ってくれているみたいで、胸がギュッとしますよね。
この歌詞が素晴らしいのは、前髪の失敗そのものを愛おしいと感じていること。
完璧な自分でいることよりも、失敗して落ち込んだり、ちょっと情けない自分を「愛おしい」と思えること。
この視点が、私たちを前髪の呪縛から解き放ってくれる鍵なのかもしれません。
完璧な人には、悩みや弱さがないように見えますが、それよりも「こんな失敗しちゃって、もう!」って笑い合える自分の方が、ずっと魅力的だと思いませんか?
完璧主義を手放す練習
前髪の失敗を過剰に気にしてしまうのは、私たちが「完璧な自分」であろうとしすぎているからかもしれません。
仕事も、恋愛も、ファッションも、メイクも、何もかも完璧にこなさなきゃいけない、という見えないプレッシャーを抱えていませんか?
前髪の失敗は、そんな「完璧主義」を手放す良い機会なのかもしれません。
「まあ、いっか!」
この言葉を心の中で唱えるだけで、驚くほど気持ちが楽になります。
完璧じゃなくても、それがあなたらしい個性になる。
「ちょっと短い前髪も似合ってるね」
「その前髪、逆にモードっぽくていいじゃん!」
もし、友達がそんな風に声をかけてくれたら、きっと嬉しいですよね。
そうやって、周りの人たちも「失敗」を「個性」として受け入れてくれるはずです。
失敗から生まれる新しい自分

前髪の失敗をきっかけに、新しいヘアアレンジを試したり、いつもと違うヘアアクセサリーに挑戦したり…。
失敗から新しい自分を発見することだってあるんです。
普段、無難な前髪を選びがちな人も、短くなってしまったことで「あ、意外とオン眉似合うかも!」と気づくかもしれません。
ピンで留めたり、カチューシャをつけたりするうちに、「このヘアアレンジ、可愛い!」と新しいスタイルを見つけられるかもしれません。
前髪の失敗は、自分を「変える」ためのヒントをくれる、最高のきっかけなんです。
前髪と一緒に「気分」を上げる!おすすめアイテム&ルーティン
前髪の悩みは、日々のケアやスタイリングのちょっとした工夫で解決できることもあります。
ここでは、私が実際に使ってみて、「これはいい!」と感じたアイテムや、前髪を美しく保つためのルーティンをご紹介します。
これらのアイテムや習慣を取り入れて、前髪と一緒に気分も上げていきましょう!
スタイリング剤・ヘアケアアイテムの選び方
前髪のスタイリングには、その日の前髪の「お悩み」に合わせたアイテムを選ぶことが重要です。
前髪のお悩み | おすすめアイテム | なぜおすすめ? |
ぺたんこになる | 軽めのヘアスプレー、ドライシャンプー | 根元に吹きかけるだけでふんわり感が復活します。 |
広がる・ハネる | ヘアバーム、ヘアミルク | 髪に潤いを与え、しっとりとまとまりやすくなります。 |
オイリーでべたつく | ドライシャンプー、フェイスパウダー | 余分な皮脂を吸着し、サラサラ感が続きます。 |
パサついてまとまらない | ヘアオイル、洗い流さないトリートメント | 毛先の乾燥を防ぎ、ツヤとまとまりを与えます。 |
特に、ドライシャンプーは、前髪のべたつきが気になるときに本当に便利です。
スプレータイプのものなら、シュッと吹きかけるだけで、サロン帰りのようなサラサラ前髪が復活します。
フェイスパウダーも、前髪の生え際につけるだけで、テカリを抑えてくれるという裏技も口コミで広まっています。
ドライヤーのかけ方、朝のルーティンの見直し
前髪の形は、ドライヤーの乾かし方で決まります。
「朝起きたら前髪がパックリ割れてる!」というお悩みも、ドライヤーのルーティンを変えるだけで解決できます。
- 濡れた状態からスタート: お風呂上がりや、朝起きてから一度前髪を水で濡らしましょう。
- 根元をこする: 前髪の根元を指でこするようにしながら、左右から風を当てて乾かします。こうすることで、寝癖がリセットされ、根元の立ち上がりがよくなります。
- 最後に冷風を当てる: ほぼ乾いたら、最後に冷風を当てて、形をキープさせましょう。熱でセットした形は、冷ますことで固定されます。
朝の忙しい時間でも、たったこれだけで前髪の仕上がりが格段に変わります。
「もう前髪は失敗しない!」という自信にもつながりますよ。
おわりに

前髪の失敗で落ち込む気持ち、本当にわかります。
でも、そんな風に一生懸命、自分をきれいに見せようと努力しているあなた自身を、まずは褒めてあげてほしいんです。
「前髪が決まらないだけでこの世の終わり」とまで思ってしまうのは、それだけ自分を大切にしている証拠。
完璧じゃなくていいんです。
少し短い前髪も、ちょっとハネた前髪も、それは世界でたった一つのあなたの個性。
今日から、前髪を「愛おしいもの」として見てあげてください。
そうすれば、きっと前髪の悩みから、少しずつ解放されていけるはず。
鏡の中の自分に、優しく微笑みかけてみませんか。