この記事を3行でまとめると
- 不登校というだけでは介護休業の対象にならないが、心身の不調で2週間以上の常時介護が必要なら、年齢を問わず対象になり得る
- 診断書は法律上の必須書類ではない。まずは日常の様子を整理して、勤務先の窓口に相談することから始められる
- 介護休業は通算93日・3回まで。給付金や社会保険料の扱いは別の条件で確認が必要
学校に行けない朝が続くと、仕事をどうするか、親のほうが先に追い詰められてしまいますよね。結論からお伝えすると、「不登校」という事実だけで自動的に介護休業が取れるわけではありません。でも、子どもの心や体の状態によっては、小学生でも高校生でも、年齢を問わず対象になり得ます。今日はその見分け方と、申請までの進め方を一緒に整理していきますね。
不登校の子どもに介護休業は使える?

判断するのは「不登校かどうか」ではなく、日常生活で必要な支援
介護休業は、育児・介護休業法という法律に基づく制度です。対象になるかどうかは「学校に行っているか」ではなく、子どもが「常時介護を必要とする状態」にあるかどうかで判断されます。
法律の定義では、要介護状態とは「負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」とされています。ポイントは、身体だけでなく「精神上の障害」も含まれているところです。つまり、体は元気でも、強い不安やパニックなどで日常生活に常時の見守りが必要な状態であれば、対象に含まれる可能性があるということです(厚生労働省「介護休業」)。
私自身、この制度をあらためて調べてみて驚いたのですが、「介護」という言葉から高齢の親を思い浮かべる人がほとんどだと思います。でも法律上の対象家族には「子」も含まれていて、しかも年齢の上限はありません。小学生も、高校生も、成人した子どもも、状態次第で同じ基準にあてはまります。
2025年の判断基準見直しで明確になったこと
介護休業の対象になるかどうかを具体的に判断するための「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」という通知があります。これは2025年4月に見直され、その内容は厚生労働省の育児・介護休業法のページに掲載されています(厚生労働省「育児・介護休業法について」不登校対策の項目)。
このページには、「不登校児童生徒が育児・介護休業法における『常時介護を必要とする状態』に該当する場合には、介護休業・休暇制度等が利用可能です」という記載があり、判断基準のPDFがあわせて案内されています。
ここで誤解しないでほしいのは、「不登校なら誰でも休める制度が新しくできた」わけではないという点です。もともとの法律の定義自体は変わっていません。変わったのは、判断のものさしを実際に使うときの解釈や説明が、精神的な不調による見守りや声かけの必要性も含めてわかりやすく整理された、ということです。私が資料を読んだ印象では、「今まで対象になり得たのに、現場では見落とされがちだったケースを拾いやすくした」という位置づけが近いと感じました。
うちの子は対象?確認したい日常生活の状態

見守りや声かけが必要な場面を具体的に整理する
判断基準には、日常生活のさまざまな場面についての表があり、自分でできる状態・一部見守りや声かけが必要な状態・全面的な介助が必要な状態、という段階で評価する仕組みになっています。項目数や表現の細かい部分は今後見直される可能性もあるので、正確な内容は必ず厚生労働省のページから最新のPDFを確認してください(判断基準PDFはこちら、ページ内「不登校対策」の項目からリンクされています)。
大まかな考え方としては、こんな場面が評価の対象になります。
- 1人で安全に外出したり、外出先から戻ってきたりできるか
- 自分の意思を人に伝えたり、周りの説明を理解したりできるか
- 日中1人にしておいて、事故や危険な行動につながる不安がないか
- 物を壊す、衣類を破くなど、興奮を抑えられない場面が頻繁にないか
- 食事や着替えなど、身の回りのことに促しや見守りが必要かどうか
注目したいのは、判断基準の中に「発達障害等を含む精神障害、知的障害などにより危険の認識に欠けることがあり、自発的に危険を回避することができず、見守り等を要する状態」という趣旨の説明が明記されていることです。強い不安から1人での外出や留守番が難しい、パニックのときに目が離せない、といった状態は、この考え方にあてはまる可能性があります。
「見守り」がどう評価されるかについても、判断基準では、常時の付き添いが必要な見守りや、必要な行為の確認・指示・声かけを含む、という考え方が示されています。「手を貸す」ことだけでなく、「そばで見て、声をかけ続ける」ことも介護の一部として位置づけられている、と理解しておくとイメージがつきやすいと思います。
診断名や年齢だけで決められない理由
ここまで読むと、「うちの子はこの項目にあてはまりそう」「あてはまらなそう」と、つい白黒つけたくなりますよね。でも実際の判断は、1つの場面だけでなく、日常生活全体の状態を、2週間以上続くかどうかもあわせて見ていくものです。
例えば、同じ「登校できない」状態でも、日中は落ち着いて1人で過ごせる子もいれば、常に誰かがそばにいないと不安定になる子もいます。逆に、診断名がついているかどうかだけで機械的に決まるものでもありません。適応障害や起立性調節障害、発達障害といった診断の有無にかかわらず、日常生活でどれだけの支援が実際に必要かが軸になります。
年齢についても同じです。小学生だから対象になりやすい、高校生だから対象になりにくい、ということはありません。高校生や成人した子どもであっても、心身の状態によって常時の見守りが必要であれば、対象家族の「子」として検討の対象になります。
私がここで伝えたいのは、「自分で決めつけずに、まずは日常の様子を整理して、勤務先や後述の相談先に確認してみる」という姿勢です。判断が難しいケースこそ、次の章の準備が役に立ちます。
診断書がないと申請できない?

会社に相談するときに整理しておきたいこと
診断書がないと申請できないのでは、と不安になる方は多いと思います。でも、厚生労働省のQ&Aでは、証明書類は医師の診断書に限定されないとされており、診断書の提出が法律上の必須要件ではないことが読み取れます(厚生労働省 よくあるお問い合わせ)。
一方で、会社側は、対象家族が要介護状態にあることを確認できる書類の提出を求めることができるともされています。つまり、「書類は一切いらない」わけではなく、「診断書という特定の形式でなければならない、というわけではない」というのが正確な理解です。実際にどんな書類で足りるかは、会社の就業規則や担当者の判断によって幅があるため、最終的には勤務先または労働局に確認するのが確実です。
私が調べていて感じたのは、「診断書を取れないから諦める」前に、確認する順番を整理するだけでもだいぶ気持ちが軽くなる、ということでした。おすすめの順番はこうです。
- 子どもの日常の様子(見守りが必要な場面、頻度、期間)を書き出しておく
- 就業規則の育児・介護休業に関する規定と、申請窓口を確認する
- 必要な書類の種類を、担当窓口に具体的に聞く
- 休業を希望する開始日を決めて相談する
伝え方の短い文例
人事や上司に切り出すときは、最初から詳しい病状を説明しようとしなくて大丈夫です。まずは制度の相談だという入り口を作ることが目的です。
> 「育児・介護休業法の介護休業について相談したいことがあります。子どもが心身の不調で日常的に見守りが必要な状態が続いていて、対象になるか確認させてください。」
この一言があれば、担当者もどの制度の話か理解しやすくなります。診断名を詳しく話す必要はなく、「日常生活で見守りや支援がどれくらい必要か」という状態像を伝えられれば十分です。
何日休める?給付金は受け取れる?

通算93日・3回までの使い方
介護休業は、対象家族1人につき通算93日まで、最大3回に分けて取得できます(厚生労働省「介護休業」)。休業開始予定日の2週間前までに、書面などで会社に申し出る必要があります。
93日を一度に使い切る必要はありません。状態が不安定な時期に短く休む、進級や新学期などの負荷がかかりやすい時期にまとめて休む、といった分け方もできます。
実際に計算してみた:93日をどう分けて使うか
ここで、日数の使い方を実際に計算してみました。仮に通算93日を3回に分けるとすると、単純に3等分した場合は1回あたり31日になります。実際にはきれいに3等分する必要はなく、例えば1回目を14日、2回目を30日、3回目を残りの49日、というように、その時々の状態に合わせて組み立てることができます。14+30+49で合計93日になり、上限を超えないことを確認しながら組むのがコツです。
もう1つ確認しておきたいのが対象外になる条件です。会社が労使協定を結んでいる場合、次の3つに該当する人は対象外にできるとされています。
- 継続雇用期間が1年未満の労働者
- 申出の日から93日以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者
- 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
この3つの条件のうち、自分にあてはまるものが1つでもないか、就業規則とあわせて確認しておくと安心です。
介護休業と給付金は条件を分けて確認する
介護休業を取得できるかどうかと、雇用保険から介護休業給付金を受け取れるかどうかは、別の話として分けて考える必要があります。給付金には雇用保険の被保険者であることなど別の要件があり、要件を満たす場合に、休業開始時の賃金日額をもとに計算した額のおおむね67%相当が、支給日数分支給される仕組みです(厚生労働省「介護休業」)。
支給額には上限があり、休業中に会社から一定以上の賃金が支払われている場合は減額や不支給の調整が入ります。上限額は年度ごとに見直されるため、「必ずこの金額がもらえる」と断定せず、申請時にハローワークで最新の条件を確認するようにしてください。
もう1つ知っておきたいのが、社会保険料の扱いです。育児休業とは異なり、介護休業の期間中は健康保険や厚生年金保険の保険料が免除される制度はありません。休業中も保険料の支払いは続くという前提で、生活費の見通しを立てておくと安心です。
介護休暇・子の看護等休暇とはどう違う?

似た名前の制度がいくつかあるので、対象と休める長さ、給付金の有無で整理しておきますね。
4つの制度を一覧で比較する
| 制度 | 対象となる子 | 休める長さ | 給付金 |
|---|---|---|---|
| 介護休業 | 要介護状態にある子(年齢制限なし) | 対象家族1人につき通算93日・3回まで | 要件を満たせば雇用保険から給付金あり(厚労省 介護休業) |
| 介護休暇 | 要介護状態にある子(年齢制限なし) | 対象家族1人なら年5日、2人以上なら年10日 | 給付金なし |
| 子の看護等休暇 | 小学3年生修了までの子 | 子1人なら年5日、2人以上なら年10日 | 給付金なし |
| 年次有給休暇 | 本人 | 労働基準法の範囲内 | 賃金として通常どおり支給 |
子の看護等休暇は2025年4月の改正で対象年齢が拡大され、取得理由にも学級閉鎖等への対応や入園式・卒園式・入学式への参列が加わりました(厚生労働省「子の看護等休暇」)。ただし、これは対象年齢と取得理由が限定された制度で、「不登校だから使える」と一般化できるものではない点に注意してください。中学生以上の子や、学級閉鎖・行事以外の理由での不登校対応には、この休暇はそのままではあてはまりません。
場面別の使い分けイメージ
突発的な受診の付き添いなら有給休暇や子の看護等休暇、継続的な見守りが必要なら介護休暇、2週間以上の体制づくりが必要なら介護休業、というように、状況に応じて使い分けるイメージを持っておくと選びやすくなります。1日単位で使える介護休暇や子の看護等休暇を組み合わせながら、大きな崩れが続くときだけ介護休業でまとまった期間を確保する、という段階的な使い方もできます。
退職を決める前に、今日できること
勤務先への相談
子どもの不登校をきっかけに、退職を考える保護者は少なくありません。私もこのテーマを調べながら、「辞める」か「続ける」かの二択で考えてしまいがちな現状を感じました。でも、その前にできることがいくつかあります。まずは前述の順番で、日常の様子を整理してから、勤務先の育児・介護休業の担当窓口に相談してみてください。
2025年4月の法改正で、会社には、従業員から家族の介護に関する相談があった場合に、介護休業などの制度を個別に周知し、取得の意向を確認することが義務づけられました。また、制度に関する研修の実施や相談窓口の整備といった、雇用環境の整備も求められています。介護休業の取得や相談を理由とした解雇や降格、不利益な取扱いも禁止されています。つまり、相談すること自体は、会社にとっても対応すべき義務の範囲に入っているということです。
学校や支援先との連携
スクールカウンセラーや担任の先生に、「仕事と両立するための制度を検討している」と伝えておくと、学校側の記録や状況の共有がスムーズになることがあります。フリースクールや医療機関を利用している場合も、日常の様子を共有しておくと、会社への説明がしやすくなります。
公的な相談窓口
会社に相談しても対応してもらえない、法律上の対象になるはずなのに一律に断られる、というときは、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談できます。ここは、育児・介護休業法に関する企業への指導や相談を担う公的な窓口です。
また、民間の取り組みとして、「不登校のための介護休業活用ツール」という無料のサービスもあります。これはキズキ、不登校ジャーナリストの石井しこう氏、Branchなどが運営し、社会保険労務士や精神科医が監修しているもので、LINEでの質問に答えることで対象になりそうかを確認したり、申請書類のひな形を作成したりできます(不登校のための介護休業活用ツール)。あくまで申請を後押しする民間のサポートツールであり、この判定や書類作成が、会社での承認や給付金の支給そのものを保証するものではありません。最終的な判断は勤務先やハローワークによって行われます。
93日という期間は、「ずっと付き添い続けるための時間」というより、「医療機関や支援先とのつながりを作り、学校や勤務先との両立の形を整えるための時間」として使うと、休業が終わったあとの見通しも立てやすくなります。
よくある質問

Q. 不登校というだけで介護休業は取れますか?
いいえ、不登校という事実だけでは自動的に対象にはなりません。心身の状態によって2週間以上、常時の見守りや介助が必要かどうかが判断の軸になります。
Q. 診断書がないと申請できませんか?
診断書は法律上の必須書類ではありません。ただし会社は要介護状態を確認できる書類を求めることができるため、どんな書類が必要かは勤務先に確認してください。
Q. 高校生や成人した子どもでも対象になりますか?
対象家族の「子」に年齢の上限はありません。年齢ではなく、日常生活でどれだけの見守りや支援が必要かで判断されます。
Q. パートや契約社員でも介護休業を取得できますか?
雇用形態による一律の除外はありません。ただし、会社が労使協定を結んでいる場合、継続雇用1年未満などの条件にあてはまる人は対象外になることがあるため、就業規則を確認してください。
Q. 父親でも介護休業を取得できますか?
取得できます。育児・介護休業法に性別による違いはありません。
Q. 会社に「うちの制度では対象外」と言われたらどうすればいいですか?
法律の基準を下回る独自の運用は認められません。まずは制度の根拠を確認したうえで、対応が変わらない場合は都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談してください。
Q. 介護休業と介護休暇はどちらを使えばいいですか?
数日程度の受診付き添いなどの短期対応なら介護休暇、2週間以上のまとまった体制づくりが必要なら介護休業が向いています。状況に応じて使い分けてください。
Q. 介護休業給付金は必ず67%もらえますか?
要件を満たした場合に、休業開始時の賃金をもとにした額のおおむね67%相当が支給されますが、上限額があり、休業中の賃金によって減額や不支給になることもあります。必ずこの金額と断定はできません。
Q. 介護休業中の社会保険料はどうなりますか?
育児休業と異なり、介護休業には社会保険料の免除制度がありません。休業中も保険料の支払いは続く前提で考えておく必要があります。
Q. 子の看護等休暇は不登校にも使えますか?
子の看護等休暇は、小学3年生修了までの子を対象に、病気やけがの看護、予防接種・健診、学級閉鎖等への対応、入園式・卒園式・入学式への参列を理由とする制度です。不登校そのものを理由に一般的に使える制度ではないため、混同しないよう注意してください。
まとめ
不登校というだけで介護休業の対象になるわけではありませんが、子どもの心身の状態によって、常時の見守りや支援が2週間以上必要な場合は、年齢を問わず対象になり得ます。判断に迷ったら、まず子どもの日常の様子を整理し、診断書にこだわりすぎず、勤務先の窓口に相談してみてください。会社の対応に納得できないときは、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)という相談先もあります。退職を決める前に、確認できることはまだいくつも残っています。
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参考・出典
- 厚生労働省「育児・介護休業法について」(不登校対策・常時介護を必要とする状態に関する判断基準)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html - 厚生労働省「介護休業」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/leave/ - 厚生労働省「子の看護等休暇」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/ikuji/nursing/ - 厚生労働省「よくあるお問い合わせ(労働者の方へ)」
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※本記事の情報は執筆時点(2026年9月)のものです。内容は法改正等により変更されることがあります。個別の該当可否や給付金の具体的な金額については、勤務先の担当窓口、都道府県労働局、ハローワークにご確認ください。医療・診断に関わる内容は医師にご相談ください。