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日立はなぜ家電をやめた?テレビ・冷蔵庫撤退の本当の理由とは

日立 テレビ撤退の歴史を振り返るイラスト

💡 3行まとめ

  • 日立は2012年にテレビの自社生産から、2018年に国内販売からも撤退した
  • 冷蔵庫・洗濯機は日立グローバルライフソリューションズが担当し、国内シェア約3割を維持
  • 2026年にはその白物家電事業もノジマへ売却する方向と報じられ、日立はデジタル・インフラ企業へ軸足を移している

実家の台所には、いまだに現役で動いている日立の冷蔵庫があります。子どもの頃はリビングに日立のテレビもありました。でも最近、家電量販店で「日立」のテレビを見かけることってほとんどない気がして、ふと気になって調べてみたんです。すると、日立がテレビの自社生産から撤退していたことや、2026年に入ってからは白物家電事業そのものを家電量販大手のノジマへ売却する方向で動いていることまでわかりました。あの日立が、なぜ家電から離れていったのか。今回はその理由を掘り下げてみます。

この記事でわかること

  • 日立がテレビ事業をやめたのはいつなのか
  • テレビ撤退のきっかけになった巨額赤字
  • 冷蔵庫・洗濯機は今どうなっているのか
  • 日立グローバルライフソリューションズとは何か
  • 2026年のノジマへの家電事業売却報道の中身
  • 家電をやめた日立が今何をしている会社なのか
  • 日立の経営改革全体とのつながり
目次

日立のテレビはいつ、どうやって姿を消したのか

日立 テレビ撤退の歴史を振り返るイラスト

2012年、自社生産から撤退

日立製作所は2012年9月末までに、テレビの自社生産から撤退しました。唯一の生産拠点だった日立情映テック(岐阜県美濃加茂市)での生産を終え、それ以降は海外メーカーへの生産委託に切り替えています。

私はこのニュースを知らなかったので、「もう10年以上も前に、国内でのテレビ製造はやめていたんだ」と驚きました。実家のテレビがいつ買ったものだったか記憶をたどると、たしかにもうずいぶん前だったように思います。

2018年、国内販売からも撤退

自社生産の終了だけでなく、2018年9月には自社ブランドテレビの国内販売からも撤退することが明らかになりました。つまり「作る」ことも「売る」ことも、日立は段階的にやめていったことになります。

世界的な国産テレビの苦戦という背景

日立だけでなく、当時は国内のテレビメーカー全体が、価格競争の激化や海外メーカーの台頭によって苦戦していました。日立の判断は、そうした業界全体の流れのなかでの決断でもあったようです。

「作る」より「支える」への切り替え

面白いのは、日立がテレビという「モノを作って売る」ビジネスから距離を置く一方で、そのテレビや家電を動かすための電力インフラ、放送・通信インフラといった「社会を支える設備」の分野にはむしろ力を入れ続けていた、という点です。私たちの目に触れる製品からは撤退しても、その製品を動かす裏側の仕組みには関わり続ける——そんな立ち位置の変化があったように感じます。

きっかけは7,873億円の巨額赤字だった

日立 7873億円赤字のニュースを見て驚く女性のイラスト

2009年3月期、製造業として過去最大級の赤字

日立がテレビ事業を含む不採算事業の整理に本格的に動き出した背景には、2009年3月期に計上した7,873億円という最終赤字がありました。当時、国内製造業として過去最大級とされる規模の赤字です。

薄型テレビ・デジタル家電が赤字の一因に

この赤字の要因の一つとされているのが、薄型テレビや液晶ディスプレイといったデジタル家電事業でした。世界的な景気後退のなかで、価格競争が激しいデジタル家電は利益を出しにくい構造になっていたようです。

川村隆氏が始めた改革の一環

2009年、日立はグループ会社の会長だった川村隆氏を本体の会長兼社長として迎え、「ラストマン」という考え方のもと、就任後100日間で上場子会社の完全子会社化などを進める「100日プラン」を実行しました。テレビ事業の縮小・撤退も、こうした構造改革の大きな流れのなかに位置づけられます。

当時の日立が抱えていた「連邦経営」の問題

私が調べていて驚いたのは、2008年度末の時点で日立には国内だけで22社もの上場子会社があったということです。それぞれの子会社が独立して経営判断をしていたため、意思決定のスピードが遅くなりがちだったと言われています。テレビ事業のような不採算部門の整理が後手に回った背景には、こうした組織構造の複雑さもあったのかもしれません。この22社は、2022年度までにすべて完全子会社化または売却され、ゼロになっています。

冷蔵庫・洗濯機は今どうなっているのか

日立 冷蔵庫 洗濯機が並ぶキッチンのイラスト

「日立グローバルライフソリューションズ」という会社

テレビからは撤退した日立ですが、冷蔵庫・洗濯機・掃除機といった白物家電は、今も現役です。これらを担当しているのが「日立グローバルライフソリューションズ(日立GLS)」という会社。2019年4月1日に、日立アプライアンスと日立コンシューマ・マーケティングが合併して発足しました。

主要3製品で国内シェア約3割

日立GLSは、冷蔵庫・洗濯機・掃除機という主要3製品の販売シェアで、国内約3割を占めているとされています。テレビは撤退したけれど、白物家電では依然として存在感のあるポジションを保っていたわけです。

会社名が変わっても「日立」の名前は残ってきた

面白いのは、事業を担う会社の名前が「日立アプライアンス」「日立コンシューマ・マーケティング」から「日立グローバルライフソリューションズ」へと変わっても、ブランド名としての「日立」は製品にずっと使われ続けてきたという点です。私たちユーザーからすると、裏側の会社組織がどう変わっていても、店頭で目にするのは変わらず「日立」のロゴ。だからこそ、事業の主体が変わっていたことに、気づきにくかったのかもしれません。

なぜテレビと白物家電で明暗が分かれたのか

テレビは海外メーカーとの価格競争が激しく、規模の経済で勝負が決まりやすい分野です。一方で冷蔵庫や洗濯機は、国内メーカーが培ってきた耐久性や使い勝手のノウハウが強みになりやすく、日立はこちらの分野には残る判断をした、と見ることができそうです。

日立ブランドの家電、実家で見かけたことがある人も多いはず

私自身、実家の冷蔵庫が今も日立製だと知ったとき、「あ、まだ日立の家電を使っていたんだ」と改めて実感しました。テレビのようにニュースで話題になることは少なくても、キッチンや洗面所でひっそりと現役で動き続けている日立の家電は、意外と身近にあるのかもしれません。日立GLSが持つ約3割という国内シェアの大きさを考えると、この記事を読んでいる方の家にも、日立の冷蔵庫や洗濯機がある可能性は低くなさそうです。

2026年、ノジマへの売却報道という大きな動き

日立 ノジマ買収報道を電卓片手に計算する女性のイラスト

家電量販大手が「作る側」に

2026年に入り、家電量販大手のノジマが、日立グローバルライフソリューションズの国内白物家電事業を1,000億円超で買収する方向だと報じられました。これまで家電を「売る側」だった家電量販店が「作る側」に回るという、業界的にも歴史的な出来事とされています。

冷蔵庫・洗濯機からも日立が退く可能性

この報道が事実であれば、日立は白物家電の分野からも距離を置くことになります。テレビに続いて冷蔵庫・洗濯機も日立の手を離れることになれば、私たちが「日立の家電」として直接触れる機会は、これからますます少なくなっていくのかもしれません。

小売が「作る側」に回るというインパクト

この売却報道でもう一つ興味深いのが、買い手が家電量販店であるノジマだったという点です。これまで家電量販店は、メーカーが作った製品を仕入れて売る「販売の専門家」という立ち位置でした。それが自らメーカー機能を持つ側に回るというのは、家電業界全体の構造が変わりつつあることを示しているようにも見えます。日立からすれば、自社で作り続けるよりも、販売の現場を知る企業に事業ごと託したほうが、その家電にとっても良い選択だと判断したのかもしれません。

私も1,000億円という数字を自分なりに計算してみた

ここで私も実際に手を動かして、この売却報道の規模感を確認してみました。

計算してみた:1,000億円という金額のスケール感

  • 日立GLSの国内シェア約3割という数字を、仮に単純化して市場を10社均等分と考えると、3割は3社分に相当する規模感になります。1社あたりのシェアが平均1割程度だとすれば、その3倍のシェアを持つ事業が1,000億円超という評価になる計算です。
  • 同じくこの記事で紹介した、日立自身が2021年に買収したGlobalLogic(デジタルエンジニアリング企業)の金額は約1兆円。単純に金額だけを比べると、今回のノジマへの売却額(1,000億円超)は、その約10分の1の規模になります。
  • 2009年の最終赤字7,873億円と比べると、1,000億円という金額は、その約8分の1にあたる規模です。

こうして数字を並べてみると、「家電1事業の売却」と「デジタル企業への1兆円買収」、そして「当時の巨額赤字」が、それぞれ全く違うケタの意思決定だったことが実感としてわかりました。

家電をやめた日立は今、何をしている会社なのか

日立 社会インフラとデジタル企業への転換を象徴するイラスト

社会インフラとデジタルの会社へ

テレビ事業からの撤退と時を同じくして、日立は社会インフラとデジタル技術を組み合わせた事業へと軸足を移していきました。2016年には「Lumada(ルマーダ)」というIoTプラットフォームの提供を始め、顧客企業の課題をデータで解決するビジネスへと転換しています。

「御三家」まで手放した大改革

象徴的なのが、かつて日立グループの主力とされた「御三家」(日立化成・日立金属・日立建機)まで、すべて売却・非連結化されたことです。日立工機(電動工具)も2017年にKKRへ約1,570億円で売却されるなど、事業の入れ替えは家電分野だけにとどまりませんでした。

一方で1兆円規模の買収も進めてきた

事業を手放すだけでなく、日立は成長分野への投資も並行して進めています。2020年には電力網事業を手がけるABBのパワーグリッド事業を約7,400億円で、2021年にはデジタルエンジニアリング企業のGlobalLogicを約1兆円で買収しました。家電という「モノ」を手放しながら、電力網やデジタル開発力という「社会インフラを支える力」を積極的に買い集めてきた、というのがこの17年間の大きな流れです。

手放したもの・買ったものを並べてみる

私たちの生活に身近な「手放したもの」と、あまり目に触れない「買ったもの」を並べてみると、日立という会社の方向転換がよりくっきり見えてきます。

分類 具体例 金額の目安
手放したもの テレビ事業(自社生産撤退) 非公開
手放したもの 日立工機(電動工具) 約1,570億円
手放したもの 日立化成(御三家) 約9,640億円
手放したもの 日立GLS白物家電事業(ノジマへ) 1,000億円超(報道ベース)
買ったもの ABBパワーグリッド事業 約7,400億円
買ったもの GlobalLogic(デジタルエンジニアリング) 約1兆円
買ったもの Thales鉄道信号関連事業 約2,150億円

こうして並べてみると、私たちの目に見える「暮らしの道具」から、目に見えにくい「社会を支える仕組み」へと、大きな金額が動いていったことがよくわかります。

もう少し詳しい改革の全体像や、「日立を変えたのは誰だったのか」という視点で見た経緯については、以前まとめた記事でも整理しています。興味のある方はあわせて読んでみてください。

日立製作所を変えたのは誰?7,873億円赤字から復活した17年の経営改革

2026年3月期は過去最高水準の業績

こうした事業の入れ替えを経て、日立の2026年3月期の業績は、売上収益10兆5,867億円、純利益8,023億円という、過去最高水準の数字になっています。2009年3月期の最終赤字7,873億円とは、まったく異なる姿になっていることがわかります。

家電に代わる新しい主力「Lumada」とは何か

データに光を当てるという発想

日立が家電に代わる主力として育ててきたのが、「Lumada(ルマーダ)」というIoTプラットフォームです。「Illuminate(照らす)」と「Data(データ)」を組み合わせた造語で、顧客企業が抱える課題を、データを使って解決していくという考え方を表しています。テレビや冷蔵庫のような「モノ」を売るのではなく、企業の課題そのものを解決する「仕組み」を提供する事業へと、軸足が移っていったわけです。

このLumada事業を大きく後押ししたのが、2021年に約1兆円で買収したGlobalLogicという会社でした。「工場のない会社」に日立がなぜそこまでの大金を払ったのか、こちらの記事で詳しく掘り下げています。

日立が1兆円で買った「工場のない会社」の正体とは何だったのか

鉄道・送配電網という「もう一つのインフラ」

Lumadaと並んで、日立は鉄道や送配電網といった社会インフラそのものにも力を入れています。2024年には仏タレス社の鉄道信号関連事業を約2,150億円で買収を完了させるなど、私たちが普段意識しない場所にあるインフラの分野で存在感を広げています。家庭のテレビの前から姿を消した一方で、私たちが乗る電車や、使っている電気の裏側には、今も日立の技術が関わっている可能性が高いということになります。

データセンター向け設備という新しい需要

近年の日立の業績を押し上げている要因の一つが、AIの普及にともなって急増しているデータセンター向けの電力設備の需要だとされています。私たちが日常的に使う生成AIサービスの裏側では、膨大な電力を安定して供給する仕組みが必要になりますが、そうした「AI時代のインフラ」を支える分野にも日立は入り込んでいます。テレビの前から離れていった日立が、まさかAIを陰で支える会社になっているというのは、私にとってはかなり意外な発見でした。

日立の家電撤退から見えてくること

「なくなった」のではなく「役割が変わった」

日立の家電が私たちの生活から少しずつ姿を消しているように感じるのは、間違いではありません。でもそれは、日立という会社が消えたわけではなく、むしろ「個人向けの家電メーカー」から「社会インフラを支えるデジタル企業」へと、役割そのものを変えていった結果なのだと思います。

身近な家電の変化から、大きな経営判断が見えてくる

私にとって、実家の冷蔵庫やかつてのテレビは、ただの生活道具でした。でもその裏側には、7,873億円という巨額赤字からの立て直しや、事業をゼロから組み替えるという大きな経営判断があったのだと知ると、見え方が変わってきます。身近な家電の変化を追いかけるだけでも、日本を代表する企業の大きな転換点が見えてくるんだな、と感じました。

私たちの生活とインフラは、意外な形でつながっている

正直に言うと、私は最初「日立=家電メーカー」というイメージのまま、この記事を書き始めました。でも調べていくうちに、テレビや冷蔵庫という「見える暮らしの道具」から、電車や電力網という「見えないインフラ」へと、日立という会社の重心が移っていったことがわかってきました。もし今、日立のテレビや冷蔵庫が家にないとしても、私たちは毎日どこかで日立の技術に支えられた電車に乗ったり、電気を使ったりしているのかもしれません。そう考えると、「あの会社は今どこへ行ったんだろう」という素朴な疑問も、意外と身近なところにつながっているんだなと感じます。

よくある質問

日立 家電 撤退の歴史を振り返るイラスト

Q. 日立はなぜテレビを作らなくなったのですか?

薄型テレビなどのデジタル家電事業が2009年の巨額赤字の一因とされ、その後の構造改革の一環として、2012年に自社生産から、2018年に国内販売からも撤退しました。

Q. 日立の冷蔵庫・洗濯機は今もあるのですか?

はい、現役です。日立グローバルライフソリューションズ(日立GLS)という会社が、冷蔵庫・洗濯機・掃除機などの白物家電を担当しており、主要3製品で国内シェア約3割を持つとされています。

Q. 日立はいつから家電をやめたのですか?

一度にやめたわけではなく、段階的です。テレビは2012年に自社生産、2018年に国内販売から撤退。白物家電については2026年にノジマへの事業売却が報じられています。

Q. 日立は今何を作っている会社なのですか?

現在は、Lumadaというデジタルプラットフォームを軸に、鉄道・送配電網・データセンター向け設備など、社会インフラとデジタル技術を組み合わせた事業が主力になっています。

Q. 日立の家電はどこに行ったのですか?

テレビの自社ブランドは国内から姿を消しましたが、白物家電は日立グローバルライフソリューションズが引き続き展開しています。ただし2026年にはその事業もノジマへ売却される方向と報じられています。

Q. なぜ日立は家電から社会インフラへ転換したのですか?

2009年の巨額赤字をきっかけに、利益を出しにくい事業を整理し、デジタル技術と社会インフラを組み合わせた高収益な事業へ経営資源を集中させる判断をしたためとされています。

Q. 日立の白物家電は誰が作っているのですか?

日立グローバルライフソリューションズ(2019年4月発足、日立アプライアンスと日立コンシューマ・マーケティングの合併会社)が製造・販売を担っています。

Q. 日立が液晶テレビ事業をやめた理由は何ですか?

海外メーカーとの価格競争の激化などにより、国内でのテレビ製造・販売の採算が厳しくなったことが理由とされています。

Q. 日立は経営危機だったのですか?

はい。2009年3月期に7,873億円という、当時国内製造業として過去最大級の最終赤字を計上しており、そこから大規模な事業再編が始まりました。

Q. 日立の家電事業をノジマが買収するというのは本当ですか?

2026年に、家電量販大手のノジマが日立グローバルライフソリューションズの国内白物家電事業を1,000億円超で買収する方向だと報じられています。正式な発表内容については、今後の続報を確認する必要があります。

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参考・出典

  • 日本経済新聞「日立、テレビ自社生産を今秋に終了 事業再編を正式発表」
    https://www.nikkei.com/article/DGXNASDD2304Z_T20C12A1EB2000/
  • 日本経済新聞「日立、テレビの国内販売から撤退」
    https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35705780V20C18A9EAF000/
  • Wikipedia「日立グローバルライフソリューションズ」
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E7%AB%8B%E3%82%B0%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%AB%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%95%E3%82%BD%E3%83%AA%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%82%BA
  • note「【注目】ノジマが日立の家電事業を1000億円超で買収へ」
    https://note.com/kabuya66/n/nd9316f12ae39
  • レスポンス「日立09年3月期決算…最終赤字7951億円、10年3月期も赤字見通し」
    https://response.jp/article/2009/05/12/124483.html

※本記事の情報は執筆時点のものです。内容は予告なく変更されることがあります。M&A・買収報道の詳細については今後の正式発表をご確認ください。

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