💡 3行まとめ
- 日立は2021年、工場を持たないデジタルエンジニアリング企業GlobalLogicを約1兆368億円で買収した
- 買収の狙いはLumada事業の拡大で、2021年に日本市場へも参入している
- 2026年にはGlobalLogicとHitachi Digital Servicesが組織統合され、体制強化が続いている
もし自分に1兆円あったら何に使うだろう、なんて夢みたいなことをふと考えることがあります。そんなとき目に留まったのが、日立製作所が2021年に約1兆円で買収した「GlobalLogic」という会社のニュース。工場も、製品も、家電ブランドも持っていない会社に、なぜ日立はそこまでの大金を払ったのか。調べれば調べるほど、昔の日立からは想像できないお金の使い方だったことがわかってきました。今回はその「1兆円買収」の中身を、じっくり掘り下げてみます。
この記事でわかること
- GlobalLogicとはどんな会社なのか
- なぜ日立が約1兆円もの大金を払ったのか
- GlobalLogicは日本にもあるのか
- 買収後、日立はどう変わったのか
- 1兆円という金額のスケール感
- 日立の経営改革全体とのつながり
GlobalLogicとはそもそもどんな会社なのか

「工場のない会社」の正体
GlobalLogicは、2000年に「インダスロジック(Induslogic)」という名前でスタートした、ソフトウェアや製品開発のアウトソーシングを手がける会社です。本社はアメリカ・カリフォルニア州のサンタクララにあります。工場もなければ、目に見える製品も持っていません。この会社が持っているのは、ソフトウェアを設計・開発する力そのものです。
世界に広がる2万5,000人のエンジニア集団
私が驚いたのは、その規模の大きさです。GlobalLogicには、世界各地のデザインスタジオやエンジニアリングセンターで働く2万5,000人以上のデジタル人材がいるとされています。開発拠点は、北米(米国・カナダ)、欧州(ドイツ・クロアチア・スウェーデン・イスラエル・ポーランド・スロバキア・ウクライナ)、アジア(インド)、南米(アルゼンチン)と、世界中に広がっています。
「設計主導のデジタルエンジニアリング」とは何か
GlobalLogicの事業内容は、「設計主導のデジタルエンジニアリング」による企業のデジタル変革支援と説明されています。難しく聞こえますが、要は「お客さんの課題をまず設計(デザイン)の視点で捉え、それをソフトウェアの形にしていく」という仕事です。単にプログラムを書くだけでなく、何を作るべきかを考えるところから関わる会社、というイメージです。
社名が示す「インダスロジック」からの歩み
もともと「インダスロジック(Induslogic)」という名前でスタートしたこの会社が、20年以上かけて世界2万5,000人規模の組織に育っていったという歴史も興味深いところです。ソフトウェア開発のアウトソーシングという地味に見える仕事を積み重ねながら、いつの間にか世界的な大企業が1兆円を払ってでも欲しがる規模・技術力を持つ会社になっていたわけです。派手さはなくても、地道に力をつけてきた会社だったんだな、と私は感じました。
なぜ日立は約1兆円もの大金を払ったのか

買収額は約1兆368億円
日立は2021年3月31日に最終契約を締結し、同年7月13日(米国時間)にGlobalLogicの買収を完了しました。買収総額は96億米ドル、日本円にして約1兆368億円と見込まれていました。
当時の社長が語った買収の狙い
買収当時、日立の東原敏昭執行役社長兼CEOは、この買収について「Lumadaのソリューション・サービス展開を拡大し、お客さまにデジタルトランスフォーメーションによる価値を提供し、Lumada事業をグローバルに成長させるためのもの」だとコメントしています。
「モノ」ではなく「力」を買うという発想
私はこのニュースを最初に見たとき、「1兆円で工場や特許を買ったのかな」と思っていました。でも実際に日立が手に入れたのは、ソフトウェア開発力、アジャイル開発の手法、そして顧客の課題を発掘する「デザイン思考」というスキルそのものでした。昔の日立を知る人からすれば、「モノを作らない会社」にここまでの大金を投じるというのは、なかなか想像しにくい判断だったのではないでしょうか。
巨額赤字からの転換という大きな文脈
この1兆円買収は、単発の決断ではありません。日立は2009年3月期に7,873億円という国内製造業として過去最大級の最終赤字を計上し、そこから川村隆氏をはじめとする歴代の経営者が、事業構造そのものを組み替える改革を17年間続けてきました。GlobalLogicの買収は、その改革の一つの到達点として位置づけられます。かつて赤字を出した会社が、その赤字を上回る金額をデジタル企業への投資に振り向けられるまでになった、という点も見逃せないポイントです。
もう少し広い視点で、日立がどんな会社をどれだけ手放し、何を買い集めてきたのかについては、以前まとめた記事でも整理しています。あわせて読むと、この1兆円買収がどういう文脈で行われたのかがより見えてきます。
→ 日立製作所を変えたのは誰?7,873億円赤字から復活した17年の経営改革
日本市場への参入とLumadaとのつながり

2021年9月、GlobalLogicが日本に上陸
買収からおよそ2か月後の2021年9月28日、日立はGlobalLogicが日本市場に参入すると発表しました。海外の会社というイメージが強かったGlobalLogicですが、日本国内でも本格的に活動を始めたことになります。
「Lumada Innovation Hub Tokyo」という窓口
2021年4月、日立は東京都内に「Lumada Innovation Hub Tokyo」という協創拠点を開設していました。GlobalLogicの日本進出後は、この拠点がGlobalLogicの日本における窓口としての役割を果たすようになったとされています。顧客企業と一緒に課題を考え、デジタルで解決していくという「Lumada」の考え方と、GlobalLogicの持つデザイン思考・開発力が、この拠点でつながっていったイメージです。
2026年、さらなる組織統合へ
時間が経つにつれて、日立のデジタル事業の体制も進化しています。2026年1月には、GlobalLogicとHitachi Digital Servicesという2つの子会社が組織統合されました。世界中に散らばっていたデジタル人材のデリバリー体制を、よりグローバルに一本化していく狙いがあるようです。
日本企業のなかでも珍しい買収のスケール
日本企業が海外のIT・デジタル企業を1兆円規模で買収するというのは、決して多い事例ではありません。しかも買収先が、工場も製品もない「人材とノウハウの塊」のような会社だったという点でも、当時としてはかなり異例の決断だったと言えそうです。私はこのスケール感を知ったとき、「日立って、こんなに思い切った投資ができる会社になっていたんだ」と、率直に驚きました。
1兆円買収は本当に「正解」だったのか

「高値掴みではないか」という当時の声
実はこの買収、発表当時は市場から「高値掴みではないか」という懸念の声も上がっていたと言われています。1兆円を超える金額は、工場や設備を持たないソフトウェア企業への投資としては、かなり大きな規模だったからです。
逆輸入された「アジャイル開発」と「デザイン思考」
一方で、GlobalLogicを買収したことで、日立本体の古いシステム開発部門にも、アジャイル開発やデザイン思考といった新しい手法が「逆輸入」されるようになったと言われています。買収した会社のやり方を、買収した側の会社自身が取り入れていくというのは、なかなか珍しい構図だと感じます。
お金だけでなく「文化」も一緒に買った
私がこの話で一番印象的だったのは、日立が買ったのは技術やソフトウェアだけではなく、GlobalLogicという会社が持っていた「仕事の進め方」そのものでもあった、という点です。重厚長大なメーカーとして長い歴史を持つ日立と、スピード感のあるデジタル企業であるGlobalLogic。文化の違う2つの組織が一つになるのは簡単なことではなかったはずですが、その違いを乗り越えてシナジーに変えてきたからこそ、その後のLumada事業の拡大にもつながっているのだと思います。
私も改めて1兆円という金額を計算してみた
ここで私も実際に数字を並べて、この買収の規模感を確認してみました。
計算してみた:1兆円買収のスケール感
- GlobalLogicの買収額(約1兆368億円)は、日立が2009年3月期に計上した最終赤字7,873億円の約1.3倍にあたります。かつて会社を苦しめた赤字の額よりも大きなお金を、成長投資として一括で払った計算になります。
- 同じく日立が2020年に買収したABBパワーグリッド事業の金額は約7,400億円。GlobalLogicの買収額は、その約1.4倍の規模です。
- GlobalLogicの従業員数は2万5,000人以上とされています。買収額1兆368億円を単純に従業員数で割ると、1人あたり約4,100万円という計算になります(あくまで単純計算であり、実際の企業価値評価とは異なる点には注意が必要です)。
こうして数字を並べてみると、日立がいかに「人の力」そのものに大きな価値を見出して投資したかが、実感としてわかってきます。
日立が近年進めてきた主な買収を並べてみる
GlobalLogicだけでなく、日立は同じ時期に社会インフラ関連の買収も積極的に進めていました。並べてみると、狙いの一貫性が見えてきます。
| 年 | 買収先 | 分野 | 金額の目安 |
|---|---|---|---|
| 2019年 | JR Automation(米) | ロボットSI | 約1,582億円 |
| 2020年 | ABBパワーグリッド事業(スイス) | 電力網 | 約7,400億円 |
| 2021年 | GlobalLogic(米) | デジタルエンジニアリング | 約1兆368億円 |
| 2024年完了 | Thales鉄道信号関連事業(仏) | 鉄道システム | 約2,150億円 |
こうして見ると、電力・鉄道といった「社会インフラを動かす力」と、GlobalLogicのような「デジタルで課題を解決する力」の両方を、同じ時期に買い集めていたことがわかります。単発の思いつきではなく、明確な方向性を持った投資だったことが伝わってきます。
なお、家電のような身近な製品を手放してきた話については、こちらの記事でも詳しく紹介しています。GlobalLogicへの投資と合わせて読むと、日立が「モノ」から「力」へ軸足を移してきた流れがよりはっきり見えてきます。
→ 日立はなぜ家電をやめた?テレビ・冷蔵庫撤退の本当の理由とは
GlobalLogic買収から見える日立の今とこれから

「顧客の課題を解決する会社」への進化
GlobalLogicの買収は、日立が単なる「モノを作る会社」から、「顧客の経営課題そのものを解決する会社」へと進化していく、大きな一歩だったと言えそうです。課題を見つける力(デザイン思考)、形にする力(ソフトウェア開発)、そして実際に動かし続ける力(社会インフラの運用・保守)。この3つを併せ持つ企業は、世界的にもそう多くないとされています。
まだ答えの出ていない部分もある
とはいえ、この1兆円という巨額投資が、長期的にどれだけの利益(投資回収)につながっていくのかは、まだ検証の途上にある話です。2026年の組織統合を経て、今後のLumada事業の成長がどこまで加速していくのか、引き続き注目したいところです。
私にとっての一番の発見
正直に言うと、私はこの記事を書くまで「日立=重厚長大な製造業」というイメージのままでした。でも1兆円で「工場のない会社」を買うという判断を知ったとき、この会社がどれだけ大きく生まれ変わろうとしているのかを、初めて実感できた気がします。1兆円という金額の裏側には、単なる企業買収以上の、大きな意志があったのだと思います。
これからも変わり続けるかもしれない
2009年の7,873億円赤字から始まった日立の改革は、GlobalLogicの買収を経てもなお、2026年の組織統合のように形を変え続けています。もしかしたら数年後には、また新しい買収や事業再編のニュースが飛び込んでくるかもしれません。「あの日立が今度は何をするんだろう」と、これからもニュースを追いかけてみたいと思います。
よくある質問

Q. 日立がGlobalLogicに1兆円を払った理由は何ですか?
GlobalLogicが持つソフトウェア開発力・アジャイル開発・デザイン思考といったデジタルエンジニアリングの力を取り込み、Lumada事業をグローバルに成長させるためとされています。
Q. GlobalLogicとはどんな会社なのですか?
2000年設立、米国カリフォルニア州サンタクララ本社の、デジタルエンジニアリングを手がける企業です。世界各地に2万5,000人以上のデジタル人材を抱えています。
Q. GlobalLogicは日本にもあるのですか?
はい。2021年9月28日に日本市場への参入が発表され、東京都内の「Lumada Innovation Hub Tokyo」が日本での窓口としての役割を果たしています。
Q. 日立はなぜ工場のない会社を買ったのですか?
日立が求めたのは工場や製品ではなく、顧客の課題を発掘し、ソフトウェアとして形にする力そのものでした。これを自社に取り込むための買収だったとされています。
Q. GlobalLogic買収は成功だったのですか?
長期的な投資回収効果については、まだ検証の途上にあります。2026年にはGlobalLogicとHitachi Digital Servicesの組織統合も行われており、今後の動向が注目されています。
Q. GlobalLogicとLumadaはどういう関係にあるのですか?
Lumadaは日立のデータ活用プラットフォーム、GlobalLogicはそれを支えるデジタルエンジニアリングの実行部隊という位置づけです。GlobalLogicの開発力が、Lumadaのソリューション展開を支えています。
Q. 日立の1兆円買収は高すぎたのですか?
発表当時、市場からは「高値掴みではないか」という懸念の声もあったとされています。一方で、その後の組織統合やLumada事業の拡大を見ると、長期的な視点での投資という位置づけだったと考えられます。
Q. GlobalLogicの日本法人はどこにあるのですか?
明確な所在地は公開情報の範囲では確認できませんが、東京都内の「Lumada Innovation Hub Tokyo」が日本における窓口としての役割を担っているとされています。
Q. 買収後、日立はどう変わったのですか?
GlobalLogicが持つアジャイル開発やデザイン思考の手法が、日立本体の古いシステム開発部門にも取り入れられるようになったと言われています。
Q. 日立はなぜデジタル企業を買収したのですか?
家電やテレビなど「モノ」を売るビジネスから、顧客の経営課題を解決する「デジタルソリューション」を提供するビジネスへと軸足を移すためだったとされています。
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1兆円というスケールの大きい話を追いかけていたら、なんだか自分の毎日の持ち物にもちゃんと投資したくなってきた私。超軽量・撥水加工・スキミング防止ポケット付きのビサイユのトートバッグは、通勤にもお出かけにも頼れる一品だと思う。
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参考・出典
- GlobalLogic Japan「会社情報」
https://www.globallogic.com/jp/about/ - 日立製作所「GlobalLogic Inc.の買収完了に関するお知らせ」(2021年7月14日)
https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2021/07/f_0714.pdf - Wikipedia「グローバルロジック」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%AB%E3%83%AD%E3%82%B8%E3%83%83%E3%82%AF - ITmedia ビジネス「日立、米IT『1兆円買収』でどう変身? 文化の違いを『シナジー』に変えた手腕」
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2405/30/news017.html - IT Leaders「日立、米GlobalLogicを約1兆円で買収、IoTシステム構築に強みを持つ大手ベンダーを手中に」
https://it.impress.co.jp/articles/-/21292
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