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セルファイバーとは?東大発「細胞を守る糸」が再生医療を変える理由

セルファイバーとは?極細のゼリー状チューブで細胞を守る技術のイメージ図

この記事の3行まとめ

  • セルファイバーは、東京大学発の「細胞ファイバ技術」と、それを事業にする株式会社セルファイバの両方を指す言葉です。
  • 海藻由来のアルギン酸ゲルで細胞を包み、かき混ぜるタンクでも守りながら培養。2026年10月8日にはZeitoが日米で発売されました。
  • 培養肉の研究は大学と日清食品の別プロジェクト。GMP対応装置の発売と医薬品の承認は別で、実用化の課題も残っています。

人間の細胞をタンクいっぱいに増やす。簡単そうに聞こえますが、実はこれが医療の世界で長年の難題になっています。細胞はとてもデリケートで、培養液をかき混ぜる水流の力だけでダメージを受けることがあるからです。そこで日本の研究者が考えたのは、細胞を髪の毛ほどの極細のゼリー状チューブで包んで守る方法でした。しかもこの技術のルーツは、薬をつくる工場ではなく、人工の筋肉や生体組織をつくる研究にあります。2026年10月8日には、この技術を使った細胞製造装置「Zeito(ゼイト)」が日本と米国で正式に発売されました。

目次

セルファイバー(CellFiber)とは?東京大学から生まれた細胞培養技術

結論から言うと、セルファイバー(CellFiber)とは、東京大学の研究から生まれた「細胞ファイバ技術」と、それを事業にしている企業「株式会社セルファイバ」の両方を指す言葉です。技術の中身は、アルギン酸というゲルでできた極細のチューブの中に細胞を包み込み、守りながら育てるというもの。同社の公式発表では、この技術で培養した細胞は従来法と比べて、細胞機能の維持・向上、長期間の生存性、品質の均一性などが期待されている、と説明されています。まずは技術の名前と会社の名前を分けて見ていきましょう。

株式会社セルファイバは何をしている会社?

株式会社セルファイバは、東京大学の研究成果を事業化するために2015年4月に設立されたバイオテクノロジー企業です。本社は東京都江東区にあり、2026年10月時点の代表取締役社長は古石和親(ふるいし かずちか)氏と、公式発表に記載されています。掲げているミッションは「細胞を、患者さんとつなぐ。」。再生医療や細胞・遺伝子治療で使う細胞を、高品質かつ効率よくつくるための技術と装置を提供しています。

ここで押さえておきたいのは、同社は細胞医薬品そのものを売る会社ではない、という点です。やっているのは、細胞をつくる側の道具と技術の提供です。公式発表では、製品の提供に加えて、導入支援、プロセス開発、共同研究開発を進めるとされています。なお、代表者の名前は資料によって記載が異なることがあるため、私は2026年10月の公式発表の記載を採用しています。

なぜ細胞の大量生産が難しかったのか?

再生医療で使う細胞は、化学薬品のように合成してつくることができません。生きた細胞を、生きたまま増やすしかありません。昔からよく使われてきたのは、シャーレやフラスコの底に細胞を貼りつけて増やす「平面培養」です。ただ、この方法は増やせる量が容器の面積に比例するため、たくさん必要になるほど容器の数も作業の手間も増えていきます。

そこで、大きなタンクの中で培養液をかき混ぜながら増やす方法が使われるようになりました。タンクなら量を増やしやすい反面、かき混ぜる水流が細胞に負担をかける場合があります。この水流による物理的な力を「せん断応力」と呼びます。もちろん、すべての細胞が撹拌で傷つくわけではなく、現場ではさまざまな工夫がされています。それでも、デリケートな細胞ほど、かき混ぜながら大量に増やすのは難しい課題でした。セルファイバの公式発表でも、細胞医薬品は製造工程の複雑さや高額な製造コストにより、世界的に患者さんの治療へのアクセスが限定されている、と説明されています。

細胞を守る「極細ゼリーの糸」その驚きの仕組み

細胞ファイバ技術の仕組み、アルギン酸ゲルが細胞を包む断面イメージ図

海藻由来のアルギン酸が細胞を包む

細胞ファイバ技術のポイントは、外側を包む素材です。使われるのは、昆布などの海藻に含まれる多糖類「アルギン酸」。アルギン酸ナトリウムの水溶液は、カルシウムイオンに触れると、あっという間にぷるんとしたゲルに変わります。人工イクラをつくる原理と同じと言えば、想像しやすいかもしれません。

このように、水をたっぷり含んで固まった素材を「ハイドロゲル」と呼びます。セルファイバの技術では、このハイドロゲルでチューブ状の構造をつくり、その内側に細胞を入れます。資料によると、中心から細胞の液、その外側からアルギン酸の液を同時に押し出し、カルシウムを含む液の中へ送り出す「コア・シェル構造」で、長いファイバーを途切れなく作る仕組みとされています。

ゲルの壁には小さな網目があり、酸素や栄養、老廃物のような小さな分子は出入りできます。一方で、外の水流の力は壁がやわらげてくれます。まさに「細胞専用の保護チューブ」です。

なぜタンクの中でかき混ぜても細胞が守られる?

比較されることが多いのが、「マイクロキャリア培養」です。直径0.2mm前後の小さな粒(ビーズ)の表面に細胞を貼りつけ、タンクの中で浮かせて増やす方法で、大量培養の実績があります。ただ、細胞が粒の外側に出ているため、水流の影響を受けやすい面があります。さらに、回収のときには酵素で細胞をはがす作業が必要です。

一方、細胞ファイバでは、細胞は壁の内側にいます。かき混ぜて酸素や栄養を行き渡らせても、直接の水流はまず壁に当たります。細胞の生存率や品質を保ちやすいことが期待されるのは、このためです。ただし、マイクロキャリア培養が劣っているという話ではありません。実績やコストの面では今も有力な選択肢で、細胞の種類や目的によって向き不向きがあります。細胞ファイバにも、ゲルで包む工程と、あとで溶かす工程が増えるという、追加の手間があります。

培養後はチューブだけを溶かして細胞を回収

培養が終わったら、細胞を取り出します。ここで使われるのが、アルギン酸を分解する酵素(アルギン酸リアーゼ)や、ゲルを固めているカルシウムを取り除く薬剤です。壁のゲルだけを穏やかに溶かして、中の細胞を取り出します。流れは次の4工程です。

  1. 細胞をゲルのチューブの中に封入する
  2. タンクで撹拌しながら培養する
  3. チューブのゲルを溶かす
  4. 遠心分離やフィルターで細胞を洗って回収する

実は人工筋肉の研究から生まれた技術だった

細胞ファイバ技術の原点、人工筋肉や組織づくり研究のイメージ図

2013年の論文に見る細胞ファイバ技術の原点

この技術の原点とされるのが、2013年に学術誌『Nature Materials』に掲載された論文「Metre-long cell-laden microfibres exhibit tissue morphologies and functions」です(論文のページ)。日本語にすると「数メートルの長さの、細胞を含む細い繊維が、組織の形と機能を示す」。尾上弘晃氏らによる研究で、東京大学の竹内昌治教授の研究室を中心とした成果として知られています。

この研究が目指したのは、細胞を大量に増やすことではなく、体の組織を下から組み立てることでした。細胞を含む長いファイバーをつくり、束ねたり編んだりして、筋肉や血管、神経に近い立体的な構造をつくろうという発想です。資料によると、細胞を入れる中心部に細胞の足場になるタンパク質を混ぜることで、細胞が高い生存率で育つことも示されています。さらに、神経と筋肉の細胞を別々のファイバーで育てて束ね、動力としても使えるような筋肉組織を目指す研究にも発展したと紹介されています。

人工組織を作る発想が細胞の大量培養へ

組織をつくるための技術が、なぜ細胞を増やす装置になったのか。ここについて、私が確認できた公開資料の範囲では、「最初から量産を狙っていた」とも「途中で方向転換した」とも断定できる記述は見つかりませんでした。事実として言えるのは、ファイバーの中で細胞を守りながら育てられるという性質が、そのまま大量培養にも役立つ、という点です。

また、細胞ファイバの太さは約200マイクロメートル(0.2mm)程度に設計されていると、資料で紹介されています。体の中では、血管から離れた細胞は酸素が届きにくく、組織が厚くなると中心の細胞が弱りやすくなります。ファイバーを細く保つことは、中心まで酸素や栄養を届ける考え方に合っています。大学の研究成果を製品にするまでには、市場や顧客を絞り込む判断も必要になります。同社が医療用の細胞製造に軸足を置いているのも、その結果ではないかと私は考えています(これは公式の説明ではなく、私の推測です)。

【2026年最新】細胞量産装置「Zeito」が日米で発売

Zeito Plusと細胞ファイバ製造装置が日米で発売されたイメージ図

Zeito PlusとZeito Liteの違い

2026年10月8日、セルファイバは細胞ファイバ製造装置「Zeito(ゼイト)シリーズ」2製品の正式販売を、日本と米国で同時に始めました(公式発表)。経緯をたどると、2025年12月にGMP対応の細胞ファイバ製造装置を発表し、2026年5月に製品ブランド名を「Zeito」に決定、そして10月に正式販売という流れです。2製品の違いは、公式発表では次のように整理されています。

Zeito Plus 細胞カプセル化システム Zeito Lite 細胞カプセル化システム
位置づけ GMP対応の細胞ファイバ製造装置 研究初期段階向けの卓上型装置
主な目的 再生医療等製品向け細胞の大量生産 基礎研究や初期のプロセス検討
使う人のイメージ 細胞医薬品を製造する企業・施設 企業や研究機関の研究チーム
公式の説明 製造プロセスの安定化・効率化と製造時間の短縮を図る CellFiber技術を使った培養の検討に活用できる

GMPとは、医薬品を安全につくるための製造管理・品質管理の基準のことです。Plusはこの基準に対応した装置として開発されました。ここで大事な注意があります。GMP対応の装置が発売されたことと、その装置でつくった医薬品が規制当局に承認されたことは、別の話です。承認を受けるには、その細胞を使った治療法そのものが臨床試験などを経て審査される必要があります。Zeitoは、そこへ向かうための製造の道具が使える状態になった段階、と受け止めるのが正確です。

なぜ米国フィラデルフィアに進出したのか?

2026年10月1日、セルファイバは米国ペンシルベニア州フィラデルフィアに、初の海外法人「CellFiber, Inc.」のオフィスとラボを開設しました。場所は、世界最大級のシェアラボとして知られるCIC Philadelphiaの中です(公式発表)。

公式発表によれば、フィラデルフィアは世界初のCAR-T細胞療法の開発で中心的な役割を果たした地で、細胞・遺伝子治療の集積地として「セリコン・バレー(Cellicon Valley)」とも呼ばれているそうです。拠点では、米国の製薬企業やバイオ企業、CDMO(医薬品の製造を受託する会社)、研究機関との連携を強め、技術の導入支援やプロセス開発、共同研究開発を進めるとしています。

ここからは、公式発表に書かれていない私の考察です。細胞医薬品をつくる会社は、装置を買う前に「自分たちの細胞で本当にうまく育つのか」を試したいはずです。顧客の近くにラボを置けば、その試験を一緒にすぐ始められます。営業所ではなくラボ付きの拠点を選んだ点に、装置を売るだけでなく使い方まで寄り添う姿勢が見える気がします。ただし、これはあくまで推測で、同社がそう説明しているわけではありません。

培養肉にも応用?日清食品と東京大学の研究との関係

培養肉の研究、筋繊維が並ぶ厚みのある培養ステーキのイメージ図

セルファイバ社が培養ステーキ肉を販売しているわけではない

株式会社セルファイバが公式発表で前面に出しているのは、再生医療向けの細胞製造です。一方、日清食品と東京大学(竹内昌治教授の研究室)が進めている培養肉の研究は、同じ研究の流れをくむ技術を使った、別のプロジェクトです。「同じ研究系譜にある技術」と「同一の事業」は別物、というのが大事なポイントです。

なぜ培養肉はミンチ状ではなくステーキ状を目指せるのか?

培養肉と聞くと、ハンバーグのようなひき肉状を思い浮かべる人が多いと思います。細胞を培養液の中で増やして集めるだけでは、ばらばらの細胞の塊になりやすいからです。本物のステーキの食感は、筋肉の細胞が同じ向きに並んだ「筋繊維」が束になってできています。

細胞を細長いファイバー状のゲルの中で育てると、細胞が細長い向きに並びやすくなります。その繊維を束ねることで、肉に近い組織をつくれる、というのが竹内研究室の研究で示されてきた考え方です。資料によると、日清食品と東京大学は2022年に、食べられる素材だけを使った培養肉の作製に成功したと発表したとされています。

2025年には厚みのある培養肉の研究も進展

2025年4月16日、東京大学は「内部まで生きたまま!分厚い培養肉の構築に成功」と題する研究成果を公表しました(東京大学の発表)。竹内昌治教授らの研究グループが、中空糸という細い管を組織に通し、そこから栄養を流す方法で、厚みのある培養肉の内部まで栄養を行き渡らせ、組織内部の壊死を抑えられることを確認した、という内容です。論文は『Trends in Biotechnology』に掲載されています。

培養肉はいつ食べられる?

結論を先に言うと、私が調べた範囲では、日本で一般向けに培養肉が販売されているという確認はできませんでした。

研究面では、日清食品と東京大学が、厚さ2cm、縦横7cmほど(約100g)の培養ステーキ肉をつくることを目標に掲げたとされています。ここで気をつけたいのは、「目標を掲げた」ことと「達成した」ことは別だという点です。目標の達成を示す最新の公式発表を、私は確認できていません。ですので、100gのステーキが完成したと断定することは避けます。

制度面では、資料によると、2026年に消費者庁の部会が、細胞性食品(培養肉など)の安全性確保に関するガイドライン案を公表したとされます。ルールづくりが進んでいる段階で、販売開始の時期が決まったわけではない、と受け止めています。

厚み2cmとコストを計算してみた

培養ステーキの数字を、自分で計算してみました。まず厚みです。ファイバーの太さを約200マイクロメートルとすると、2cmは20,000マイクロメートルなので、20,000÷200=100。目標のステーキの厚みは、ファイバー1本分の太さのちょうど100倍になります。

次にコストです。資料で紹介されていた試算では、培養肉の製造コストは2026年時点で1kgあたり約40ユーロ(約6,500円)とされています。6,500円÷10=650円なので、100gあたりの製造コストは約650円。目標とされる10ユーロ/kgまで下がれば、6,500÷4=約1,625円/kg、100gでは約160円です。40÷10=4倍の差があり、製造コストを4分の1にする必要があります。この数字は一つの試算で、販売価格ではありません。

セルファイバーは再生医療の費用を安くできる?

大量培養が治療の普及につながる理由

細胞ファイバ技術を使って、タンクで大量に培養し、工程を閉じた装置の中で自動化できれば、1回あたりの手間や設備の負担を減らせる可能性があります。公式発表でも、製造工程の複雑さと高額な製造コストが、患者さんのアクセスを限定している課題として挙げられています。Zeitoは、その課題に向けた道具として位置づけられています。細胞を増やす量と品質の安定は、治療を届ける人数に直結するため、製造の部分が改善する意味は小さくありません。

細胞の製造費と患者が支払う治療費は別

ただし、ここは冷静に見たいところです。製造コストが下がることと、患者さんが支払う治療費が下がることは、同じではありません。治療費には、研究開発費、臨床試験の費用、病院での投与や管理の費用、公的保険の仕組みなど、さまざまな要素が含まれます。CAR-T細胞療法などの価格が急に下がると言い切れる材料は、私が調べた範囲ではありませんでした。

私は、「安くなる」と期待しすぎず、「製造の選択肢が増える」くらいに受け止めておくのが、ちょうどよい温度感だと感じています。医療の費用や制度については、必ず医療機関や公的な情報で確認してください。

セルファイバは上場している?企業としての将来性

上場しているのか、投資家は誰か

私が公式サイトや公開資料を確認した範囲では、株式会社セルファイバが上場したという発表は見当たらず、現時点では未上場とみられます。そのため、証券取引所で株を買うことはできません。IPO(新規上場)の時期や株価の見通しについては、根拠になる情報がないので、ここでは予測しません。

資金面では、2023年11月にジャフコグループなど5社から8.3億円の資金調達を実施した、というプレスリリースが公開されています。出資者には、UMI(ユニバーサル マテリアルズ インキュベーター)やリアルテックファンドなどが名を連ねると紹介されています。累計の調達額は資料によって数字が異なるため、ここでは書かないことにします。

装置と消耗品で事業は広がる?

事業の形としては、装置を販売し、そのうえで使うキットや試薬などを継続して提供し、さらにプロセス開発や共同研究を受託するという組み合わせが考えられます。公式発表では、製品の提供に加えて、導入支援、プロセス開発、共同研究開発を進めるとされています。消耗品の具体的な価格や収益構造は、私が調べた範囲では公開されていませんでした。

実用化にはどんな課題が残る?

細胞ファイバ技術の実用化に残る課題、シングルユースと規模拡大のイメージ図

規模・コスト・品質の3つの壁

1つ目は、より大規模な培養への拡張です。資料には5リットル規模での目標収量の記載がありますが、これは設計上の目標であり、試験結果や商用の実績とは別物で、公式発表では確認できていません。もっと大きなタンクで、長いファイバーが絡まらず均一に流れるかが、次の課題になります。

2つ目は、消耗品を含めた製造コストです。医療用の高品質なアルギン酸や、分解のための酵素を安定して調達できるか。ここは量産効果が出てくるかが鍵になります。

3つ目は、細胞の品質と回収率です。ゲルを溶かして細胞を取り出したあと、ゲルのかけらや酵素が残らないことを、きちんと示す必要があります。細胞が元気なまま、どれくらい回収できるのかという数字も、導入する側が知りたいポイントです。

規制対応と既存製法からの切り替え

4つ目は、製造プロセスの規制対応です。国際的な基準に沿って設計された装置であることと、当局に承認されることは別です。特許を取っていることや、規格に適合していることも、承認とは意味が違います。

5つ目は、既存の製造法からの切り替えです。医薬品の製造は、一度決めた方法を変えると、変更後も同じ品質の細胞ができることを改めて示す必要があります。そのため、製薬企業は製造法を変えることに慎重になりがちです。開発の早い段階から採用してもらえるかが、普及の分かれ道だと私は見ています。

シングルユースのメリットと廃棄物

医薬品の製造では、細胞が触れる部分を使い捨てにする「シングルユース」が広く使われています。報道などでは、Zeitoも細胞が通る部分を使い捨てのキットにする設計と紹介されていますが、公式発表では確認できていないため、ここでは一般的な話として整理します。

メリットは、装置を洗浄して「きれいになった」と証明する手間を省けること、前の製造分が混ざるリスクを減らせること、作業が早くなることです。一方で、使い捨てのプラスチックが大量に出るという廃棄物の問題があります。環境にやさしいかどうかは、「使い捨ての量」と「電力」を含めて見る必要があります。

まとめ|細胞を守る小さな糸が医療の未来を変える可能性

セルファイバー(CellFiber)は、海藻由来のアルギン酸ゲルで細胞を包み、かき混ぜるタンクの中でも細胞を守りながら育てる技術です。ルーツは人工筋肉や組織をつくる研究にあり、2026年10月には、研究初期向けのZeito Liteと、GMP対応のZeito Plusが日米で発売されました。一方で、培養肉の研究は大学と日清食品による別のプロジェクトで、100gのステーキ肉については、目標と達成を分けて見る必要があります。

製造コストの低下がそのまま治療費の低下につながるとは限らず、規模の拡大、消耗品のコスト、品質保証、規制対応、既存製法からの切り替えなど、越えるべき壁も残っています。それでも、細胞を「守りながら増やす」という発想が、医療の現場に届く日は少しずつ近づいているのだと思います。私は、過度に期待せず、でも目を離さずに、今後の公式発表を追っていきたいです。

よくある質問|セルファイバーについて

セルファイバーとは?極細のゼリー状チューブで細胞を守る技術のイメージ図

Q. セルファイバーとは何ですか?

東京大学の研究から生まれた「細胞ファイバ技術」と、それを事業化した企業「株式会社セルファイバ」を指します。アルギン酸ゲルの極細チューブで細胞を包み、守りながら大量に培養することを目指す技術です。

Q. 株式会社セルファイバは上場していますか?

私が公式サイトや公開資料を確認した範囲では、上場の発表は見当たらず、未上場とみられます。証券取引所で株を買うことはできません。

Q. CellFiberと培養肉はどんな関係がありますか?

同じ研究の流れをくむ技術を使い、東京大学の竹内昌治教授の研究室と日清食品が培養肉を研究しています。ただし、株式会社セルファイバが公式に前面に出しているのは再生医療向けの細胞製造で、別のプロジェクトです。

Q. Zeitoとはどんな装置ですか?

細胞ファイバをつくる装置のシリーズです。2026年10月8日に日米で正式販売が始まりました。GMP対応で大量生産向けのZeito Plusと、研究初期の検討に使う卓上型のZeito Liteの2種類があります。

Q. 再生医療の治療費は安くなりますか?

製造コストの低下は期待されますが、治療費には臨床試験や病院での費用なども含まれます。製造が安くなれば、すぐに治療費が下がるとは言い切れません。費用や制度は医療機関や公的情報で確認してください。

Q. 培養肉はいつ食べられますか?

私が調べた範囲では、日本で一般向けの販売は確認できていません。ガイドライン案の公表など制度づくりは進んでいますが、販売開始の時期は決まっていません。最新の状況は公的な発表で確認してください。

Q. 細胞ファイバとマイクロキャリア培養の違いは何ですか?

マイクロキャリアは小さな粒の表面に細胞を貼りつけて増やし、細胞ファイバは細胞をゲルの内側に包んで増やします。後者は水流の影響をやわらげやすい一方、包む工程と溶かす工程が追加されます。

Q. 培養後、細胞はどうやって取り出しますか?

アルギン酸を分解する酵素や、ゲルを固めているカルシウムを取り除く薬剤で、チューブのゲルだけを溶かします。そのあと遠心分離やフィルターで細胞を洗って回収します。残留物がないことの確認も大切です。

Q. なぜ米国のフィラデルフィアに拠点を作ったのですか?

公式発表では、同地が世界初のCAR-T細胞療法の開発で中心的な役割を果たした細胞・遺伝子治療の集積地だと説明されています。製薬企業やCDMOなどと連携し、導入支援や共同研究を進める拠点です。

Q. 細胞ファイバの太さはどのくらいですか?

資料では、直径約200マイクロメートル(0.2mm)程度と紹介されています。髪の毛ほどの細さで、中心まで酸素や栄養が届きやすい太さという考え方です。製品ごとの正確な仕様は、公式サイトで確認してください。

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参考・出典

  • 株式会社セルファイバ「公式サイト」
    https://cellfiber.jp/
  • 株式会社セルファイバ「Zeito™シリーズ」を日米で正式販売開始(2026年10月8日)
    https://cellfiber.jp/20261008_news_zeito_official_lauch/
  • 株式会社セルファイバ フィラデルフィアに米国法人CellFiber, Inc.を開設(2026年10月1日)
    https://cellfiber.jp/20261001_us_office_launch/
  • Nature Materials「Metre-long cell-laden microfibres exhibit tissue morphologies and functions」(2013)
    https://doi.org/10.1038/nmat3606
  • 東京大学「内部まで生きたまま!分厚い培養肉の構築に成功」(2025年4月16日)
    https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/press/z0114_00062.html
  • 日清食品グループ FOOD TECH
    https://www.nissin.com/jp/company/sustainability/action/food-tech/
  • 東京大学 生産技術研究所 ニュース
    https://www.iis.u-tokyo.ac.jp/ja/news/4782/
  • PR TIMES「セルファイバがジャフコはじめ5社から8.3億円の資金調達を実施」
  • Foovo「消費者庁、細胞性食品の安全性確保ガイドライン案を初公表」

※本記事の情報は2026年10月28日時点のものです。内容は予告なく変更されることがあります。医療や治療に関する判断は、医療機関や専門家にご相談ください。

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