この記事の3行まとめ
- 水害に強い車メーカーを示す公的なランキングは確認できません。差が出るのは最低地上高・吸気口・フロアの高さなどの構造で、同じメーカーでも車種でまるで違います。
- 「走り抜けられた車=無傷」とは限りません。冠水後に配線が腐食し、数週間〜数か月後に不具合が出る「遅延故障」があります。浸水したらエンジンやパワースイッチを入れない、EV・PHEVは充電しない、自走させないのが鉄則です。
- いちばん効くのは車選びより駐車場所。ハザードマップを確認し、大雨になる前の早い段階で高台や立体駐車場へ移動を。冠水が始まってからは動かさないでください。
この記事は、国土交通省、JAF、自動車メーカー、損害保険会社などの公開情報をもとに、水害時の車の特徴と対処方法を整理したものです。実際の安全性や故障状況は、車種、年式、浸水深、水質、流速、浸水時間によって異なります。冠水した道路には、車種を問わず進入しないでください。
大雨のニュース映像で、止まってしまった車の横を車高の高いSUVがザブザブ走り抜けていく場面を見ると、「やっぱり大きい車は水に強いのかな」って思っちゃいますよね。私も最初はそう思っていました。
でも調べていくと、「トヨタなら大丈夫?」「うちの軽は危ない?」「EVって水没したら感電するの?」という疑問に、メーカー名だけでは答えられないことが分かってきました。これ、メーカー名だけでは決められないんです。
2026年は8月に千葉県で「令和8年8月千葉豪雨」、9月には名古屋市などで記録的な大雨が続き、道路に取り残された車がたくさん報じられました。この記事では、その2026年の出来事も手がかりにしながら、「水に強い車・弱い車の違いって結局どこ?」を、車にくわしくない目線で整理していきます。
水害に強い車メーカーはどこ?先に結論
最初に、いちばん知りたいところからお話しします。
> この記事の結論:水害に強いメーカーを示す公的なランキングは確認できません。差が出るのは「最低地上高」「エンジンの吸気口の高さ」「車内フロアの高さ」などの構造で、同じメーカーでも車種でまるで違います。そして、どんな車でも冠水した道路には入らないのが大原則です。
メーカー別の公的な耐水ランキングはない
「このメーカーは水に強い」「あのメーカーは弱い」と順位づけした、国や公的機関の統計は見当たりません。メーカーごとの浸水故障率のようなデータも公表されていません。
だから、「◯◯社の車だから冠水しても平気」という考え方は、根拠がないんです。私も記事を書く前は「なんとなく大手の四駆メーカーが強そう」と思っていましたが、そこはいったん忘れたほうがよさそうでした。
判断材料になるのは、ブランドではなく、その車がどんな形と構造をしているか。次で具体的に見ていきます。
違いが出るのは最低地上高・吸気口・フロアの位置
車の水への強さ・弱さに関係するのは、だいたいこのあたりです。
- 最低地上高(地面から車体の一番低いところまでの高さ)
- エンジンの吸気口(空気を吸い込む穴)の位置の高さ
- 車内フロア(床)の高さ
- フロントバンパーまわりの開口部の大きさ
- ECU(車を制御する小さなコンピューター)や電装品の置き場所
- 車両重量と、水に浮こうとする力(浮力)とのバランス
- 床下を覆うアンダーカバーやドアまわりの防水の作り
同じメーカーでも、背の低いセダン、床の低いミニバン、車高のあるSUV、悪路向けのクロスカントリー車では、これらがぜんぶ違います。だから「メーカーで選ぶ」より「タイプと構造で見る」ほうが実態に合っています。
どの車でも冠水道路に入らないのが大原則
先に大事なことを言っておきます。ここまで「構造で差が出る」と書きましたが、それは「構造がよければ冠水路を走っていい」という意味ではありません。
JAFやメーカーは、冠水した道路にはそもそも進入しないよう案内しています。水面の下は見えません。マンホールのふたが外れていたり、側溝に落ちたり、路面がえぐれていたりします。車が進めば前に波ができて、思ったより高いところまで水が来ます。「強い車を探す」より「入らない」が、いちばん確実な対策です。
2026年の豪雨で車の浸水被害が相次いだ理由

2026年は、短い時間に猛烈な雨が降る豪雨が各地で起きました。ここでは公表・報道で確認できた範囲だけを取り上げます。
短時間の大雨で道路やアンダーパスが冠水する
2026年8月の千葉県の豪雨は、気象庁が「令和8年8月千葉豪雨」と名付けました。国土交通省は8月19日17時時点で、幹線道路上の放置車両を国道28台・県道47台・県内市町村227台と公表しています。千葉県知事はその後、放置車両は千葉市だけで2千台超、民間駐車場や自宅ガレージも含めた被災車両は1万台超という認識を報道機関に示しました。9月には名古屋市などで記録的な大雨となり、9月8日には庄内川に「レベル5氾濫特別警報」が出て、名古屋市は9日午前4時時点の被災車両を約200台と発表しています。数字はいずれも発表・報道時点のもので、その後変わっている可能性があります。
こういう雨だと、道路の低いところやアンダーパス(線路や道路の下をくぐる掘り下げ道路)にあっという間に水がたまります。「さっきまで普通に走れた道」が数十分で池になるイメージです。
水深が浅く見えても車が進むと波が高くなる
止まって見ている分には「タイヤの下のほうだけかな」と思える水でも、車が走って進むと話が変わります。車の前面が水を押して、前方に波(ウェーブ)ができます。その波の高さは、止まっているときの水面よりずっと高くなります。
さらに、対向車、とくに大型トラックやバスとすれ違うと、相手が起こした波をこちらがかぶります。この波がエンジンの吸気口に届くと、一気に水を吸い込んでしまいます。「水深◯cmまでなら大丈夫」という数字を、動いている車にそのまま当てはめられない理由がここにあります。
「走り抜けられた車=無傷」とは限らない
冠水した区間を自分の力で抜けられた車もあります。ただ、その場で止まらなかったからといって、被害ゼロとは言い切れないのが水害の怖いところです。
配線の中やコネクター(接続部品)に入り込んだわずかな水分は、すぐには悪さをしません。数週間から数か月かけて金属が酸化し、あるとき警告灯がついたり、走行中に急にエンジンが止まったりすることがあります。整備業界ではこれを「遅延故障」と呼んでいます。だから「走れたからもう直った」と考えるのは危険です。
冠水に比較的余裕がある車・被害が出やすい車の違い

「じゃあ、どういう車だと余裕があって、どういう車だと水が入りやすいの?」を、タイプ別に見ていきます。くり返しになりますが、これは「走っていい」という話ではなく「構造上の余裕の差」の話です。
本格クロスカントリー車に物理的な余裕がある理由
悪路を走ることを前提に作られた本格的なクロスカントリー車(悪路向けの頑丈な四駆)は、最低地上高が高めに取られています。一般的な数値でいうと200mmを超えるものが多く、乗用車の150mm前後と比べると差があります。
地上高が高いと、同じ水深でも車体の骨格や床までの距離に余裕があります。さらに、吸気口がフェンダー(タイヤの上のふくらみ)の中の高い位置やボンネットのすぐ下にあり、開口部が前を向いていない設計だと、走ったときの前方の波を直接吸い込みにくくなります。
2026年の報道では、こうしたタイプの車が浅い冠水路を自走で抜けた例も伝えられています。ただし、車種別に「何台が生還した」という客観的な集計資料は確認できません。個別の体験談として受け止めるのが安全です。
セダンや低床ミニバンで早く水が入りやすい理由
背の低いセダンやスポーツタイプの車は、最低地上高が110〜140mm前後と低めのものが多く、フロントバンパー下の空気取り入れ口も低い位置にあります。水深が浅く見えても、前方の波がすぐ吸気口に届きます。
低床ミニバンは、乗り降りしやすいように床を低くフラットにした作りです。日常はとても快適なのですが、フロア(床)が低いぶん、ドアの敷居やスライドドアのステップを越えて車内に水が入り始める水位も低くなります。エンジンは動いていても、シート下の制御ユニットが水につかると、警告灯が点いて電動パーキングブレーキが動かなくなる、といったことが起こり得ます。
軽ハイトワゴンは車高が高くても油断できない
背の高い軽自動車(軽スーパーハイトワゴン)は、車高があるので一見水に強そうに見えます。でも、そこは少し注意です。
車内の空間が大きい割に車両が軽いので、水位が上がると車体が浮こうとします。JAFの冠水路走行テストでは、水深60cm・時速30kmの条件で、ガソリン軽自動車が28.5m地点で停止し、車内に大量の水が入った結果が公開されています。タイヤが浮いて地面をとらえられなくなると前に進めず、マフラーが水没して排気が詰まったところに前から入った水を吸ってエンジンが止まる、という流れです。「車高が高い=安心」ではないんですね。
車のタイプ別に特徴を比較
強い・弱いのランキングではなく、構造上の特徴と注意点を並べた表です。具体的な数値は一般論で、車種によって変わります。
| 車のタイプ | 水害時の特徴 | 注意したい弱点 | 誤解しやすい点 |
|---|---|---|---|
| 本格クロスカントリー車 | 地上高が高く、吸気口や床までの距離に余裕がある設計が多い | 流れのある濁流・引き波・深いアンダーパスには対応できない。重く救助も大変 | 「渡河性能◯◯mm」は静水・極低速の実験値。公道の冠水路では通用しない |
| 一般的なクロスオーバーSUV | セダンより地上高がある。浅い冠水での余裕は乗用車より少し大きい | 吸気口の位置は車種差が大きい。床下の電装品は水に弱い | 「SUVだから冠水路を走れる」は誤り。浮力や流れには勝てない |
| セダン・スポーツモデル | 低重心で走りは安定。ただし水には弱い側 | 地上高・吸気口・開口部がどれも低く、浸水が早い | 高級車でも床下に精密な電装品が多く、フロア浸水で不具合が出やすい |
| 低床ミニバン | 乗り降りしやすく日常性が高い | 床が低く、車内へ水が入り始める水位が低い。スライドドア部から浸入も | ハイブリッド専用の弱さではなく、床の低さという構造の問題 |
| 軽ハイトワゴン | 車高が高く見た目は水に強そう | 軽量で浮きやすい。浮くとタイヤが地面をとらえられず前に進めない | 「背が高いから大丈夫」は油断。水深が増すと一気に不利になる |
| ガソリン車・ディーゼル車 | 走行中は吸気で空気を取り込み続ける | 吸気口から水を吸うとエンジンが壊れる(ウォーターハンマー) | アイドリングストップ中はマフラーから水が逆流することもある |
| ハイブリッド車 | 高電圧系は密閉・絶縁監視あり。水没で即感電ではない | エンジンの吸気リスクはガソリン車と同じ。12V系の浸水で起動不能に | 「HVだから水に弱い」という公的データはない |
| EV | エンジンの吸気口がなく、短時間の徐行通過では止まりにくい傾向 | 12V系・電装品・冷却系の浸水、海水・泥水での腐食と後日の火災リスク | 「EVは水に強い」も言い過ぎ。JAFも安易な進入は危険としている |
表のとおり「余裕がある」タイプはありますが、それは「冠水路を走行してよい」という意味ではありません。どのタイプでも、冠水した道路には入らないでください。
SUVなら水深何cmまで走れる?数字を信じすぎないで

「うちのSUV、何cmまで平気?」という疑問はとても多いです。でも、一律の安全水深をお伝えすることはできません。理由を説明します。
最低地上高と安全に走れる水深は同じではない
最低地上高は「地面から車体の一番低い部品までの高さ」であって、「そこまで水が来ても走れる高さ」ではありません。地上高より低い水でも、床下のアンダーカバーやマフラー出口、電装品に水があたります。動いていれば波でさらに水位が上がります。
メーカーが四駆に示す「渡河水深」の数値も、波が立たない水を歩くくらいの速さでまっすぐ進む前提の実験値です。実際の道路の冠水は、流れや他車の波があり、浮力でハンドルもブレーキも効きづらくなります。カタログの数字を公道の限界値として読んではいけません。
タイヤの半分までなら大丈夫とは限らない
「タイヤの半分くらいまでなら」という目安を聞くことがありますが、これも当てにしすぎないほうがいいです。吸気口やドアの敷居の高さは車種でバラバラで、タイヤ半分の水位でもう吸気口に近い車もあります。見た目の基準より、自分の車の吸気口とフロアの位置がどれくらい低いかのほうが問題です。
アンダーパスは手前から水深が分からない
アンダーパスは、道路が下に掘り下げられたすり鉢状の構造です。入口側は浅く見えても、いちばん低い中央部で水深が大人の胸くらい、ときには1mを超えていることがあります。手前からは深さが読めません。SUVでも、水深が増えて車体が浮けばハンドルは効かず、いちばん深いところへ流されます。2026年も、アンダーパスで車が水没し亡くなった方が報じられました。冠水の表示や通行止めがあれば、絶対に入らないでください。
他の車が起こす波や流れで状況が一変する
自分がゆっくり走っていても、前の車が急に加速したり、対向の大型車が通ったりすると、その波でこちらの吸気口まで一気に水が来ます。川の氾濫や内水氾濫(下水などがあふれる浸水)では、見た目が穏やかでも横方向の流れがあり、車が押されます。「さっき別の車が通れたから」は理由になりません。
EV・ハイブリッド車は水没すると感電する?

ここは不安に思う人が多いところなので、こわがりすぎず、油断もしすぎず、で整理します。
水没した瞬間に必ず感電するわけではない
いまのEV・ハイブリッド車の高電圧バッテリーや配線は、国際的な規格をもとに密閉され、絶縁を常に監視するしくみ(漏れを感知すると高電圧を自動で遮断する)を持っています。ですから、水没した瞬間に乗っている人や助けに来た人がすぐ感電する、という作りにはなっていません。国土交通省やJAF、メーカーも「即・感電」ではなく「むやみに触らないで」という言い方で注意を呼びかけています。
ただし「安全装置があるから絶対安全」でもありません。オレンジ色の高電圧ケーブルや駆動用バッテリーには触らない。浸水したEV・ハイブリッド車・PHEVには不用意に近づかず、専門業者や販売店へ連絡する。これが基本です。
EVはエンジンの吸水がなくても別の故障リスクがある
EVにはエンジンの吸気口がないので、短い距離を徐行で通るぶんには、ガソリン車のように水を吸って一発で止まる、ということは起きにくいです。JAFのテストでも、水深30cmを時速10kmで安定して走破し、冠水路走行のあとも走行を続けられたのはEVだけ、という結果でした。
でも、EVにも弱点はあります。車全体を動かすための12V系の補機バッテリーやヒューズボックスが水につかると、システムが起動しなくなります。冷却ファンや床下のカバーが水圧でダメージを受けることもあります。JAFのテストでも、水深60cmでは複数の警告灯が点きました。「エンジンがないから大丈夫」と安易に入るのは危険、というのがJAFの結論です。
海水や泥水に浸かった車は特に注意
同じ浸水でも、水の種類で後の影響が変わります。雨水や川の水(淡水)に比べて、高潮などの海水や、下水が混ざった泥水は、電気を通しやすかったり、細かい土砂や塩分を含んでいたりします。
海水や融雪剤入りの泥水が入ると、乾いたあとに塩分が結晶として残り、湿気を吸って電気の通り道を作ってしまいます。これが積み重なると、数時間から数日たってからバッテリーが発熱したり、車両火災につながったりする心配があります。海水につかったEV・ハイブリッド車は、見た目が無事でも自己判断せず専門業者に相談してください。
浸水したEVやPHEVは充電しない・触りすぎない
浸水した充電ポートや車載充電器に外部電源をつなぐと、過熱や火災、地絡(漏電)事故を起こすおそれがあります。浸水後のEV・PHEVは充電しないでください。
高電圧まわりを自分でどうにかしようとするのもやめましょう。バッテリーが変形している、焦げ臭い、熱い、といった様子があれば、素人が触らず、離れて専門業者や消防に任せます。
車が浸水した直後に絶対してはいけないこと

もし水に浸かってしまったら、「動くかな?」と試さないでください。ここはスマホでさっと読めるように、短くまとめます。
エンジンやパワースイッチを入れない
- 水が引いたあとでも、エンジンをかけたりパワースイッチをONにしたりしない。
- 理由①:エンジン内部に水が入っていると、かけた瞬間に壊れる(ウォーターハンマー)。
- 理由②:濡れた電装品に電気が流れて、ショートや発火の原因になる。
- 理由③:EV・PHEVは高電圧系を持っているので、通電させること自体がリスク。
- 理由④:その場で動いても、あとから配線が腐食して「遅延故障」を起こすことがある。
国土交通省も「自分でエンジンをかけないで」「再使用は販売店・整備工場に相談を」と案内しています。
EV・PHEVを充電器につながない
浸水した車を充電しない。これは前の章のとおりで、過熱・火災・漏電のおそれがあります。
無理に自走させない
エンジンがかかっても、自分で運転して移動させない。ロードサービスや保険会社、販売店・整備工場に連絡して、荷台に載せるタイプのレッカー(積載車)で運んでもらいます。
12Vバッテリーのマイナス端子を外すと火災予防になる、という情報もあります。ただし車種や状況によって危険があるので、一般の人が自分でやることを積極的にはおすすめしません。取扱説明書や専門業者の指示に従ってください。
焦げ臭い・煙・発熱があれば車から離れて119番
- 焦げ臭い、煙が出ている、車体が熱い、異音がする。
- このどれかがあれば、すぐに車から10m以上離れて、周囲の安全を確保してから119番。
- 消防には「ガソリン車かハイブリッド車かEVか」「海水につかったかどうか」を伝えます。
浸水したあとは、被害の記録も大事です。タイヤのどこまで水が来たか(泥の跡)、車内の浸水の高さ、まわりの様子を、四方から写真と動画で残しておきましょう。保険の請求や、り災証明の手続きで使います。
浸水車は修理できる?全損になる境界はどこ?
「フロアまで濡れたらもうダメ?」という質問も多いです。ここは「必ず全損」とも「必ず直る」とも言えません。
フロアまで水が入ると修理範囲が広がる
床より下だけの浸水なら、洗浄・乾燥である程度対応できる場合があります。ただ、車内のフロア(床)を越えて水が入ると、シート下やセンターコンソール下の制御ユニット、配線の束(ワイヤーハーネス)が水につかります。ここまで来ると、内装をほぼ全部はずして乾燥・交換する作業になり、修理の範囲が一気に広がります。
乾いた後に起きる「遅延故障」とは
配線の被覆と銅線のすきまや、コネクターのすきまに、毛細管現象で水分が入り込みます。これは外から見えません。時間がたつと銅線が酸化して緑青(青緑色のサビ)が出て、通信の信号が乱れます。すると、不定期なセンサー異常、ABSの不調、走行中の制御停止などが起こります。乾いた直後は普通に動いていても、あとから出てくる。だから「乾いたら終わり」ではないんです。
修理か全損かは車両価値と修理費で決まる
保険の世界でいう「経済的全損」は、修理の見積額が、その車の時価(協定保険価額)を上回る状態を指します。浸水位置、水質、車両の価値、修理費、契約内容によって、全損か修理かの判断は変わります。「水深30cmだから全損」「フロアが濡れたから全損」と一律には決まりません。
修理費と全損ラインを自分で試算してみた
イメージをつかむために、報道や整備業者の解説で挙げられている数字を使って、私なりに足し算してみました。あくまで目安で、全国一律の相場ではありません。
フロアの上まで浸水した場合、内装の脱着・乾燥・消臭でおよそ15万円前後、水を吸った配線をたどって直す作業で40万〜80万円、シート下の制御ユニットを数個交換して20万円前後。単純に合計すると、75万円〜115万円くらいになります。
これを、5年落ちで時価70万円のコンパクトカーと比べてみます。見積が75万円でも、もう時価とほぼ同じ。115万円なら時価を超えるので、経済的全損と判断されやすくなります。仮に全損の保険金70万円で次の車を買い、7年(2,555日)乗るとすると、70万円÷2,555日で1日あたり約274円。こう考えると、「直して乗り続ける」より「区切りをつける」判断になりやすいのも分かります。数字は前提を変えれば動くので、実際は保険会社と整備工場の見積で確認してください。
保険会社へ連絡する前に残したい写真
- タイヤのどこまで水が来たか(水際の線、泥の跡)
- 車内のフロアからの浸水の高さ
- エンジンルーム、トランクの中の様子
- 車のまわりの状況(どのくらいの範囲が浸水したか)
これらを四方から撮っておくと、そのあとの手続きがスムーズです。
中古車に紛れた冠水歴車を見分けるには
災害のあとは、中古車市場に冠水したことのある車が出回ることがあります。JAAI(日本自動車査定協会)は冠水車の加減点基準を定めていて、オークションでは冠水歴を出品票に書く義務があります。それでも、買う側でできる自衛を知っておくと安心です。
カビ臭・泥臭さ・不自然な芳香剤を確認
エンジンをかけてエアコンを内気循環にし、しばらく車内のにおいをかいでみます。カビ臭さや泥のにおいがしないか。逆に、やたら強い芳香剤や消臭剤のにおいがする場合は、何かをごまかしていないか、少し慎重になったほうがいいです。
シートレールやボルト、スペアタイヤ収納部を見る
シートレールの奥、シートベルトを根元までいっぱいに引き出したときの帯の色、シートを留めるボルトのサビ、トランク下のスペアタイヤ収納スペース。こういう「普段は見ない低い場所」に泥の跡や不自然なサビ、砂が残っていないかを確認します。フロアのカーペットをめくれるなら、裏の吸音材が湿っていないか、シミがないかも見ます。
電装品や警告灯だけでは判断できない
パワーウィンドウ、パワーシート、オーディオ、時計、警告灯。ひととおり動かしてみるのは大事ですが、これだけでは判断しきれません。冠水車でも、乾いている間はしばらく普通に動くことがあるからです。逆に、メーターの警告灯を一度消しても、車のコンピューターには通信が途切れた記録が残っていることがあり、専門の診断機なら読み取れる場合があります。
不安なら第三者の点検を利用する
自分で車を分解したり、高電圧の部分に触ったりする必要はありません(やらないでください)。少しでも不安があれば、購入前に第三者機関の車両検査や、付き合いのある整備工場での点検を利用するのが確実です。冠水歴の告知内容と、実際の状態が合っているかを見てもらいましょう。
水害に備えるなら車選びより駐車場所を見直そう
ここまで構造の話をしてきましたが、正直に言うと、いちばん効くのは「どの車に乗るか」より「どこに停めるか」です。どんなに車高の高い車でも、駐車場所が長時間水没すれば、深刻な被害になります。
自宅と駐車場のハザードマップを確認
国土交通省の「重ねるハザードマップ」などで、自宅と契約している駐車場の想定浸水の深さを見ておきます。「浸水の可能性がほぼないのか」「0.5m未満なのか」「1m以上なのか」で、とるべき行動が変わります。まずは一度、地図で自分の生活圏を見てみるところからです。私もこれを機に調べてみて、思っていたより低い土地だったと気づきました。
大雨になる前に高台や立体駐車場へ移動
大雨や線状降水帯の予測が出た「早い段階」で、近くの高台のコインパーキングや、立体駐車場の上の階など、安全な場所へ車を移しておくのがいちばん現実的な対策です。
つまり私たちが先にやるべきなのは、冠水路を突破する準備ではなく、車を水から遠ざける準備なんですよね。家の浸水対策と一緒に考えると分かりやすいです。
(家の側の備えについては、こちらも参考にしてみてね。)
→ 止水板で安心の水害対策!備えあれ板の効果と使い方を徹底解説
車内に脱出用具を置くならガラスの種類も確認
ドアの外の水位がフロアを越えると、水圧でドアが中から開かなくなります。電動の窓も、水没でショートして開かなくなることがあります。そのための脱出用ハンマーですが、最近はフロントだけでなく前席の横のガラスにも「合わせガラス」(フィルムをはさんだ割れにくいガラス)を使う車が増えていて、一般的な脱出ハンマーでは割れません。自分の車の横のガラスがどちらか、手元のハンマーが対応しているかを買うときに確認し、運転席のドアポケットなどすぐ手が届く場所に置いてください。
道路が冠水してから車を移動させない
大事なのは「早めに」です。警報が出てから、あるいは道路の冠水が始まってから車を動かしに行くのは危険です。移動は、天気が荒れる前の落ち着いた段階に限ります。冠水が始まってしまったら、車はあきらめて、自分の安全を最優先にしてください。
まとめ|水害に強いメーカー探しより「入らない・動かさない・早く逃がす」
長くなったので、覚えて帰ってほしいことを3つだけ。
- 冠水した道路には、車種を問わず入らない。
- 浸水した車のエンジンや電源を入れない。充電もしない。
- 大雨になる前の早い段階で、安全な場所へ車を移動させる。
「水害に強いメーカー」という公的なランキングはありません。差が出るのは構造で、しかも構造がよくても冠水路は走れません。走れたように見えても、あとから不具合が出ることもあります。だからこそ、突破する準備ではなく、遠ざける準備を。ハザードマップの確認と、早めの上層階への退避を、いまのうちに習慣にしておきましょう。
よくある質問

Q. 水害に強い車メーカーはどこですか?トヨタは強くてホンダは弱いのですか?
メーカー別に水害への強さを順位づけした公的なデータは確認できません。トヨタが強い、ホンダが弱い、といった比較の根拠はありません。差が出るのは最低地上高、吸気口の高さ、フロアの高さなどの構造で、同じメーカーでも車種によって大きく違います。
Q. SUVなら水深何センチまで冠水道路を走れますか?
一律の安全水深はお伝えできません。最低地上高と「走れる水深」は別物で、動くと前方に波ができてさらに水位が上がります。JAFやメーカーは、車種を問わず冠水した道路には進入しないよう案内しています。
Q. タイヤの半分まで水があっても走れますか?
そうとは限りません。吸気口やドアの敷居の高さは車種でバラバラで、タイヤ半分でもう吸気口に近い車もあります。見た目の目安より、自分の車の吸気口とフロアの位置の低さが問題です。
Q. 軽自動車やミニバンは水害に弱いのですか?
背の高い軽自動車は軽くて浮きやすく、浮くとタイヤが地面をとらえられず進めなくなります。低床ミニバンは床が低く、車内へ水が入り始める水位が低めです。どちらも「弱い」というより構造上の注意点がある、という理解が正確です。
Q. ジムニーやランドクルーザーなら冠水しても平気ですか?
悪路向けの四駆は地上高や吸気口の位置に余裕がある設計が多く、浅い冠水を自走で抜けた例も報道されています。ただし車種別の生還率のような集計資料はなく、流れや引き波、深いアンダーパスには対応できません。過信は禁物です。
Q. EV(電気自動車)は水没すると感電しますか?
水没した瞬間にすぐ感電する作りにはなっていません。高電圧系は密閉され、漏れを感知すると自動で遮断するしくみがあります。ただし「絶対安全」ではないので、オレンジ色の高電圧ケーブルには触らず、浸水したEVには不用意に近づかず専門業者へ連絡してください。
Q. ハイブリッド車が水没したらどうすればいいですか?
エンジンをかけず、パワースイッチも入れず、充電もせず、自走もさせないでください。高電圧部分には触らず、ロードサービスや販売店・整備工場に連絡し、積載車で運んでもらいます。焦げ臭い・煙・発熱があれば離れて119番です。
Q. 浸水した車のエンジンをかけてもいいですか?
かけないでください。エンジン内部に水が入っていると壊れる可能性があり、濡れた電装品に通電するとショートや発火の原因になります。水が引いたあとでも同じです。国土交通省も自分でエンジンをかけないよう案内しています。
Q. フロアまで濡れたら全損ですか?修理費はいくらですか?
一律には決まりません。全損か修理かは、浸水位置、水質、車両の価値、修理費、保険契約によって変わります。フロアを越えると修理範囲が広がりやすいのは確かですが、費用は車の状態や整備工場によって幅があります。
Q. 水没は車両保険で補償されますか?津波の場合は?
台風・豪雨・洪水・高潮による水没は、一般型でもエコノミー型でも補償されるのが一般的です(契約内容によります)。一方、地震に伴う津波による損害は通常の車両保険では対象外で、別の特約が必要です。詳しくは契約中の保険会社に確認してください。
おすすめアイテム
ビサイユのトートバッグ
防災の話をしていると、つい気持ちが重くなりますよね。そんな日は、身のまわりの道具を軽くて使いやすいものに変えるだけでも気分が変わります。ビサイユのトートバッグは超軽量で撥水加工つき、スキミング防止ポケットも備えていて、通勤から週末のお出かけまで一つで足りるよ。
一粒ルビーネックレス
がんばった自分に、小さなご褒美を用意しておくのもいいと思うんです。英国製、18Kゴールドプレーティングとシルバー925を組み合わせた一粒ルビーのネックレスは、派手すぎず長く付けられて、気持ちをそっと上向きにしてくれるよ。
軽量ショルダーBCS-140
身軽に動ける日は、それだけで行動範囲が広がりますよね。撥水加工と多収納、スキミング防止機能を備えた軽量ショルダーBCS-140は、必要なものだけをすっと持ち出したい普段使いにちょうどいい大きさだよ。
参考・出典
- 国土交通省「自動車:浸水・冠水被害を受けた車両のユーザーの方へ」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr09_000100.html - 国土交通省「浸水・冠水被害を受けた車両のユーザーの方へ(リコール・不具合情報)」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/carinf/rcl/carsafety_sub/carsafety029.html - 国土交通省「令和8年8月千葉豪雨による被害状況等について」
https://www.mlit.go.jp/saigai/saigai_260813.html - JAF「冠水路走行テスト 〜電気自動車(BEV)・ハイブリッド車(HV)・ガソリン車で検証〜」
https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/disaster/flood-driving - JAF Mate Online「冠水路を走り切れる? 水深30cmと60cmで検証したJAFユーザーテストを公開!」
https://jafmate.jp/car/traffic_topics_20250710_1197700.html - 三井住友海上「水害・水没は車両保険で補償される?洪水で浸水した場合は?」
https://www.ms-ins.com/personal/car/guide/vehicle/005.html - 中日新聞Web「いつ帰れるのか…東海豪雨を上回るほどの雨で名古屋は大混乱 アンダーパスで立ち往生した車も」
https://www.chunichi.co.jp/article/1308577 - 日本自動車査定協会(JAAI)「中古自動車査定基準及び細則」加減点基準に関する資料
※本記事の情報は執筆時点のものです。内容は予告なく変更されることがあります。保険の補償内容や車両の修理・全損の判断は契約や車の状態によって異なるため、具体的な手続きは加入中の保険会社・販売店・整備工場などの専門家にご相談ください。
