・背景は中国の輸出管理強化(2025年4月以降、2026年1月には対日規制も追加)で、航空・半導体・EVの部材が詰まり始めています。
・スマホや車の値上げだけでなく、医療用途にも波及し得る「資源ボトルネック」を整理します。
(根拠:欧州市場での価格急騰と1kgあたり1,175ドル、中国の輸出管理強化の流れ)
最近ニュースで「イットリウム」という言葉をよく耳にしませんか。
なんだか難しそうな名前ですよね。
イットリウムは、半導体・LED・航空機・医療などに使われるレアアースの一種です。2025年以降、中国の輸出管理強化を背景に価格が急騰し、2026年には供給不足が世界的な問題になっています。
でも実は、私たちの生活にとっても関わりの深い大切な素材なんです。
スマートフォンやパソコン、それに電気自動車から最先端の医療まで、いろんなところで使われています。
そんなイットリウムの価格が、いま驚くほどの勢いで値上がりしているんです。
なんと、1年ちょっとで最大140倍にも達するという急激な値上がりになっています。
この記事では、イットリウムとはそもそもどんなものなのか、そしてなぜそんなに価格が上がっているのか、私たちの生活やお金にどんな影響があるのかを、むずかしい言葉を使わずにわかりやすくお話ししていきますね。

イットリウムとは?実は身近なレアアース
まず、イットリウムがどんなものなのか簡単に整理しておきますね。
元素記号は「Y」、原子番号は39番です。
「レアアース(希土類元素)」と呼ばれる金属のグループの一種で、見た目は銀白色をしています。
実際には、金属そのものというより「酸化イットリウム」のような化合物の形で使われることがほとんどです。
熱に強く、電気を通しやすいといった特徴があり、半導体・航空機部材・蛍光体・医療など、幅広い分野で活躍しています。
聞き慣れない名前ですが、実は身近な製品のあちこちに使われている「縁の下の力持ち」なんです。
イットリウムは何に使われている?
どんな分野で使われているのか、表でざっくり整理してみますね。
| 分野 | 主な用途 |
|---|---|
| 半導体 | 製造装置の部材・耐熱コーティングなど |
| スマホ・ディスプレイ | 蛍光体や電子部品向けの材料 |
| 航空機 | 高温に耐えるエンジン部材のコーティング材 |
| EV(電気自動車) | モーターや電池関連の部材 |
| 医療 | イットリウム90を使った治療など |
| セラミックス | 耐熱・高強度な素材 |
※用途は製品や地域によって異なる場合があります。ここではよく紹介されている代表例を挙げています。
1年で140倍に?イットリウム価格に起きていること
まずは、いま市場でどんなことが起きているのかを見ていきましょう。
2024年の終わりごろまで、イットリウムの価格は1キログラムあたり約6ドルから8ドルくらいでした。
比較的安くて、価格も安定していたんです。
ところが、2025年に入ってから状況がガラッと変わりました。
2025年11月には、1キログラムあたり126ドルにまで跳ね上がったんです。
たった1年で約1500%の急騰です。
さらに2026年の初めには、ヨーロッパなどの一部の市場で270ドルを超えるところも出てきました。
地域によっては、もとの価格の3000%以上にもなっている計算です。
さらに2026年5月には、欧州の指標価格が1キログラムあたり1,175ドルまで上昇したという報道もあります。
もともとの価格(1キログラムあたり6~8ドル程度)と比べると、実に約140倍という計算になります。
わかりやすく言うと、1万円で買えていたものが、いきなり140万円以上になったようなイメージですね。
ここで紹介した価格は、地域や純度、酸化物か金属かといった条件、そして時期によって差があります。単純に一つの数字だけで比較できるものではない、という点は知っておいてくださいね。
これほど急激に値段が上がるのは、自然災害で鉱山が閉鎖されたとか、船の輸送が遅れているといった一時的なトラブルが原因ではありません。
もっと根深い、構造的な問題が隠れているんです。
なぜ高騰?供給網の「武器化」と米中覇権争いの真実

価格がこれほどまでに暴騰している一番の原因は、中国による戦略的な「輸出規制」にあります。
イットリウムは「レアアース(希土類)」と呼ばれる、とても貴重な金属のグループに入っています。
このレアアースの市場で、中国は圧倒的な力を持っているんです。
中国による圧倒的な独占状態
レアアースを土の中から掘り出す「採掘」の量だけでも、中国は世界の約70%を占めています。
でも、本当に深刻なのは掘り出したあとの「精製」のプロセスです。
掘り出しただけの石ころでは、工場で使うことはできません。
そこからイットリウムだけをきれいに取り出して、使いやすい形にする高度な技術が必要です。
実は、この精製や加工の能力の90%以上が中国に集中しています。
イットリウムの生産にかぎって言えば、大部分を中国に依存しているのが実情です。
世界中が、中国から買わないとものづくりができない状態になってしまっています。
輸出管理の強化と許可が下りにくい現実
中国はこの圧倒的な立場を背景に、レアアースの輸出管理を強化しています。国際的には、これが米中の交渉材料になっているとの見方もあります。
2025年の春ごろから、中国政府はイットリウムを含むレアアースの輸出を厳しく制限し始めました。
国の安全保障を理由に、輸出するためのライセンス(許可証)をなかなか出さなくなったんです。2026年1月には、日本向けの一部品目について事実上の輸出禁止措置も報じられています。
とくに2026年に入ってからは、輸出許可(ライセンス)の申請そのものが通りにくくなっていると報じられています。
実際、中国からのイットリウムの出荷量は、輸出管理が始まる前の1年間と比べて約半分にまで落ち込んでいるというデータもあります。
つまり、買いたくても買いにくい状態が続いているわけです。
2026年3月には、アメリカのトランプ大統領と中国の習近平国家主席による重要な会談が予定されていました。
この会談を前にして、アメリカの半導体産業や軍事産業にプレッシャーをかけるための、政治的な駆け引きの材料にされているという見方が強いんです。

スマホも車も値上がり?主要産業を直撃する供給不足

中国からイットリウムが届かなくなると、私たちの身の回りにある様々な産業が大パニックになります。
イットリウムは熱にとても強かったり、電気を通しやすかったりする特別な性質を持っているので、ほかの素材で代用するのがすごく難しいんです。
具体的にどんな影響が出ているのか、3つの分野を見ていきましょう。
飛行機が作れない?航空機エンジンへの影響
もっとも深刻なダメージを受けているのが、飛行機や宇宙開発の分野です。
飛行機のジェットエンジンは、金属が溶けてしまうほどのものすごい高温になります。
その熱からエンジンを守るための特殊なコーティング剤(イットリア安定化ジルコニア)に、イットリウムが絶対に必要なのです。
いま、このコーティング剤を作るメーカーが、材料不足で工場を一時ストップする事態になっています。
コーティングができないと、安全なエンジンを作ったり修理したりすることができません。
このまま材料不足が長引けば、新しい飛行機を作る計画が18ヶ月から24ヶ月も遅れてしまう危険性があると指摘されています。
スマホやPCが高くなる?半導体製造のボトルネック

次に私たちの生活に直結するのが、半導体の分野です。
パソコンやスマートフォン、それに最近話題のAIを動かすためにも、高性能な半導体チップが必要です。
この半導体を作る機械の内部を保護する部品に、とても純度の高いイットリウムが使われています。
いま、AIブームで半導体の需要が爆発的に増えているのに、それを作る機械の部品が足りないという矛盾が起きています。
部品の調達コストが上がれば、それは最終的に製品の価格に跳ね返ってきます。
ある予測では、この影響でパソコンの価格全体が17%も値上がりするかもしれないと言われています。
私たちが次にスマホやパソコンを買い替えるとき、予想以上にお財布に厳しいことになっているかもしれません。
次世代EVの量産を阻む壁
電気自動車(EV)の分野にも大きな壁が立ちはだかっています。
いまの電気自動車のバッテリーは、もっと安全で長持ちする「全固体電池」という新しい技術に切り替わろうとしています。
2026年はその量産が始まる記念すべき年になるはずでした。
ところが、この全固体電池の性能を安定させるためにも、たくさんのイットリウムが必要なんです。
電気自動車が普及すればするほど、ものすごい量のイットリウムが必要になります。
未来のクリーンな車を作るための計画が、材料不足によって足踏みさせられている状態です。
さらに、モーターを回すための強力な磁石にもレアアースが使われているため、日本の自動車メーカーも生産計画の見直しを迫られています。
医療にも使われるイットリウム90とは
経済やお金の話だけでなく、医療の分野への影響も気になるところですよね。
実はイットリウムは、最先端の医療現場でも活用されている存在なんです。
放射線を出す性質を持つ「イットリウム90」という放射性同位体があります。
日本では、悪性リンパ腫の治療薬「ゼヴァリン」として承認されているほか、手術で取り除くのが難しい肝臓がんなどに対する治療法(選択的内照射療法)としても、研究・使用が進められています。
とても小さなカプセルや微小球体を血管から直接送り込み、がん細胞に近いところから放射線を当てるという治療法で、患者さんの体への負担を減らせる方法として注目されています。
この治療で使われるような、医療用に高純度なレアアースを精製できる施設は世界的にも限られていて、中国への依存度が高いのが実情です。
そのため、今後の輸出管理の状況によっては、原料の調達コストや供給の安定性に影響が出る可能性がある、と指摘する声もあります。
今すぐ治療に大きな支障が出ていると断定できるわけではありませんが、国と国との駆け引きが、思わぬところで医療分野にも影響しかねないという点は、知っておいて損はなさそうです。
農業から未来の技術まで?意外な影響
影響はこれだけにとどまりません。
一見関係なさそうな分野にも、波紋が広がっています。
たとえば「スマート農業」と呼ばれる分野です。
いまの農業は、土の中の栄養素をセンサーで細かく分析して、効率よく作物を育てています。
この高性能なセンサーや、特殊な肥料の中にもイットリウムが使われているんです。
材料が高騰すれば、農家さんの負担が増えます。
2026年には農業用のイットリウム調達コストが8%上がると予測されていて、これがまわりまわって私たちの食料品の値上がりにつながるかもしれません。
また、夢の技術と言われる「量子コンピューター」や、電気を無駄なく送る「超伝導ケーブル」の研究開発も、材料費の高騰でスピードが落ちてしまうことが懸念されています。

日本はイットリウムを確保できる?南鳥島とリサイクル
ここまで読んで、「日本は大丈夫なの?」と気になった方も多いと思います。
日本はものづくりの国なので、世界中から材料を仕入れて高品質な製品を作っています。
だからこそ、今回の中国の輸出規制によるダメージを受けやすい立場でもあります。
そんな中、日本国内でも供給源を確保しようという動きが進んでいます。注目の動きをいくつかピックアップしてご紹介しますね。
南鳥島レアアース泥開発の最前線

いま注目を集めているのが、日本の「国策」としてのレアアース開発です。
2026年1月から2月にかけて、日本の南鳥島沖の排他的経済水域(EEZ)で、水深約6,000メートルの深海からレアアースを含む泥を引き上げる「採鉱システム接続試験」が行われました。
これはまだ商業的な採掘ではなく、2027年2月に予定されている本格的な採掘試験に向けた技術検証の段階です。
深海から泥を引き上げるのは、中国の陸地で採掘するのに比べてコストが5倍から10倍もかかると言われています。
普段なら「高すぎてビジネスにならない」と判断されるところです。
でも、中国から買いにくい今の状況では、国を守るための安全保障プロジェクトとして国からの支援が期待されています。
この開発に関わる「三井海洋開発」や「東洋エンジニアリング」といった企業は、国の資源戦略に関わる企業として注目を集めています。
ただし商業化にはまだ時間がかかる見通しで、南鳥島の泥だけで日本がすぐにイットリウムを自給できるようになるわけではありません。
「都市鉱山」とリサイクル技術の勝機
もうひとつ期待されているのが「都市鉱山」と呼ばれる分野です。
私たちが使い終わって捨てたスマートフォンやパソコン、家電製品の中には、レアアースなどの貴重な金属がたくさん眠っています。
これをゴミとして捨てるのではなく、特殊な技術で溶かして、もう一度きれいな金属として取り出すビジネスです。
今までは「わざわざ取り出すよりも、中国から新しいものを買ったほうが安い」と言われていました。
でも、イットリウムの価格が大きく上がった今なら、リサイクルにかかる手間やコストをかけても採算が合いやすくなっていると言われています。
この高度なリサイクル技術を持っている「DOWAホールディングス」や「アサカ理研」といった企業には、国内外から注目が集まっています。
国内企業への影響とリスク
一方で、厳しい状況に立たされている企業もあります。
高性能なモーターや磁石を作っている「信越化学工業」や「ニデック」といった企業です。
材料の仕入れ価格が跳ね上がっているうえに、そもそも材料が手に入らなくて工場を止めないといけないリスクを抱えています。
また、電気自動車を作っている「トヨタ自動車」や「ホンダ」などの自動車メーカーも、部品が足りずに生産計画の見直しを迫られています。
これらの企業は、利益が減ってしまうのではないかという不安から、株価が上がりにくい状態が続いています。
今後の展望:中国に頼らない未来はいつ来るの?
ここまで読んで、「これから先、世界はどうなってしまうの?」と不安になった方もいるかもしれません。
でも、世界中がただ指をくわえて見ているわけではありません。
ピンチを乗り越えるために、中国に依存しない「新しい供給ルート」を作る動きが急ピッチで進んでいます。
たとえば、カナダやアメリカ、オーストラリアの企業が、自国でレアアースを掘り出し、精製する新しい工場をどんどん建設しています。
AIを使って環境に優しい方法で精製する技術も開発されているんです。
また、そもそもレアアースを「使わない」という逆転の発想で研究を進めている企業もあります。
テスラなどの一部の自動車メーカーは、レアアースをまったく使わない新しい構造のモーターを採用し始めています。
鉄と窒素だけで強力な磁石を作るという、夢のような新素材の開発も実用化に近づいています。
時間はかかるかもしれませんが、リサイクル技術の進化や新しい技術の発明によって、少しずつ状況は改善していくはずです。
読者の疑問に答えるQ&Aコーナー

ここで、イットリウムについての「よくある質問」をわかりやすくまとめておきますね。
イットリウムとは何ですか?
イットリウムは元素記号Y、原子番号39番のレアアース(希土類元素)の一種です。銀白色の金属で、実際には酸化イットリウムなどの化合物の形で使われることが多く、半導体や航空機部材、蛍光体、医療などさまざまな分野で使われています。
イットリウムはレアアースですか?
はい、イットリウムはレアアース(希土類元素)に分類されます。世界的に採掘量が限られているうえ、精製の多くを中国に頼っているため、供給が特定の国に偏りやすい素材です。
イットリウムは何に使われていますか?
半導体製造装置の部材、航空機エンジンの耐熱コーティング、スマートフォンやディスプレイの蛍光体、電気自動車の部材、医療(イットリウム90を使った治療)など幅広い分野で使われています。
なぜイットリウムの価格が上がっているのですか?
最大の要因は、中国が2025年4月以降に強化したレアアースの輸出管理です。輸出許可が下りにくくなったことで海外向けの供給が細り、欧州などの市場で価格が急騰しました。
中国とイットリウムにはどんな関係がありますか?
イットリウムの採掘や精製の多くを中国が担っており、世界的な供給の大部分を中国に依存しているのが実情です。そのため中国の輸出管理の変化が、そのまま世界の価格や供給に影響します。
日本でもイットリウムは採れますか?
日本の南鳥島沖の海底には、レアアースを含む泥が存在することが分かっており、採鉱に向けた技術検証が進められています。ただし商業的な採掘にはまだ至っておらず、日本がすぐに自給できる状態ではありません。
イットリウムは危険ですか?
イットリウムの金属や化合物そのものが、日常生活の中で私たちに直接害を及ぼすことはほとんどありません。ただし取り扱いには専門的な知識や設備が必要で、医療用途では厳格な管理のもとで使用されています。
イットリウム90とは何ですか?
イットリウム90は、放射線を出す性質を利用してがん治療などに使われる放射性同位体です。日本では悪性リンパ腫の治療薬「ゼヴァリン」として承認されているほか、肝臓がんなどに対する治療法としても研究・使用が進んでいます。

まとめ
いかがでしたか。
耳慣れない「イットリウム」という金属の価格高騰が、実は私たちのスマホや車、そして医療現場にまで深く関わっていることがおわかりいただけたでしょうか。
重要なポイントを最後にもう一度整理しておきますね。
・イットリウムは半導体・航空機・医療などに使われるレアアースで、中国の輸出管理強化により価格が1年で最大140倍にも暴騰している。
・航空機、半導体、電気自動車の製造が大幅に遅れるリスクが出ている。
・がん治療で使われるイットリウム90など、医療の分野にも影響が及ぶ可能性が指摘されている。
・日本では「都市鉱山(リサイクル)」や「海底資源開発」の関連企業に注目が集まっている。
・世界中で中国に頼らない新しいルート作りや、レアアースを使わない技術の開発が進んでいる。
しばらくはモノの値段が上がったり、欲しいものがすぐに手に入らなかったりする不安定な状況が続くかもしれません。
でも、こうした危機をきっかけに、ゴミから宝を取り出すリサイクル技術や、新しい素材の発明が加速していくのも事実です。
これからのニュースを見るときは、ぜひ「イットリウム」や「レアアース」という言葉に注目してみてくださいね。
世の中の動きが、今までとは少し違った視点で見えてくるはずですよ。
