🔖 3行まとめ
・75歳になっても全員が自動的に3割負担になるわけではなく、条件を満たす一部の人だけ
・2026年8月に実際に変わったのは「高額療養費制度」の月額上限+年間上限の新設
・「原則3割化」は現時点では審議中の将来案で、まだ決定・施行されていない
「後期高齢者は3割負担になる」——お盆に実家に帰ったら、母がそんなニュースの話をしてきました。私も一瞬「え、うちの親も!?」と焦ったのですが、調べてみると75歳になったからといって全員が自動的に3割負担になるわけではありません。
現在3割負担になるのは、住民税課税所得が145万円以上で、なおかつ年金収入などが単身383万円以上(複数世帯520万円以上)という、一定以上の所得がある人に限られています。つまり今回ニュースになっている「3割負担」は、今すぐ全員に起きる変化ではなく、条件に当てはまる一部の人の話です。
一方で、2026年8月には高額療養費制度が実際に変わりました。この記事では、①今回本当に変わったこと、②すでに終わった制度、③これから議論される将来の話——を分けて整理します。ニュースの「3割負担」と「高額療養費」を混同しないことが、不安を減らす一番の近道です。
後期高齢者医療制度は75歳から全員3割負担になる?

まず結論から。後期高齢者医療制度は、75歳の誕生日から自動的に加入する独立した医療保険制度で、窓口での自己負担割合は所得に応じて1割・2割・3割の3段階に分かれています。全員一律ではありません。
3割負担になる条件
3割負担(「現役並み所得」)になるのは、次の両方に当てはまる人です。
- 同じ世帯の被保険者に、住民税の課税所得が145万円以上の人がいる
- その世帯の年金収入+その他所得の合計が、単身世帯なら383万円以上、複数世帯なら520万円以上
課税所得は145万円以上でも、収入が上の基準を下回る場合は「基準収入額適用申請」をすれば1〜2割に軽減されます。私も最初は「課税所得145万円」だけで3割になると誤解していたのですが、収入要件とセットだと知って少し安心しました。
「75歳以上原則3割」という情報の現在地
SNSなどで見かける「75歳以上は原則3割負担になる」という話は、財政制度等審議会や「骨太の方針2026」に向けた議論の中で出ている将来の検討案であり、2026年8月時点で法案として成立・施行されたものではありません。決まったことと、これから決まるかもしれないことを分けて考える必要があります。
現在の医療費は1割・2割・3割の3段階

自分や親がどの区分に当てはまるか、まずはここで整理してみてください。
| 区分 | 窓口負担 | 主な条件(目安) |
|---|---|---|
| 一般(住民税課税・低所得非該当) | 1割 | 課税所得28万円未満、または収入基準未満 |
| 2割 | 2割 | 世帯に課税所得28万円以上の人がいて、年金収入等が単身200万円以上・複数世帯320万円以上 |
| 現役並み所得(3割) | 3割 | 課税所得145万円以上 かつ 年金収入等が単身383万円以上・複数世帯520万円以上 |
課税所得が高くても収入が基準以下なら軽減される
「課税所得145万円以上」だけを見て3割だと思い込んでいる人もいますが、収入要件(単身383万円・複数世帯520万円)を下回れば、申請によって1〜2割に軽減されます。この「基準収入額適用申請」は自動適用ではなく申請が必要な自治体もあるため、心当たりがある人は加入する広域連合に確認してみてください。
自分の区分は毎年送られてくる証明書で確認する
負担割合は所得の変動に応じて毎年見直される可能性があります。正確な判定は、毎年送られてくる「後期高齢者医療 負担割合証」または資格確認書・マイナ保険証の情報で確認してください。「去年は1割だったから今年も1割のはず」という思い込みは避けたほうが安心です。
なぜ今「後期高齢者3割負担」が話題になっている?
私は正直、最初は「なんで急にこの話題が広がっているんだろう」と不思議でした。調べてみると、複数の出来事が同じタイミングで重なっていたことがわかりました。
3つのタイミングが重なった
- 2026年8月1日に高額療養費制度が実際に改定された
- お盆の帰省時期と、8月中旬の年金支給日が重なり、家族間で「医療費」「年金の天引き額」の話題が出やすかった
- 「3割負担のボーダーライン」を扱うニュース記事がSNSで拡散され、「原則3割化」の議論と現行制度が混同されやすかった
この3つが重なったことで、「後期高齢者医療制度」全体が3割負担になる、という誤解が広まりやすい状況になっていた、というのが実態に近いようです。
2026年8月から本当に変わったのは高額療養費制度

ここが今回の記事で一番大事なところです。2026年8月に変わったのは「窓口負担の割合」ではなく「高額療養費制度の自己負担上限額」です。
月額上限の引き上げと年間上限の新設
高額療養費制度は、1か月の医療費自己負担が一定額を超えたら、超えた分が払い戻される仕組みです。2026年8月からこの上限額が全所得区分で引き上げられました。同時に、新たに「年間上限」が設けられたのが今回の一番の特徴です。
複数の保険者・専門メディアの解説を照合すると、75歳以上ではおおむね次のような改定内容になっています(正確な金額は加入している広域連合・健保組合の案内、または厚生労働省の公式リーフレットで必ずご確認ください)。
| 所得区分(目安) | 月額上限(改定後) | 年間上限(新設) |
|---|---|---|
| 現役並み所得 | 世帯 約85,800円+1% | 約53万円 |
| 一般 | 世帯 約61,500円/外来個人 約22,000円 | 約53万円 |
| 低所得Ⅱ | 外来個人 約11,000円 | 約29万円 |
| 低所得Ⅰ | 外来個人 従来水準を維持 | 約18万円 |
年間上限の計算期間は毎年8月1日〜翌年7月31日です。1か月ごとの負担が上限に届かなくても、1年間の合計が年間上限を超えれば、超えた分が払い戻されます。
多数回該当は据え置き
直近12か月で高額療養費の支給が3回以上あった場合、4回目以降の上限額が下がる「多数回該当」の仕組みは、今回の見直しでも基準額はほぼ据え置きとされています。短期の通院・入院より、慢性疾患で医療費が続く人ほど、この多数回該当と年間上限の両方が効いてくる設計です。
結局いくら増える?ケース別に計算

「で、結局うちはいくら増えるの?」というのが一番知りたいところですよね。試しに4つのケースで、2026年7月までと8月からを比べてみました(金額は目安。実際の請求額は医療機関・保険者の案内でご確認ください)。
ケース①年金中心・1割負担で定期通院
毎月の医療費(10割分)が数万円程度の軽い通院であれば、1割負担の自己負担額はもともと外来上限に届かないことが多く、7月までと8月からで負担はほとんど変わりません。
ケース②2割負担で毎月高額な薬を利用
2割負担で毎月の医療費(10割分)が10万円前後の場合、7月までは外来上限18,000円で頭打ちでしたが、8月からは外来上限が22,000円に上がったため、月あたり数千円程度負担が増える可能性があります。
ケース③一時的に入院
一般区分(2割負担)で1か月だけ高額な入院をした場合、世帯の月額上限が57,600円前後から61,500円前後に引き上げられたため、その月だけ数千円程度の負担増になるケースが見込まれます。
ケース④がんなどで長期的に高額治療
現役並み所得で毎月高額な治療(10割分で数十万円規模)が1年間続くようなケースでは、7月までの制度なら多数回該当を使っても年間で数十万円の負担になっていましたが、8月からは年間上限(約53万円)に到達した時点でそれ以降の自己負担がゼロになるため、年間トータルではむしろ負担が軽くなる可能性があります。
私も最初は「上限が上がった=みんな負担増」と単純に考えていたのですが、実際に試算してみると、短期の治療は負担増、長期の治療はむしろ軽くなるという、方向性が逆のケースが混在していることに気づきました。
長期治療なら「年間上限」で負担が軽くなるケースも

してみた|年間上限の効果を実際に計算してみた
現役並み所得(月額上限約85,800円+1%)の人が、毎月100万円(10割分)の医療費がかかる治療を1年間続けたケースで、電卓を叩いてみました。
- 7月までの制度:初月〜3か月目は1か月あたり約87,000円前後、4か月目以降は多数回該当で1か月あたり約44,400円。単純に12か月分を積み上げると、年間の自己負担は60万円台後半になります。
- 8月からの制度:初月〜数か月は月あたり約93,000円前後を負担しますが、年間の累計が年間上限の約53万円に到達した時点で、それ以降の自己負担は発生しなくなります。
つまり、支払うタイミングの上限額そのものは上がっていても、「年間でいくら払うか」で見ると長期治療者はむしろ有利になる設計だとわかりました。これは今回一番驚いたポイントです。
「最近病院代が高くなった」と感じるもう一つの理由
「最近、病院代が高くなった気がする」という声の背景には、2026年8月の改定だけでなく、2025年9月30日に終了した「2割負担の配慮措置」も関係しています。
2022年10月導入の配慮措置とは
2022年10月に1割から2割へ負担が上がった人向けに、外来の負担増を月3,000円までに抑える激変緩和措置が3年間設けられていました。これは制度変更のショックをやわらげるための時限措置で、最初から2025年9月末までの期限付きでした。
2025年10月以降は2割の本格適用に
配慮措置は2025年9月末で予定通り終了し、2025年10月以降、2割負担の本格適用が始まっているため、その負担増の記憶が新しいうちに、今回の8月改定が重なった、というのが「二重に高くなった」と感じる正体のようです。私自身も母から「去年より今年のほうが高い気がする」と言われて調べるまでは、この2つの制度変更が別物だと意識していませんでした。
75歳になったばかりの人が注意したい3つのこと
自分の窓口負担割合の確認方法
負担割合は、毎年送られてくる「後期高齢者医療 負担割合証」やマイナ保険証の情報、資格確認書の記載で確認できます。「なんとなく3割だと思っていた」という思い込みは、まず確認から始めるのが安心です。
マイナ保険証・資格確認書への切り替え
後期高齢者医療制度の従来の保険証は、経過措置により2026年7月31日で有効期限が満了しました。8月以降はマイナ保険証、または申請不要で無償交付される資格確認書での受診が基本です。手元にどちらもない場合は、加入している広域連合に確認してください。
高額療養費の確認方法
高額療養費は多くの場合、事前に「限度額適用認定証」(マイナ保険証利用なら情報提供に同意することで自動適用)を提示すれば、窓口での支払い自体を上限額までに抑えられます。払いすぎた分は、診療月の翌月1日から2年間さかのぼって申請可能です。
この話は、2026年4月から手取りが減る?社会保険・年金の大改正を分かりやすく解説で扱った年金・社会保険の変化とも関連しています。天引き額の変化が気になる人は合わせて読んでみてください。
後期高齢者医療制度でよくある質問

Q. 75歳の誕生日が月の途中だった場合、保険料や高額療養費はどうなる?
誕生日の前月までは元の保険、誕生月からは後期高齢者医療の月割り計算になるため、保険料が二重にかかることはありません。高額療養費についても、誕生月に限り旧保険・後期高齢者医療それぞれの自己負担限度額が本来の半額になる特例があります(1日生まれは対象外)。
Q. 夫だけ75歳になった場合、73歳の妻はどうなる?
夫が加入していた会社の健康保険などの被扶養者だった妻は、夫が後期高齢者医療制度に移ると扶養から外れるため、妻自身で国民健康保険などに加入する手続きが必要です。
Q. 妻が夫の健康保険の扶養だった場合、保険料の軽減はある?
75歳になる直前まで家族の被用者保険の被扶養者だった人は、加入後2年間、均等割が軽減される経過措置が設けられている場合があります。詳細は加入する広域連合に確認してください。
Q. 歯科治療も高額療養費に含まれる?
保険適用の歯科治療であれば、他の診療分と合算して高額療養費の対象になります。
Q. 薬局で支払った薬代は対象になる?
院外処方の調剤薬局での薬代も、保険適用分であれば合算対象です。
Q. 差額ベッド代は高額療養費に含まれる?
差額ベッド代は保険適用外の実費のため、高額療養費の対象外です。全額自己負担になります。
Q. 入院中の食事代は対象になる?
食事代(標準負担額)も高額療養費の合算対象外です。ただし住民税非課税世帯には、食事代自体を減額する別の認定証があります。
Q. 医療費と介護費は合算できる?
「高額医療・高額介護合算療養費制度」を使えば、1年間(8月〜翌7月)の医療と介護の自己負担合計が基準額を超えた分の還付を受けられます。申請が必要です。
Q. 高額療養費は過去分もさかのぼって申請できる?
診療を受けた月の翌月1日から2年間は申請可能です。「あのとき高かったけど申請していなかった」という人も、2年以内なら間に合う可能性があります。
Q. マイナ保険証と資格確認書、どちらを持っていればいい?
どちらか一方があれば受診できます。マイナ保険証を使わない、または使えない人には申請不要で資格確認書が無償交付されるため、慌てて両方そろえる必要はありません。
まとめ|「今変わったこと」と「まだ決まっていないこと」を分けよう
- 今変わったこと:2026年8月1日から高額療養費制度の月額上限が引き上げられ、新たに年間上限(約8月〜翌7月)が新設された
- すでに終わった制度:2022年10月導入の「2割負担配慮措置」は2025年9月30日で終了済み
- まだ決まっていないこと:「75歳以上は原則3割負担」は現時点で審議段階の将来案であり、施行時期は確定していない
「3割負担」「高額療養費」「配慮措置」は別々の出来事です。ニュースの見出しだけで不安になる前に、まずは自分や親の負担割合証を確認してみてくださいね。
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参考・出典
- 厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて」(社会保障審議会医療保険部会資料)
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001621844.pdf - 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/100714a.pdf - 厚生労働省「医療費の一部負担(自己負担)割合について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/newpage_21060.html - 政府広報オンライン「後期高齢者医療制度 医療費の窓口負担割合はどれくらい?」
https://www.gov-online.go.jp/article/202209/entry-10482.html - デジタル庁ニュース「2025年8月以降順次切り替え!健康保険証の注意点は?」
https://digital-agency-news.digital.go.jp/articles/2025-07-22 - 後期高齢者医療広域連合(各都道府県)公表資料「窓口負担割合が2割となる方への配慮措置について」
※本記事の情報は執筆時点(2026年8月)のものです。制度の詳細・最新の金額は必ずお住まいの後期高齢者医療広域連合や厚生労働省の公式発表でご確認のうえ、個別の判断は専門家にご相談ください。
