この記事のポイント(30秒で分かる3行まとめ)
- 2026年の中東危機でホルムズ海峡の物流が乱れ、日本のナフサ(プラスチックの原料)の輸入価格が急上昇した
- ナフサ不足は食品容器・ペットボトル・衣類・自動車・紙おむつ・注射器など、驚くほど身近な製品に影響しうる
- 丸紅のペルー・インドからの代替調達や三菱商事の備蓄放出など、商社の動きが供給網を支える役割を果たした
「ナフサ」って聞いたことありますか?私は正直、2026年の春にニュースで見るまで、まったく馴染みのない言葉でした。でも調べてみると、ナフサはコンビニ弁当の容器から紙おむつ、スマホの部品まで、私たちの生活のあちこちに関わっている原料だったんです。
2026年に中東情勢が緊迫化したことで、このナフサの供給に大きな乱れが生じました。「石油価格が上がる」というニュースだけを見ていると自分には関係ないと思いがちですが、実はナフサ不足は、私たちが毎日手に取っている日用品の値段や在庫に直結しています。この記事では、ナフサ不足がなぜ起きたのか、生活にどう影響するのか、そしていつまで続くのかを、身近な商品を例にしながら整理していきます。
ナフサ不足はなぜ起きた?2026年中東危機で日本の供給網に異変

ホルムズ海峡でタンカーの航行が制限された
2026年春、中東情勢が急激に緊迫し、原油やナフサの輸送路として世界的に重要な「ホルムズ海峡」でタンカーの航行が大きく制限される事態が起きました。この海峡は中東から日本などアジア各国へ石油製品を運ぶ大動脈で、平時であれば1日あたり多くのタンカーが行き来していたのですが、危機の最中には通航できる船が1日数隻程度にまで落ち込んだとする報道もあります(数値は報道時点の推計であり、状況によって変動します)。
私はこのニュースを見たとき「日本には関係のある話なのかな」と半信半疑でした。でも日本のナフサ供給は、国産と輸入を合わせても中東への依存度が高く、この海峡が止まることは、そのまま国内の石油化学産業への打撃につながります。
ナフサ価格・輸送コストの急上昇
実際、財務省の貿易統計をもとにした報道によると、ナフサの輸入価格(CIF価格)は2026年3月の1キロリットルあたり66,069円から、5月には123,732円まで上昇したとされています。わずか2か月で1.8倍以上という、かなり急激な変化です。
さらに、原料そのものの価格だけでなく、運ぶための費用も跳ね上がりました。中東からのタンカー運賃は1トンあたり89ドル(日本円で1万4千円ほど)という、歴史的な高水準になったとする報道もあります。原料費と輸送費の両方が同時に上がる状況が重なったことで、川下にある石油化学メーカーの負担は一段と大きくなったと考えられます。私はこのあたりのニュースを追いながら「値段が上がる理由って一つじゃないんだな」と、あらためて感じました。
そもそもナフサとは?ガソリンとの違いをわかりやすく解説

ナフサなんて普段ほとんど聞きませんよね。私も「なんとなく石油の仲間」くらいのイメージしかありませんでした。ここで簡単に整理しておきます。
ナフサは「プラスチックのもと」
ナフサは、原油を蒸留する過程で取り出される、比較的軽い炭化水素の混合物です。ガソリンと同じような温度帯で採れる原料ですが、ガソリンが自動車のエンジンで燃やすために調整された「燃料」であるのに対して、ナフサは化学的に分解して別の物質を作るための「原料」という位置づけが大きく違うところです。つまり、ナフサはこのあと紹介する「プラスチックのもと」になる存在なんです。
ナフサからエチレン・プラスチックができるまで
ナフサは「ナフサクラッカー」と呼ばれる設備で高温にさらされ、エチレンやプロピレンといった基礎的な化学物質に分解されます。中でもエチレンは生産量が多く「石油化学の米」とも呼ばれるほど重要な存在です。このエチレンやプロピレンが、さらに重合という反応を経てポリエチレンやポリプロピレンといった樹脂になり、それが成型されて私たちの手元にあるプラスチック製品になります。つまり「ナフサ→エチレン・プロピレン→樹脂→製品」という一本の道がつながっていて、入り口のナフサが不足すると、出口にある製品づくりにまで影響が及ぶ構造になっているんです。
この連鎖のポイントは、ナフサクラッカーが「一度火を止めると簡単には再稼働できない」設備だという点です。原料が足りないからといって数日だけ止めて、また元通りに動かすというわけにはいきません。報道によれば、国内のエチレン設備の稼働率は2026年5月に68.1%、6月には66.5%まで落ち込んだとされています。稼働率が下がるということは、その分だけ川下の樹脂メーカー・製品メーカーに届く原料が減るということでもあります。私はこの数字を見て、「工場が止まる止まらないの話」が、思っていたより自分の生活に近いところで起きていたんだと実感しました。
ナフサ不足で何が困る?身近な製品への影響

ここが今回いちばんお伝えしたいところです。「ナフサ不足」と聞いてもピンとこなくて当然だと思います。でも中身を見ていくと「え、これも?」と思うものばかりでした。
食品容器・ペットボトル・洗剤容器
まず影響が出やすいのが、食品包装フィルムやペットボトル、レジ袋、洗剤や化粧品の容器です。これらはポリエチレンやPET樹脂が主原料で、原料費が上がればそのまま販売価格に響きやすい分野です。コンビニ弁当の容器やお惣菜のパック、シャンプーのボトルなど、毎日何気なく使っているものばかりですよね。
私は普段スーパーで買い物をしていても、容器の値段まで気にしたことはほとんどありませんでした。でも考えてみると、食品そのものの中身が値上がりしていなくても、包む容器の原料コストが上がれば、結局は商品全体の価格に跳ね返ってきます。「中身は変わらないのに、なんだか値段が上がった気がする」という感覚の裏側に、実はこうした原料の値動きが隠れていることもあるのだと思います。
衣類・自動車・スマートフォン
衣類の多くに使われているポリエステルやナイロンといった合成繊維もナフサ由来です。さらに自動車のバンパーや内装材、タイヤの合成ゴム、スマートフォンの筐体や基板の絶縁材、家電の部品なども、たどっていくとナフサに行き着きます。私はここまで調べて「服も車もスマホも、根っこは石油化学なんだ」と初めて実感しました。
特に自動車は、1台あたりに使われるプラスチック部品の点数が非常に多い製品です。バンパー一つが欠品するだけでも組み立てラインが止まりかねないと言われるほど、部品供給の連携はシビアだとされています。スマートフォンも同様で、筐体や基板まわりの樹脂・絶縁材が調達できなければ、生産計画そのものを見直さざるを得なくなります。ナフサという「入り口」の変化が、こうした耐久消費財の生産スケジュールにまで波及しうるというのは、私にとっても新しい気づきでした。
紙おむつや注射器まで?意外なナフサ由来製品
特に驚いたのが、赤ちゃんの紙おむつに使われる高吸水性ポリマー、使い捨ての注射器や点滴チューブ、コンタクトレンズ、医薬品の包装(PTP包装)といった医療・衛生関連の製品です。これらは木材やガラスなど別の素材に簡単に置き換えられるものではないため、供給が滞ると私たちの生活だけでなく医療現場にも影響が及びかねない分野になります。
私自身、小さな子どもがいる友人から「紙おむつって急に値段が変わることがあるよね」という話を聞いたことがあります。そのときは単純に「メーカーの都合かな」くらいにしか思っていませんでしたが、今回調べてみて、原料であるナフサの値動きが背景にあるケースもあるのだと分かりました。医療現場で使われる注射器や点滴チューブも同じで、普段は当たり前のように使われているものが、実は海外情勢の影響を受けやすい原料からできているというのは、私にとって一番の発見でした。道路の舗装に使われるアスファルトの改質材や、一部の食品添加物の合成原料にもナフサが関わっているとされており、目に見えないところまで生活を支えているのだと実感しています。
(防災用の備蓄について考えたことがある方なら、こうした「いざという時に足りなくなるかもしれないもの」への感覚はイメージしやすいかもしれません。無理のない範囲で日用品を備えておく考え方については、防災食の備蓄はもう怖くない!9月1日から始める「無理なく続く」ガイドでも紹介しているので、興味があれば読んでみてください。)
ナフサ不足でプラスチック製品は値上がりする?
原料であるナフサの価格が上がれば、理屈のうえではプラスチック製品の価格にも影響が及びます。もちろん、すべての値上がりがナフサだけを原因にしているわけではなく、人件費や物流費など他の要因も絡んでいますが、原料コストの上昇分がどこかで価格に転嫁されやすいのは間違いありません。
家庭の年間コストを試算してみた
どのくらいの影響になりうるのか、私も実際に数字を置いて計算してみました。仮に、ある家庭が食品包装や洗剤容器などプラスチックを多く使う日用品に年間3万円ほど使っているとして、そのうち原料費が価格の1割を占めていると仮定します。ナフサ価格が3月の66,069円/klから5月の123,732円/klまで、約1.87倍に上昇したという報道の数字をそのまま当てはめると、
3万円 × 0.1(原料費割合) ×(1.87倍 − 1)= 約2,618円
という計算になりました。もちろんこれは私が置いた仮定に基づく単純な試算で、実際の値上がり幅は商品によって全く異なりますし、企業努力で価格転嫁が抑えられるケースもあります。ただ「原料価格が2倍近くになると、家計にも数千円単位で影響しうる」という感覚はつかめたように思います。
ナフサ不足はいつまで続く?
気になるのは「いつまで続くのか」ですよね。ここでは分かっている範囲の動きを整理してみます。
6月の暫定合意とタンカー再開の動き
2026年6月中旬に、イランとの間で航行に関する暫定的な合意が発表され、日本向けを含むタンカーがホルムズ海峡の指定航路を通過する動きも出てきました。ニュースだけを見ると「もう解決したのかな」と思ってしまいそうですが、私が調べた限り、通航が再開したこと自体はあくまで第一段階に過ぎないようです。
原油とナフサでは「戻るスピード」が違う
原油そのものは他地域からの調達や在庫の取り崩しで比較的早く持ち直しの動きが見られた一方、ナフサのように精製・分解のプロセスを経る製品は、供給網の立て直しに時間がかかりやすいとされています。国内のエチレン設備の稼働率も一時的に大きく落ち込んだとする報道があり、正常化にはまだ時間を要するという見方が根強いのが現状です。私自身、ニュースを追いながら「原油が戻れば安心」というわけではないんだな、と印象が変わりました。
日本はナフサ不足にどう対応している?

こうした状況の中で、日本の総合商社が裏方として大きな役割を果たしました。ここでは「私たちの生活を守るためにどんな動きがあったか」という視点で、かんたんに紹介します。
丸紅がペルー・インドから代替調達
丸紅は、中東ルートが不安定になる中で、通常はあまり取引の多くないペルーやインドからのナフサ調達に動いたとされています。ペルーから日本までは太平洋を横断するルートで、距離にして約1万5,000キロ、中東ルート(約1万2,000キロ)と比べると1.2倍以上の距離になります。私が概算したところ、15ノットで航行した場合、ペルールートは片道22日前後、中東ルートは18日前後とかなりの差が出ました。それでもホルムズ海峡のリスクを避けられるルートを短期間で組み上げたことは、供給網を支えるうえで重要な役割を果たしたといえそうです。
丸紅は国内のナフサ輸入において高いシェアを持つとされており、大阪府堺市に保有する「堺ターミナル」には、大型タンカーが着岸できる桟橋と、大量のナフサを貯蔵できるタンク群があります。海外から時間をかけて運んできたナフサも、こうした受け入れ設備がなければ荷下ろしすらできません。私はここを調べていて、「安く買う」ことと同じくらい「受け入れる場所を持っていること」が大事なんだと気づかされました。
三菱商事は国内備蓄を放出
三菱商事系の企業は、国内に分散して保有していた備蓄タンクの在庫を放出し、国内の石油化学プラントが原料切れで停止するリスクを抑える動きを見せたと報じられています。民間の石油製品の在庫は、通常70〜90日分程度が目安とされており、こうした備蓄が有事の「バッファー」として機能した形です。
今後もナフサ不足は起きる?日本が抱える中東依存の課題

中東依存という構造は変わっていない
今回の件で私が一番感じたのは、日本のエネルギーや原料の調達が、特定の地域にどれだけ依存しているかという「構造」そのものが問題だということです。日本の一次エネルギー自給率はもともと低く、原油の中東依存度も平時では非常に高い水準にあります。今回の危機をきっかけに、米国からの原油輸入が大きく増えたり、ペルーやインドといった新しい調達先が開拓されたりと、調達先の多様化が進んだのも事実です。ただ、こうした代替ルートは輸送コストや日数がかさむため、平時の中東ルートに比べると割高になりやすい面もあります。中東依存そのものが解消されたわけではない以上、似たような緊張が再び起きれば、また同じようにナフサ不足が起きる可能性は残っていると私は感じています。
LNGなど他のエネルギーでの多様化の動き
原油とナフサ以外にも目を向けると、LNG(液化天然ガス)の分野では、三菱商事が権益を持つカナダのLNGプロジェクトのように、ホルムズ海峡を通らない太平洋ルートの調達先を確保する動きもあります。すべてのエネルギー・原料を一度に多様化するのは簡単ではありませんが、少しずつ「一つの海峡に頼りすぎない」供給網へと組み替えていく動きは、今後も続いていくのだろうと私は感じています。
(値上がりが続くと家計への影響も気になるところですよね。社会保険や制度面から家計への影響を整理した2026年4月から手取りが減る?社会保険・年金の大改正を分かりやすく解説も、あわせて読んでいただけると全体像がつかみやすいかもしれません。)
まとめ|ナフサ不足は私たちの生活と無関係ではない
「ナフサ」という言葉は聞き慣れなくても、その先につながっているのは、私たちが毎日使っている食品容器やペットボトル、衣類、スマートフォン、そして紙おむつや医療用品まで、驚くほど身近なものばかりでした。今回この記事を書くにあたって私が最も伝えたかったのは、「原油価格が上がる」というニュースの一段階先に、私たちの生活用品に直結する原料の話があるということです。ニュースの見出しだけを追っていると気づきにくい部分ですが、こうして一つずつたどっていくと、意外なところで生活とつながっていることが分かります。2026年の中東危機によるナフサ不足は、価格や稼働率の面で確かな影響を残しましたが、丸紅や三菱商事といった総合商社の代替調達や備蓄放出によって、私たちの生活が急激に立ち行かなくなるような事態は避けられたといえそうです。とはいえ、日本の中東依存という構造そのものが変わったわけではないので、私はこれからも「見えないところで生活を支えてくれているもの」に、少しだけ意識を向けていきたいと思っています。
よくある質問

Q. ナフサって結局何ですか?
原油を蒸留してできる、比較的軽い炭化水素の混合物です。ガソリンと違い燃料としてではなく、プラスチックなどの原料として使われます。
Q. ガソリンとナフサはどう違うのですか?
同じ石油から採れますが、ガソリンは自動車の燃料として調整された製品、ナフサは化学的に分解して別の物質を作るための原料という違いがあります。
Q. ナフサ不足でどんな商品が値上がりしますか?
食品包装フィルムやペットボトル、レジ袋、洗剤・化粧品の容器、衣類など、プラスチックや合成繊維を多く使う日用品で影響が出やすいとされています。
Q. 紙おむつや注射器にもナフサが関係しているって本当ですか?
本当です。紙おむつの高吸水性ポリマーや、使い捨て注射器、点滴チューブなど、医療・衛生用品の多くもナフサ由来の化学製品からできています。
Q. ナフサ不足はいつまで続きますか?
2026年6月にホルムズ海峡の通航をめぐる動きが一部改善したものの、ナフサの供給網は完全に元通りとは言えず、正常化にはまだ時間がかかるという見方があります。
Q. なぜ中東の危機がナフサ不足につながるのですか?
日本のナフサ供給は国産・輸入を合わせて中東への依存度が高く、中東からの輸送路であるホルムズ海峡が不安定になると、直接的に供給が滞りやすい構造になっているためです。
Q. 日本はナフサ不足にどう対応したのですか?
丸紅がペルーやインドからの代替調達を進めたほか、三菱商事系の企業が国内の備蓄を放出し、国内の石油化学プラントの停止リスクを抑える動きを見せました。
Q. なぜペルーやインドから調達できたのですか?
ペルーやインドには輸出余力のある大規模な製油所があり、中東ルートに比べて距離は長くなるものの、ホルムズ海峡を経由しないルートとして活用できたためです。
Q. 私たち一般消費者にできることはありますか?
特別な対策が必要な状況ではありませんが、日用品の価格動向に目を向けたり、無理のない範囲で備えを意識したりすることは、こうした供給網の変化を理解するうえでも役立つと思います。
Q. 今後また同じようなナフサ不足は起きますか?
中東依存という構造自体が大きく変わったわけではないため、同じような地政学的リスクが起きれば、再びナフサ不足が生じる可能性はあると考えられます。
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参考・出典
- 財務省「貿易統計」(ナフサ輸入CIF価格の推移)
https://www.customs.go.jp/toukei/info/index.htm - 石油化学工業協会(国内エチレン設備の稼働率に関する情報)
https://www.jpca.or.jp/ - 丸紅エネックス株式会社(堺ターミナル等の拠点情報)
https://www.marubeni-ennex.co.jp/ - 経済産業省・資源エネルギー庁「石油統計速報」(ナフサ生産・輸入動向)
- 各種報道機関によるホルムズ海峡の通航状況・タンカー運賃に関する報道(数値は報道時点の推計)
※本記事の情報は執筆時点のものです。内容は予告なく変更されることがあります。価格や統計の数値は報道・統計発表時点の推計を含みます。
