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- トヨタが「エリー(ELEY)」を含むロボット群を、グループ全体で40万台導入する計画を発表(2026年9月18日)
- 二足歩行ではなく全方向車輪+昇降機構。転倒リスクと電力消費を抑える工場向けの実利的な設計
- 「40万台=40万人の仕事がなくなる」ではなく、人間がロボットに作業を教える協働型を目指す計画
ヒト型ロボットと聞いて、二本足で歩く姿を思い浮かべませんでしたか?
私は最初、そのイメージしかありませんでした。ところがトヨタの「エリー(ELEY)」には、歩くための足がありません。しかもトヨタは、このロボットをグループ全体で40万台規模導入する計画を明らかにしました。
「40万台ってさすがに盛りすぎじゃない?」「ヒト型なのに歩かないってどういうこと?」——私も最初ここが気になって調べてみたので、同じ疑問を持った人向けに、できるだけかみ砕いて整理してみます。
トヨタのロボット「エリー」とは?

2026年9月18日、トヨタ自動車の副社長兼CTOである中嶋裕樹氏が、欧州の投資家向けイベントに登壇し、自社開発のロボット「ELEY(エリー)」を中心とした次世代ロボット群を、トヨタ本体とグループ各社の工場へ合計40万台導入する計画を発表しました。ニュースを見た瞬間、「え、40万台?」と二度見してしまったのが正直な感想です。
40万台を工場へ導入する計画
まず誤解しやすいポイントから整理させてください。今回の発表は「40万台をすでに導入した」という話ではなく、あくまで導入していく計画です。内訳はトヨタ本体に15万台、部品メーカーなどグループ各社に25万台。2028年以降、工場やロボットの更新に毎年1兆円規模を投じる長期計画の一部として、段階的に進んでいくとされています。
私はこの数字を見て「本当にそんなペースで作れるの?」と気になったので、後ほど自分でも試算してみます。
エリーは人間と一緒に働くためのロボット
エリーは、人間を完全に置き換えるための機械ではなく、人間と同じ作業スペースで協働することを前提に設計されたロボットです。開発したのはトヨタ未来創生センターのR-フロンティア部。名前の「ELEY」は「Embodied Learning robot for Enhanced Yield(高い成果を目指す身体学習ロボット)」の頭文字が由来とされています。私が調べた限りでは、日本語でも英語でも発音しやすい名前を意識して付けられたようです。
エリーは何ができる?分かっている仕様を整理

「結局エリーって何ができるの?」という一番知りたいところを、公式に確認できている情報だけでまとめます。
重さ50kg・双腕のロボット
エリーの重量は50kg。人間の腕のように動く双腕構造を持ち、サイズは日本人の平均的な成人男性を基準に設計されています。肩の可動域を広げる「肩甲骨軸」という機構も搭載されていて、人間に近い自然な腕の動きを再現できるようになっているそうです。
人間と同じ作業台を使える昇降機構
エリーの高さは939mmから1,619mmまで変えられる昇降機構を持っています。これがかなり重要なポイントで、床に置かれた部品を拾う低い姿勢から、人間の目線に近い高さでの組み立て作業まで、同じ体一つでこなせる設計になっています。工場の作業台をロボット用に作り替える必要がないというのは、地味だけど現場目線では大きなメリットだと思います。
AIが人間の動作を見て覚える
従来の産業用ロボットは、エンジニアが座標やコードを細かく設定して動きを教え込むのが一般的でした。エリーはそれに加えて、人間の作業をカメラとセンサーで捉え、AIがその動きを学習する仕組みを採用しています。トヨタ研究所(TRI)が開発した「Large Behavior Models(LBM)」という生成AIの一種が、視覚情報と手の動きのデータから「こういう時はこう動く」というパターンを学んでいくイメージです。
私なりにたとえるなら、LBMが頭脳、エリーが身体。頭脳(AI)と身体(ロボット)が別々に進化していて、それを組み合わせているという点がちょっと面白いなと思いました。
エリー 基本スペック早見表
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | ELEY(エリー) |
| 重量 | 50kg |
| サイズ | 長さ478mm×幅450mm×高さ939〜1,619mm |
| 腕 | 双腕構造(肩甲骨軸搭載) |
| 移動方式 | 全方向移動の車輪型台車 |
| AI | Large Behavior Models(LBM)+学習型制御 |
| 価格・可搬重量・バッテリー仕様 | 未公表 |
なぜヒト型なのに二足歩行じゃないの?

正直、この記事で一番「なるほど」と思ったのがここです。テスラのOptimusをはじめ、ヒューマノイドロボット=二本足で歩くというイメージが強いなか、トヨタはあえて車輪を選びました。テスラが「歩く」なら、トヨタは「滑る」。同じヒト型ロボットでも、目指している方向がまったく違うんだなと感じました。
工場では「歩けること」より「転ばないこと」が大事
工場のラインでロボットが転倒すると、単なる故障では済みません。ライン全体が止まり、生産スケジュールに影響が出ます。二足歩行は階段や不整地を歩けるのが強みですが、工場の床は基本的にすでに平らに整備されています。そこであえて「歩く能力」を持たせるより、転倒リスクをゼロに近づける車輪型を選んだ、という判断のようです。言われてみれば当たり前ですが、私は最初「もったいない」と思ってしまいました。
車輪なら電力消費も抑えやすい
二足歩行は、立っているだけでもバランスを保つために計算処理と電力を使い続けます。車輪型は接地面が安定しているため、停止中に姿勢維持のための電力をほとんど使いません。重量50kgという軽量設計と合わせて、限られたバッテリーで長時間稼働させやすいという実利的なメリットがあります。
工場そのものをロボット用に作り替えなくていい
車輪で床の上を移動し、昇降機構で人間の作業台の高さに合わせられるエリーなら、既存の工場設備をほぼそのまま使えます。二足歩行ロボットを大量導入する場合、床や通路をロボット向けに設計し直すコストがかかりかねませんが、エリーはその手間を最小限にできる、という考え方のようです。
トヨタはなぜ40万台ものロボットを入れるの?

人手不足だけが理由ではない
「人手不足を補うため」というのは分かりやすい理由ですが、それだけではなさそうです。国際ロボット連盟(IFR)のデータによれば、世界の産業用ロボットの年間設置台数は2024年時点で約54万台。トヨタの40万台計画は、この世界市場全体に匹敵する規模を、単一の企業グループで動かそうとしていることになります。
「匠の技」をAIへ残せる可能性
トヨタには長年現場を支えてきた熟練工、いわゆる「匠」がいます。彼らの手先の感覚や力加減といった暗黙知は、これまでマニュアル化が難しいものでした。UMI(Universal Manipulation Interface)と呼ばれるカメラ付きの携帯デバイスを匠が手に持って作業するだけで、その動きのデータをAIが学習できるようになれば、言葉にしづらい熟練の技をデータとして残せる可能性があります。将来的には、こうした仕組みが技能継承の新しい形になっていくかもしれません。
工場そのものがロボットの学習場所になる可能性
もしエリーが世界中の工場に配備され、同じAI基盤でつながっていたら——ある工場で覚えた新しい作業のコツが、別の工場のロボットにも共有される、という使い方も将来的には考えられます。これはあくまで仕組みとして考えられる将来像であり、トヨタが正式に発表した運用方針ではない点には注意が必要です。
導入ペースを自分でも計算してみた
40万台という数字がどれくらいのペースなのか気になったので、私も試算してみました。2028年から段階的に導入すると仮定すると、こうなります。
- 5年で導入完了:40万台 ÷ 5年 = 年間8万台
- 10年で導入完了:40万台 ÷ 10年 = 年間4万台
- 15年で導入完了:40万台 ÷ 15年 = 年間約2.7万台
世界の産業用ロボットの年間設置台数が約54万台であることと比べると、仮に10年ペースだとしても、年間4万台=世界市場の約7%強をトヨタグループだけで生み出す計算になります。数字にしてみると、あらためてスケールの大きさを実感しました(正確な全台導入完了年は公式発表されていないため、あくまで複数パターンの試算です)。
エリーが入るとトヨタの仕事はなくなる?

先に結論から言うと、「40万台=40万人の仕事がなくなる」という意味ではありません。ロボットが得意な作業を担う一方で、人間側の役割も変わっていく、というのが実際に近いイメージのようです。
ロボットが向いている仕事
- 重量物の運搬
- 危険を伴う作業
- 単純な反復作業
- 深夜の工程(バッテリー生産ラインなど24時間稼働が求められる工程)
こうした作業は、体力的な負担や安全面のリスクが大きく、ロボットに任せるメリットが分かりやすい分野です。
人間に残る・増える可能性のある仕事
- ロボットに作業のやり方を教える(データ収集・ティーチング)
- 想定外のトラブルへの対応(例外処理)
- 生産ライン全体の管理・改善提案
- 品質チェックや最終判断
ロボットが増えるほど、「ロボットをどう動かすか」を考える人間の役割が減るわけではなく、むしろ重要になっていく、という見方もできそうです。ロボット=大量解雇と単純に結びつけるのは、少し急ぎすぎかもしれません。
テスラのOptimusとは何が違う?
ヒューマノイドロボットというと、テスラのOptimusを思い浮かべる人も多いはずです。どちらが優れているという話ではなく、目指している場所がそもそも違うという理解のほうがしっくりきます。
比較表で見る設計思想の違い
| 比較項目 | トヨタ ELEY | テスラ Optimus |
|---|---|---|
| 用途 | 工場での協働・生産性向上 | 人間の作業全般の代替、将来は家庭利用も視野 |
| 移動方式 | 全方向車輪+昇降機構 | 二足歩行 |
| 工場への適合思想 | 既存の作業台・床をそのまま活用 | 人間の生活環境全般への適応を志向 |
| AI・学習思想 | LBM(模倣学習中心) | 独自のAI基盤(自動運転技術の転用など) |
こうして並べてみると、テスラは「人間の生活空間すべてに対応できる汎用性」を、トヨタは「工場での確実性とコスト効率」を優先しているように見えます。
どちらが優れているかではなく「目指す場所」が違う
私はこの表を作りながら、つい「結局どっちが上なの?」と考えてしまいましたが、そもそも比較の軸がずれていることに気づきました。テスラは人間の生活空間すべてで動けることを目標にしていて、工場はその通過点のひとつに過ぎません。一方でトヨタは、最初から工場という限定された環境の中で、確実に・安全に・コストを抑えて動くことを目標にしています。同じ「ヒト型ロボット」という言葉でくくられがちですが、ゴール地点がそもそも違うロボットだと考えると、この2社の発表をニュースで見比べる時の見方も変わってくると思います。
40万台のエリーはいつ工場に入る?
「すでに40万台導入済み」ではない点に注意
繰り返しになりますが、40万台はまだ導入完了した数字ではありません。あくまで今後の導入計画であり、2026年9月時点で工場のラインに40万台のエリーが並んでいるわけではありません。ニュースの見出しだけを見ると「もう40万台が働いている」ように誤読しそうになりますが、そこは落ち着いて整理しておきたいポイントです。
2028年以降の工場刷新に合わせて段階導入
2028年以降、毎年1兆円規模で予定されている工場刷新のタイミングに合わせて、段階的に配備が進んでいく計画です。具体的に「何年何月に全台導入完了」という公式な日程は、今のところ発表されていません。私が調べた範囲でも、全台導入の完了年を明言した公式資料は見つからなかったので、今後の続報を待つ必要がありそうです。
エリーの価格や一般販売は?
価格は未公表、推測数字を鵜呑みにしない
エリー1台あたりの価格は、現時点では公表されていません。ネット上には「1台300万円前後では」といった試算を見かけることもありますが、これはあくまで投資対効果の観点からの推測であり、トヨタの公式価格ではない点には注意してください。こうした推測値がひとり歩きして、いつの間にか「公式価格」のように扱われてしまうのはニュースを追いかけているとよくあることなので、私も情報を見るときは出どころを確認するようにしています。
家庭向け販売は現時点で「不明」
家庭向けの一般販売についても、現時点で正式な発表はなく「不明」というのが正確なところです。ただ、開発元の未来創生センターはもともと生活支援ロボット「HSR」の研究も手がけてきた部署なので、将来的に家庭や介護の現場への展開を視野に入れている可能性はありそうです。あくまで可能性の話であり、決まった話ではない点は改めて強調しておきます。
まとめ|トヨタが作ろうとしているのは「人間そっくりのロボット」ではなさそう
ここまで調べてみて感じたのは、エリーの面白さは、人間そっくりにすることを目指していないところかもしれない、ということです。
「足」より「腕」。「歩く」より「働く」。「人間を消す」より「人間から学ぶ」。
40万台という数字の大きさばかりが話題になりがちですが、その中身を見ていくと、転ばないこと・止まらないこと・人間の作業台をそのまま使えることを積み重ねた、かなり地に足のついた設計思想が見えてきます。この話って、ふだん使っているスマホやアプリの進化にも通じる部分があるなと感じました。身近なテクノロジーの動きが気になる人は、こちらもあわせてチェックしてみてください。
→ 【iOS 26.2】日本限定でiPhoneが激変!?アプデすべきか徹底解説
40万台のロボットが本当にどんな形で工場に増えていくのか、続報が出たらまた追いかけてみたいと思います。
よくある質問

Q. トヨタのロボットで仕事はなくなりますか?
重量物の運搬や危険作業、単純反復作業など一部の仕事はロボットに移る可能性がありますが、「40万台=40万人の仕事がなくなる」という単純な話ではありません。ロボットに作業を教えたり、トラブルに対応したりする役割は人間に残ると考えられています。
Q. 40万台の導入は本当ですか?
はい、2026年9月18日にトヨタ自動車の副社長が欧州の投資家向けイベントで公式に発表しました。ただし「すでに導入済み」ではなく、今後の導入計画である点に注意してください。
Q. エリーはいつ工場に導入されますか?
2028年以降、毎年1兆円規模で予定されている工場刷新に合わせて段階的に導入されていく計画です。具体的な全台導入完了年は公式に発表されていません。
Q. どこの工場に導入されますか?
トヨタ本体とグループ各社の工場が対象とされています。最初に導入される具体的な工場名は、今のところ公表されていません。
Q. エリーの価格はいくらですか?
価格は未公表です。ネット上に見られる「300万円前後」といった数字は投資対効果の観点からの試算であり、トヨタの公式価格ではありません。
Q. なぜヒト型なのに二足歩行ではなく車輪なのですか?
工場では「歩けること」より「転倒しないこと」が重要だからです。車輪型のほうが電力消費を抑えやすく、既存の工場設備をそのまま活用できるというメリットもあります。
Q. テスラのOptimusと何が違いますか?
テスラは二足歩行で人間の生活空間全般への対応を目指しているのに対し、トヨタのエリーは車輪移動で工場内での確実性とコスト効率を重視しています。どちらが優れているというより、目指す方向が異なります。
Q. エリーは何ができますか?
双腕と昇降機構を使って、部品のピッキングから人間と同じ高さでの組み立て作業までをこなせるとされています。AIが人間の動作を学習することで、新しい作業も覚えていける点が特徴です。
Q. LBMとエリーの関係は何ですか?
LBM(Large Behavior Models)はAI(頭脳)、エリーはロボットの身体にあたります。LBMはエリー以外のロボットにも応用できる技術とされています。
Q. トヨタはいつからロボット開発をしていますか?
2000年代の「パートナーロボット」から始まり、生活支援ロボット「HSR」、ヒューマノイド「T-HR3」を経て、2026年に発表された「エリー」に至るまで、20年以上にわたる研究の蓄積があります。
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参考・出典
- Car Watch「トヨタ、毎年1兆円を投資し工場とロボットを更新 40万台をフィジカルAIであるLarge Behavior Models搭載ロボなどに」
https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/2142008.html - トヨタ自動車 未来創生センター「やさしく触れることで未来を変える」
https://global.toyota/jp/mobility/frontier-research/44105139.html - トヨタ自動車 未来創生センター「World Robot Summit 2025 AICHI出展について」
https://global.toyota/jp/mobility/frontier-research/43588096.html - トヨタ自動車「第3世代のヒューマノイドロボットT-HR3を発表」
https://global.toyota/jp/detail/19666327 - International Federation of Robotics「World Robotics 2025」
https://ifr.org/worldrobotics/report-2025
※本記事の情報は執筆時点(2026年9月18日)のものです。内容は今後の公式発表により変更される可能性があります。
